英雄再来 第四話 トル・マリン 1

魔法使いだからこそ、魔法は万能じゃないって分からなきゃいけない。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

マチネから北西よりやや北の彼方に雷の次期大魔法使いのトル・マリンが住んでいる高原の町、雷の国がある。現在の雷の大魔法使いはトル・マリンの祖父である長老が務めているが、近年になって体調を崩すことが多くなっていた。なので、孫であり魔法の才能も豊かなトル・マリンに白羽の矢が立った。既に雷の宝玉の管理はトル・マリンが行っており、どれだけ若くても実質的には彼が雷の国最強の魔法使いだった。
しかし、トル・マリンは強過ぎる魔力を生まれ持ったために逆に体を蝕まれていた。この空気のいい高原で毎日薬草を煎じてもらいながら体調を保つのが精一杯だった。


いつものように寝床で横になりながら、トル・マリンはウトウトしていた。

(トール、具合はどう?)

夢現の中で彼を愛称で呼ぶのは、姉のアクア・マリン。最近は仕事が忙しくて中々お見舞いに来れていないが、トルにとっては姉が元気でいてくれれば何でもよかった。

(わたしはわたし?元気ハツラツよぉ。魔法でトールにも分けてあげたいぐらい。)

トルの病弱な体の原因が強過ぎる魔力であることは早くに分かっていた。ジュールズでは何とか出来ないかと薬草や魔法を色々と試した。しかし、どんな薬草もその日の体調を少し良くする程度だし、どんな魔法を使っても、ムーンストーンの魔法でも治せなかった。何故なら原因は体内の強過ぎる魔力なのだから。

(…トール、いつか新しい魔法か新しい薬草で、きっと元気になれる日が来るわ。その日を信じて…。)

魔法は万能ではない。トルはそのことを身に染みて分かっていた。


「…魔法にばかり頼ってはいけない。人間は自分の足で立ってこそなんだ…。」
トルは寝床のそばにあった杖を取るとゆっくりと立ち上がった。
(そうだ。例えば僕は立ち上がる時、杖に頼っている。でも、僕に立ち上がろうという意思がなければどうにもならない。魔法も道具も、人間が先なんだ。人間ありきじゃないといけない…。そうじゃないといずれ…。)

その時、トルは虫の知らせを感じた。まるで電波を受信するように嫌な予感がしたのだ。トルの予感は当たっていた。すぐにドタドタと慌てた足音が聞こえてきた。
「トル様!緊急事態です!」
トルの世話役の一人が、彼の病室へと飛び込んだ。
「何事ですか!?」

「トル様!マチネが、攻め込んで来ました!」

トルは苦悶の表情を浮かべた。マチネは何度、攻め込んでくれば気が済むのか。何度、人を傷付け、殺せば気が済むのか。だが、感傷に浸っている場合ではない。トルはすぐに気持ちを切り替えた。
「戦況は、どうなっています?」

「現在、長老様を筆頭に戦闘が行われています!奴らの数は今までにないぐらい多く、しかも、奴らに雷魔法が効かなくなっているのです!現在は足止めにだけは成功していますが、いつまで持つか…!」

トルは覚悟を決めた。いや、覚悟は最初から決まっていた。それを実行する、ただそれだけだった。
「分かりました。僕も戦います。僕を屋上に連れて行ってください。この雷の国で一番高い戦場へ。」

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この記事へのコメント

2014年07月25日 23:45
コング「真剣過ぎて我々の出る幕がなかった」
ゴリーレッド「ということはコングはいつもふざけて生きていたということか?」
コング「おおおおお・・・白鳥の湖!」
火剣「魔法は万能じゃない」
コング「ハリーを見ても確かにそうだ」
ゴリーレッド「魔法使いだからこその苦労がある」
コング「魔法使いを羨ましいとは思わない」
火剣「何でもアリじゃないからな。取り決めやルールがある」
ゴリーレッド「でも切羽詰ると魔法を使ってしまう」
コング「弥勒のように命の危険を百も承知で風穴を使う心境か」
火剣「その国を守るために自分の魔法が必要とあれば、無理をしてしまうのが魔法使い特有の使命感だ」
コング「残された姉は僕に任せろ」
ゴリーレッド「浴びせ蹴り!」
コング「どわあああ!」
火剣「マチネを倒せるのはやはり、あれしかいないか」
コング「かかかっ」
ゴリーレッド「キキは血で飛ぶと言っていた」
コング「♪カーテンを開いて~」
火剣「血ということはやはり生まれた時からのものか」
2014年07月25日 23:58
土、風、火と来て、次は雷。この国も蹂躙されてしまうのでしょうか・・・。
最大魔力イコール最強ではない。むしろ強すぎる魔力は害となる。これは何も、魔法使いに限った話ではないですね。
強すぎる武器、兵器。進化しすぎた脳。
過ぎたるは及ばざるが如しという言葉もありますが、たとえ良い(ように思える)ことでも、過度なものは弊害が大きくなるという罠。

さて、高台から稲妻を降らせるつもりでしょうか、トル・マリン。
耐電装備も、電気の発する熱には強くないはずですが、それすらもマチネは対策している・・・?
2014年07月26日 08:14
>火剣獣三郎さん
一般的に魔法のようと言うと、奇跡とか万能的で何でも出来てしまうイメージがあります。もちろん、魔法が使えないよりも使える方が出来ることは増える訳ですが、魔法でも出来ないこともある。それは医学が進歩しても助けられない命があるのと似ている気がします。また、魔法が使えるからこその苦労というものも当然出てくるでしょうし、ルール無用とも行かないでしょう。ただ、命が関わればどんな手段であれ、使えるものは全て使うのが人情。例えそれで自分の命が危険に晒されようとも…。このまま魔法を使えばトルはどうなるのか。もし、トルが死ぬことになれば姉のアクアはどんな気持ちになるのか…。
このマチネ軍に対して鉄槌が下るのはいつか、そして誰が下すのか。
魔法が使えるためには、まず素質が必要。それが血とか、才能とかいう部分になると思います。一方で努力なくては才能も開花しない。最初は下手であっても、気持ちと努力があればいつか飛べるようになる。
2014年07月26日 08:14
>アッキーさん
実はカトレーア時代の基本五属性がそのままジュールズ五国の名前になっています。トルは生粋の魔法使いタイプで、MPは高いけどHPは極端に低い。何かに突出しているということは何かに秀でていないということでもあるし、それ自体はいいけれど、本当に過ぎたるは~ですね。何事も程々が一番、というか何事もにちょうどいいところがあるのでしょう。
雷の国で一番高い場所へと向かったトルは何をするつもりなのか。強くない体では通常の戦場に出るのも宜しくない状態。しかし、魔法使いなので遠距離攻撃は得意のはず。さて、この攻撃はマチネに通用するのか?

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