私の所に突然、見知らぬ人が来た。
「僕の食べ物をくれませんか?」
 全身が派手な赤で統一されていて、とても個性的な人だった。髪の毛は染めているのだろうか、真っ赤だ。まつ毛は随分と長い。付けまつ毛だろうか、これも赤い。服も上から下まで真っ赤っかだ。ただし、目の周りだけは銀のアイシャドウでコーティングされていた。とても困っているようだったので私は近くにあったトーストを差し出した。しかし、その人はそれを受け取らなかった。
「済みません。僕は、これは食べれないんです。」
そこで私は鞄からお弁当を取り出す。しかし、その人はこれも受け取らなかった。
「済みません、僕はこれも食べれないんです。」
 そこで私は近くにあったシャープペンシルで、手元にあったノートに適当な言葉を書いた。そしてそのページを破ってその人に渡した。冗談のつもりだった、だってあんなに赤かったのだから。するとその人はそれを四つ折りにして目から飲み込んでしまった。
「ありがとう。」
頬をかすかに赤らめながらお礼を言って、その人はケンケンで去っていった。

 私は目を覚ました。そこは学校の教室。私は授業の途中で寝てしまっていたのだ。机の上を見るとなぜかお弁当が出ていたので私は慌ててそれを鞄にしまい込んだ。そして勉強しているという体裁を取り繕おうとノートに黒板の文字を写し始めた。すると、ノートの一部が破れて無くなっているのに気が付いた。
(あれは本当に夢だったのかな。)
そう思った時、窓から爽やかな風が吹いてきた。外を見ると様々な建物が目に入ってくる。
(あの辺りに郵便ポストがあるのよね。でも古くなったから撤去されるんだっけ。撤去の日は昨日?今日?明日?・・・忘れた。)
私は黒板の方を向き直した。


ずいぶんと寂れた郵便ポストに一人の年老いた郵便局員がやって来る。
「お前の役目も今日で終わりだな。」
 そう言って彼はポストを開ける。中には葉書が無い代わりに一枚の紙が乱暴に四つ折りになって入っていた。彼はそれを取り、開いてみた。そこには荒い字でこう書いてあった。
『おつかれさま』

彼はふと涙を流している自分に気が付いた。

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この記事へのコメント

2012年04月28日 00:16
おお、なるほど・・・。シュールな話かと思いきや、最後まで読んでハッとさせられました。
真っ赤な人の正体を踏まえて再度読み返すと、心に爽やかな水がスーッと入ってきて・・・これはありがたい憩いの湖・・・。
素敵な掌編でした!
2012年04月28日 08:39
ありがとうございます!
読者をハッとさせられたら、小説書いてよかったと思える。そして読者の心に潤いを提供出来たら私の心も潤います。
この調子で色々な話を書いていきたいと思います。

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