邂逅 1

かつて、わたしは父と同じ医者だった。しかし、今は闇医者として生きている。
医師免許を剥奪されたことに関して恨みも後悔もない。未認可の薬を使用してでも救いたかった命だ。救えたのだからそれでよかった。
だが、医師免許を失って以降の生活は楽ではなかった。定まった病院もなく、こそこそと小さく病院の看板を出しては見つかって逃げたり、違法な治療や表沙汰に出来ない手術などを請け負ったりの日々を送っていた。幸いなことに、わたしには闇医者としてやっていけるぐらいの治療の腕があった。そして、幸いなことなのか、この世界には裏の医者を必要とする者達が多くいた。
わたしは闇医者として裏の世界を渡り歩いてきて、大抵のものは見てきたつもりだった。しかし、まだまだ世界は広く、深いということだろうか。わたしの知らないことはまだまだ多いようだ…。



あの日、わたしはとある資産家の息子の治療のために、その豪邸に招待されていた。案内された大広間には表の世界で有名な外科や内科、何人かの優秀な医者が来ていた。闇医者のわたしを呼ぶのだから表沙汰には出来ない治療と思っていたがそうではないのかもしれない。ただ、このようなケースは珍しくない。難病に対して雇い主が有名どころの医者を集めて集団で治療に当たらせるパターンだ。その集団の中にわたしが紛れ込んだだけなのだが、こういう場合の治療方針が決めにくくて仕方がない。特に医師免許剥奪ということは医者の間では知れ渡っているのでそれで爪弾きにされることもよくある。それでも最終的に命が救えるのなら、いい。
問題は治療すべき病気がどんな病気か知らされていないことだ。おそらくは病名を聞いただけでどの病院でも断られるレベルの難病。もちろん、これも珍しくない。そもそも、普通に金を積んで表の世界で治せるのならこんなまどろっこしいことはしないだろう。
集まった者達の視線が一瞬、わたしに向く。異物を見る目だ。病巣を見る目だ。この視線にも、もう慣れたが。そんな中で、わたしより異質な客がいた。自分の身長ぐらいある高さの椅子に腰掛けて、用意された紅茶を飲んでいる少女。見た目からは小学生低学年ぐらいの歳と思われる。その後ろには背の高い狐目の女性。その少女の付き人のように控えている。小人症だろうか。とするとあの少女が患者か。いや、座っている場所からしてわたし達と同じ医者として呼ばれた者のようだ。
わたしは椅子に座って、依頼人の登場を待った。

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この記事へのコメント

2013年02月02日 16:27
火剣「この湖界隈にしては貴重な人間の主人公だぞ」
コング「闇医者ということは、まさか我らが・・・」
火剣「まだ名乗っていない。はずしたらヤバイから次回を待とう」
コング「少女も怪しいな。僕の知っている少女だとしたら普通の人間ではない。空飛ぶ姫かも」
火剣「狐目の女はそのまま狐か?」
コング「だとしたら少女は我らの敵・・・」
火剣「敵なのか!」
コング「まあいい」
火剣「闇医者か。医者や弁護士は大変だな。免許がないのに医者と名乗ったら犯罪だからな」
コング「作家やライターや画家は本人がプロと宣言したら、即日プロだ」
火剣「でも医者は腕が確かでも免許がないと治療できない」
コング「しかし命を助けるのは正しい」
火剣「だが万が一失敗して免許がなかったとなったら大問題になる」
コング「その点評論家は楽な商売だ。嘘言っても責任を取る必要ないし、リスクがない」
火剣「テレビでテキトーに喋ってギャラをもらえる。羨ましいぜ」
コング「我々も毎日テキトーに喋ってるが、ノーギャラの友情出演だ。交通費も出ない」
火剣「邂逅か。闇医者と魔法少女の物語? サスペンスの香りがするぜ」
2013年02月02日 22:03
>火剣獣三郎さん
白龍「この湖界隈で闇医者は一人しかいませんね。」
パルナ「ということは?」
白龍「でもここは敢えて焦らしておく。名前は次回で。」
パルナ「んで少女と狐目の女の人…ってどう考えても…。」
白龍「それも次回で。」
ツヲ「ふふ、普通の人間じゃないってさ。」
パルナ「しかも、敵って言われてるし…。」
白龍「それはともかく、闇医者稼業は楽じゃないでしょうね。常に犯罪。」
ツヲ「捕まらなければ大丈夫。」
白龍「おいおい…。」
ツヲ「命を救うことで犯罪になるなら、法律が間違ってる。」
白龍「なるほど。」
ツヲ「その代わり失敗したら法律は守ってくれない。まあ、命を預かる医者としては、失敗は絶対避けたいところだろうけど。」
白龍「評論家稼業か…。」
パルナ「パルナ達も毎日てきとーに喋ってるけど、それはお喋りが楽しいからかな。」
白龍「そうですね。さて、二人の危険な(?)邂逅。闇医者と魔法少女の出会いは、この湖に何をもたらすのか!」

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