一年の妹達 十歳の目覚め 1

崩れゆくビル。消える町の灯り。響く爆発音。それを眺めるあの男の薄ら笑い。忘れられない気持ち悪さ。僕は嫌悪という感情を心の底から実感した。忘れるもんか、僕が十歳のあの日の夜の出来事を。


――――――――――――――――――――――――

僕、月守 年明(つきもり としあき)には母さんがいない。
僕、月守 年明の父さんは仕事で滅多に家に帰らない。
僕、月守 年明は家では一人ばっかりだ。

それでも、僕は何とか暮らしている。一人は大変だけど、父さんも大変なんだ。だから、何とか頑張れる。僕の頑張りはきっと母さんも見ていてくれる。そう思ってる。それに今日は僕の十歳の誕生日。今日だけはどんなことがあっても父さんは帰ってくると言っていた。電話で、メールで、FAXで、置き手紙で、しつこいぐらいに。だから僕は今日を楽しみにしていた。父さんは絶対帰ってくるって。今は夜の十時だけど、絶対帰ってくるって、僕は信じてる。信じてるんだから…。

早く帰ってきてよ、父さん…。



僕がウトウトし始めた時だった。玄関の扉が乱暴に開く音が聞こえた。
「としあきいいいいい!!!!待たせたなああああ!!!」
「父さん、父さん!」
白衣のままの男が玄関からリビングに一直線に向かって走ってきた。手にはサンタクロースのような大きな白い袋があった。
「誕生日おめでとううう、としあきいいいいい!!!!」
そう言いながら父さんは袋をひっくり返した。中からはおもちゃにゲームにプラモデルに人形にお菓子の詰め合わせ、デパートのキッズコーナーにあるものを全部かっさらってきたかのような品揃えだった。
「まだだ!まだ終わらない!」
そう言って父さんは一度、リビングを出て行くと巨大な箱を持って帰ってきた。
「じゃ、じゃーん!食べきれないぐらい大きなケーキだー!」
一体どれぐらい手間をかけて作られたんだろう。今まで見たこともないぐらい大きなチョコレートケーキが目の前に現れた。
「さあ、食べよう!遠慮はいらないぞ!今までの分まで食べていいんだ!はっはっはっ!」
久しぶりの父さんと一緒の食事。本当に久しぶりだ。いつ以来だろう。

時計の針はもうすぐ日付を越えようとしているところだった。

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この記事へのコメント

2013年02月19日 23:00
父親と息子の心温まる触れ合い、ですが・・・冒頭があまりにも不穏ですね。

佐久間「知ってるか山田。サンタは実在するんだぜ。」
山田「知ってるよ。セント・ニコラスだろ。」
八武「妹たちか。良い響きだ。」
山田「俺は嫌な予感しかしない・・・。」
呵々闘諍
2013年02月20日 21:14
輪廻「久しぶりのコメントなんで新作にコメントしようと思ったけど…。」
愛縷「いきなり暗い話しだねぇ…。」
輪廻「このお父さん、いったい何をやっている人なんだろう?仕事で忙しい割には大量の祝い品だし…。」
愛縷「今まで溜め込んだのか、それともそれなりの仕事なのか…。」
輪廻「出だしから悪い話だから、つい疑っちゃうよ…。」
2013年02月20日 21:21
>アッキーさん
冒頭さえなかったら、ただ単に心温まる話のフリが出来たのですが…。タイトルの妹達はまだ出てませんが、物語が進めば登場します。

ツヲ「うむ、妹は世界最高の生き物。」
白龍「別に否定はしませんが。」
ツヲ「可愛い妹達とだったら地獄に落ちてもいいだろう?」
白龍「何で地獄に落ちる前提?まあ、平穏に終わる物語ではないのですがね。」
2013年02月20日 21:28
>呵々闘諍さん
白龍「わーい、お久しぶりです。」
パルナ「ほら、はくりゅー、暗い話ばっかり出すから…。」
白龍「い、いや。す、救いはありますよ?」
パルナ「ちょっと、今、目をそらしたでしょ!」
白龍「さて、年明君のお父さんのお仕事ですが、研究者です。」
パルナ「何の研究?」
白龍「人間の可能性について研究しています。」
パルナ「ふーん。」
白龍「仕事で構えない分だけ色々と買ってきた、という訳ですね。」
パルナ「でも、あの出だしで嫌な予感がしないはずないよね。」
白龍「そうですよね…。」

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