反転少年 1

『キーン コーン カーン コーン …。』
最終下校のチャイムを少女はいつものように生徒会室で聞いていた。
(もうこんな時間…。)
また、と言いたそうな溜め息を吐いて彼女は机上の資料や文房具を片付ける。左手で持っていた鞄に右手を添えて部屋を後にする。そしていつも通りすっかり暗くなった、冷える廊下をただ一人で歩く。
(もうこんな季節になったのね…。)
彼女の名前は阿久根 真記(あくね まき)。中学二年生で生徒会の書記をしている。主な仕事は会議での意見や決め事を記録し、整理し直すこと。彼女の作る議事録はとても見やすく、議論を進めたり、振り返ったりするのに役に立っている。生徒会長からの信頼も厚く、次期生徒会長との声もあるが、彼女は今期一杯で生徒会役員を辞めると決めていた。もともと彼女は生徒会に入る気はなかったが現生徒会長から強く勧誘を受けた。その時、彼女は言った。
「会長さんが会長さんであり続ける限り、ならいいですよ。」
その後、何度も選挙があったが会長は全ての対立候補を破りその役職を維持した。しかし、いくら会長でも時の流れには逆らえない。卒業の時が来たのだ。真記は自分も辞めるにあたり最後の大仕事をしていた。それは、この二年間の生徒会活動の全体的な資料を作ることだった。

廊下を歩いていると向こうから一人の少年がやって来た。自分と同じく、用事で残っていた生徒の一人だろう、と真記は思った。
「お疲れ。」
彼の一言に対し、真記も返事する。
「お疲れ~。」
彼とすれ違った後、真記は立ち止まった。
(あれ?さっきの人、天井を歩いてなかった?)
すぐに振り返ったが、もうそこに彼の姿はなかった。
(私、かなり疲れてるかも。)
目をこすりながら真記は呟いた。
「今日は早く寝て、ゆっくり休もう。そうしよう。」

真記が家に帰るといつものように姉がお決まりの言葉をかけてきた。
「お帰り、次期生徒会長。」
「今期で辞めますから。」
姉はケラケラ笑いながら言う。
「えー、もったいない。」
「私はお姉ちゃんほど優秀じゃないの。」
真記はいつも通りの我が家にホッとしていた。あの変なのは見間違いで、日常は日常のままだと。

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この記事へのコメント

表裏
2012年05月14日 20:04
今回はカラスにハンガーを取られた阿久根さんが主人公ですか。どうなるのかな。わくわく♪
2012年05月14日 21:54
>表裏さん
盗られたものリストの阿久根さん登場。楽しみにして頂いて光栄です。
2012年05月15日 00:20
天井を歩く少年?
日常のセンチメンタルさを描く話かと思いきや、ホラー、なのでしょうか。あまり恐ろしげな感じはしませんが・・。

佐久間「ふむ、修行によって天井を歩く技術を身につけたか。」
山田「超能力か何かだと思うが。」
2012年05月15日 19:13
>アッキーさん
謎の少年登場。奇抜な登場の仕方でしたが今回のテーマはラブコメです。(←そうなのか?)

パルナ「パルナも天井ぐらい歩けるよ。」
白龍「別に張り合う必要はないのですが。天井歩きの原理は技術か超能力か幻覚か…。答えは後ほど。」

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