悪魔と人形

ある所に人形職人のお爺さんが居た。このお爺さんは何体もの人形を作った。しかし歳を取るごとに手が思うように動かなくなっていった。そこでお爺さんは呟いた。
「最後に生きているような出来のいい人形を作りたい。」
そこに悪魔が現れた。そいつはお爺さんにこう言った。
「その願い叶えよう。その代わりお前の大切なものを頂くぞ。」
その後、お爺さんは生きているかのような人形を作った。しかし無理をして人形を作ったために利き手が動かなくなってしまった。

ある所に人形があった。この人形はお爺さんに作ってもらった。その代わりお爺さんの手は動かなくなった。そこで人形は思った。
(僕が動けたらお爺さんの手の代わりをするのに。)
そこに悪魔が現れた。そいつは人形にこう言った。
「その願い叶えよう。その代わりお前の大切なものを頂くぞ。」
人形は自分の意志で動けるようになった。その動いた人形を見てお爺さんはびっくりして死んでしまった。人形は泣きながらお爺さんの手に代わり、お爺さんの墓を作った。そして泣きながら眠ってしまった。

ある所に男が居た。この男は貧乏で明日の飯にも事欠いていた。男は二人の子どものことを思いながら言った。
「金さえあれば…。」
そこに悪魔が現れた。そいつは男にこう言った。
「いいことを教えてやろう。あの家にある人形を売れば大金が手に入るぞ。」
男はその家に行って人形を盗んだ。そして人形屋に売った。すると凄い金額で売れた。男は大喜びで家に向かって走っていった。

ある所に男の子が居た。この男の子は貧乏で明日の飯にも事欠いていた。男の子は自分の妹のことを考えていた。街を歩いていた男の子が、ふと隣を見るとそこは人形屋だった。男の子は妹が苦しい生活の中で一度だけ人形が欲しいと言ったのを思い出していた。男の子は考えた。
(あの人形を妹に届けてやりたい。)
そこに悪魔が現れた。そいつは男の子にこう言った。
「いいことを教えてやろう。お前がその人形を盗めば必ず妹に届くぞ。」
男の子は人形を盗み、妹の元へと走った。そして無理に道を渡ろうとして馬車に轢かれて死んでしまった。

ある所に男が居た。この男は裕福でどんなことにも事欠かなかった。ある時、男は娘と一緒に馬車に乗っていた。すると馬車が何かを轢いた。男と娘は馬車の外に出てみた。そこには人形が落ちていた。娘はその人形をたいそう気に入り、持って帰ることにした。ところが帰る時、娘は人形を窓から落としてしまった。馬車を止めて捜したが見つからなかった。娘は泣きに泣いた。

ある時、人形は目を覚ました。すると見たこともない所にいた。人形は慌てて窓から飛び出した。そこは馬車だった。人形は飛び降りて足をくじいたが、それでも自分の家に帰ろうと走り始めた。人形はしばらく走った。すると、前から大金を握りしめた男が走ってきた。男は人形に気が付かずに蹴飛ばした。人形はある家の扉に当たって壊れてしまった。

ある所に女の子が居た。女の子は貧乏で明日の飯にも事欠いていた。お腹を空かして家で待っていると扉に何か当たった音がした。扉を開けてみるとそこには人形があった。それを見て女の子は言った。
「私、こんな人形が欲しかったんだ。」
それと同時に父親が帰ってきた。
「これでもう好きなだけ飯が食えるぞ!」
女の子は父親と共に兄の帰りを待った。


ある所に悪魔が居た。悪魔は不敵な笑みを浮かべて言った。
「人形は妹の所に届いたぞ。」

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この記事へのコメント

表裏
2012年06月05日 23:22
数珠つなぎのように物語りがつながっていて、おのおのの場面が頭に思い浮かびます。
さすがです!しびれました!

さて、早速3人(人間2、人形1)死にましたね。
おお何と恐ろしい悪魔だろうか。マジ悪魔。マジ鬼畜。
あと、男の子をひき殺した馬車ですが、乗っていた男と娘は男の子の死体スルーで人形持って帰りますかwwwこっちも鬼畜だwww
2012年06月05日 23:58
悪魔が言ったことは全て本当になった。しかし多くの不幸が振り撒かれた。まさに悪魔。
特に、最後の言葉がゾクッとしました。

しかし、私も悪魔より金持ち父娘の方が外道だと思いました。きっと野良猫でも撥ねた程度の感覚だったのでしょうね。
それに比べれば、不敵な笑みを浮かべている(=悪いことをしている自覚がある)悪魔の方がまだ人間的に思えてきます。
2012年06月06日 17:37
悪魔の本質に迫っていると感じました。まさにこれぞ悪魔です。ただ悪いだけじゃなく人々の心を惑わし、不幸を楽しんでいる。
昔の「哲学の話」を思い出します。
地面に寝そべってひなたぼっこしている男。そこへ太陽を隠すほどの巨人が現れて「願いごとを叶えてあげる」と。男は迷わず「太陽が見えないからそこをどいてくれ」
これが「正しい答え・正しい哲学」という物語。
2012年06月06日 20:46
>表裏さん
しびれました、とは最高の褒め言葉です!連続性にも気を配りました。

今まで死人はおろか、怪我人もほとんど出ていなかったのに…。いつの間にやら死人と鬼畜キャラが…。この話の舞台は中世~近世のヨーロッパをイメージしています。裕福な男とその娘は貴族をイメージ。自分達の興味あるもの以外は完全シャットアウト。まさに鬼畜。
2012年06月06日 20:47
>アッキーさん
不幸の種をせっせと撒く悪魔。最後に収穫を喜びます。まさに悪魔。

裕福な男とその娘の方が外道なのは、その通りだと私も思います。
ルビデ「人間は即死しにくい生き物のようだ。実は馬車に轢かれた段階では彼は生きていた。すぐに医者を呼んで適切な治療をすれば助かる確率の方が高かったかもしれない。しかし、あの二人には彼の命の叫びは聞こえなかったようだ。結局彼は再度出発した馬車にもう一度轢かれて死んでしまった。いやあ、哀れ哀れ。クックックッ。」
2012年06月06日 20:47
>ブラックホークさん
本質に迫っている、とまで言ってもらえるとは嬉しい限りです。タチの悪さは折り紙付き。
「哲学の話」で私も一つ思い出した話があります。
神が全世界の人間に対して「一つだけ願いを叶えるからそれを決めろ。」と言った。人間達は何を願うのかで争いを始める。その時、一人の人間が言う。「願いが争いの元になっている。だから願いはいらないと願おう。」

大きな願いはその代償も大きい。願いを叶えると言われたら、よくよく哲学しなくては。

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