非 前編

この世界には悪魔という異形の者とエクソシストという悪魔を退治しようとする者がいる。





 ある町に行商人が訪れた。しかし、どういう訳か町に人の気配がしない。辺りを見回してみても人っ子一人見当たらない。ふと、行商人が町の奥の方に目をやると大きな黒い塊が動いているではないか。それは巨大な悪魔だった。行商人は大慌てでその場を去り、隣町の教会に逃げ込んだ。教会はすぐにエクソシストを招集した。緊急だったので集まれたのは三人。教会のシスターが簡単に概要を説明した後、集まったものから意見が出される。

中年のエクソシストが聞く。
「町の人の安否はどうなっています?」
「不明です。しかし、生き残っている者もいるかもしれません。」
悪魔によっては無慈悲な殺戮を好む者もいれば、じっくり時間を掛けていたぶるのが趣味の者もいる。
「その町のエクソシストは?」
「在住者二名、どちらも連絡が取れません。」
「…殺されたと見るのが妥当か…。」

若者のエクソシストが聞く。
「目撃者によると悪魔は町の建物よりも大きかったと?」
「推定で十メートル程度です。」
「大型種か。この人数じゃ厳しいな…。」

 召集された者達の心は揺れ動いていた。そもそも悪魔と人間の間には大きな力の差があり、才能ある者が様々な道具を使ってようやく戦えるのだ。そして、たまに出てくる少し強い悪魔となると退治出来るのは一握りのエクソシストかエクソシストの集団のどちらかである。町の人が生きている可能性は低いので、無理に突っ込んで死傷者を出すより他のエクソシストが集まるまで待ってから悪魔を退治する方が良いのではないか、という空気が無言のままに作られていた。その時、教会に一人の男が足をクロスさせて入ってきた。
「みなみなみなさん、おはようさん。南 奈美(みなみ なみ)さん、こんにちは。」
シスターの南は感動の声を上げた。
「エリークラさん!来てくれたんですね!」
他のエクソシスト達が口々に呟く。
「エ、エリークラ…。」
「“非”のエクソシスト、エリークラだ!」
エリークラは他のエクソシスト達を前にして、両手を広げて言う。
「この程度の相手、私一人で十分(じゅっぷん)です。」
そしてエリークラは身を翻し、歩き出す。
「トイレをお借りします。」
「エリークラさん、悪魔の情報を…。」
シスターは資料を渡そうとした。
「ご心配なく。紙なら持っています。」
彼はポケットティッシュと爽やかな笑顔を見せてトイレに向かった。

その様子をポカンと見ていた見習いのエクソシストは中年のエクソシストに尋ねる。
「あの、師匠。今の人、何なんです?」
「エリークラ…。奴は“非”の称号を持つエクソシストさ。」
称号とはエクソシストとしての超然たる実力と莫大な実績を持つ者だけに与えられる教会本部のお墨付きである。
「言動とかはアレだが実力は本物だ。言動とかはアレだがな…。」

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この記事へのコメント

2012年09月16日 23:06
しょっぱながら「進撃の巨人」を思い浮かべてしまった私は重症www
十メートルとか、大きな力の差とか、どうしても巨人を想起させてしまって・・・。

そして、そして、出たぁああああ!!
エクソシストのエリークラ!!
いやっほおおおおおう!!
非は、非常識の非!
重苦しい空気を一瞬で破壊してくれるエアクラッシャーの活躍を期待します。
あれ、これってダークサイド小説なんですか(殴
2012年09月17日 11:12
>アッキーさん
人間にとって脅威になるもの、好ましくないものは『悪魔』と呼ばれることが多いので間違ってないと思います。ちなみにこれを書いていた時は「進撃の巨人」を知りませんでした。(連載が始まっていなかったかも)

という訳でエクソシスト代表(?)のエリークラさん登場です。非は非常識の非!(合い言葉)
称号持ちのエクソシストがどんな活躍をしてくれるのか。まあ、悪魔が出て来るのでダークサイドになりましたが、さてはて中身は…?
2012年09月17日 18:13
「私一人で10分」
どこか「そんなの序二段」というギャグのトーンで笑える。
エリークラ。実力のほどは。しかし巨大悪魔を前に恐れないのは自信の表れか。
犬夜叉のかごめも、中3女子なのに妖怪を前にしても全く怖がらない。よほど弓矢に自信があるからか。
普通の丸腰の庶民は悪魔や妖怪と出くわしたら腰を抜かします。
リアリティに欠けるほどの勇敢さは物語の良いところ。
2012年09月18日 21:40
>ブラックホークさん
軽快にギャグを飛ばすエリークラ。確かに彼の性格を考えれば序の口か?
実力はエクソシスト組織『教会』のお墨付き。しかし、実際に闘ってみないと実力は分からないし、余程の実力者でも悪魔に殺されるのは珍しくないというのがこの世界。どれだけ実力や自信があっても死と隣り合わせの闘いの日々の中で、巨大悪魔に向かうエリークラの心境やいかに。
今、私の目の前に化け物が現れたら、まずは命を守るために逃げるのが賢明。物語なら勇気を持って立ち向かい闘って勝つのがかっこいいけど、実際は中々…。だからこそ物語を書いているのかもしれません。

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