英雄再来 第十話 オネ17



◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ソルディエルの剣がオネの喉を貫いた。それは間違いなく事実だった。普通ならソルディエルの勝利である。ひょっとすると死に際の反撃があるかもしれないが、刺し違えることになってもオネを倒すことが出来ればそれはマチネの勝利と呼んで差し支えないだろう。そもそも、喉を剣で突かれて生きている人間など存在するはずがない。この時点で、ソルディエルの勝利は確定した――――――――――――はずだった。
それでは、何故、ソルディエルは驚愕と恐怖の表情を浮かべているのかというと、前提が間違っていたのだ。オネは、人間ではなかった。

『?』

オネの表情は「何か不思議なことでもあるの?」と問いたそうな、小さな子どもが首を少し傾げて大人を見上げるような無邪気な顔だった。

長剣の刺さったオネの首は炎に変わっていて、そこを剣の刃が通っていた。炎を剣で切っても意味を成さないように、『初志完鉄』はオネに通じていなかった。首が何故炎になっているのか、その状態で何故生きていれるのか。今のソルディエルには何一つ理解出来なかった。

次の瞬間、オネはソルディエルに抱き着いた。子どもが大人に抱き着くように、粘土のような炎と共に抱き着いた。骨の砕ける音、機械の壊れる音、肉の焼ける音、そして叫び声が同時に響いた。それは灼熱地獄と呼ぶに相応しかった。


「ぎゃあああああぁぁっぁぁああっぁああっぁああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


オネがソルディエルに抱き着いていたのは数秒の出来事だったのか数分の出来事だったのか数時間の出来事だったのか、ソルディエルの意識はそれを知ることなく途切れた。地面に降り立ったオネが手を離すと同時にソルディエルは無防備に仰向けに倒れた。

『初志完鉄』も『世界一蹴』も完全に溶けて原型を留めていなかった。そのためソルディエルは両足に加えて両手も焼けて失った。体は水分があったためなのか、それとも王道具が身代わりになって熱を吸収してくれたためか一応原型は留めていた。それでも、肌は焼け爛れ、生きているかどうかも分からなかった。

(ここまで、か…。)
オネは自身を取り巻く熱を体に仕舞い、姿が最初の状態に戻った。
(タイチョー、人間の身でありながら、お前はよく戦ったよ…。正直、ここまで食い下がるとは思ってもみなかった。誇っていい。ただ…お前は、いやお前達人間は……『人類』は私の準備運動の相手にはなっても『敵』にはなり得ないのだな…。)
オネは寂しそうにため息を吐いた。

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この記事へのコメント

2014年12月25日 01:15
あああ・・・・・・薄々わかっていた結末とはいえ、やはり・・・。やや方向性は違えど、今のオネの心境とシンクロしているかもしれません。

佐久間「マジ火渡。」
山田「本当にな・・・。やはり火炎同化というか、そもそも存在そのものが火炎なのか、そういうレベルなんだよな。」
八武「オネに抱きつかれて燃えていくソルディエル。美しい!」
維澄「よし、私と佐久間で再現しよう。」
佐久間「必要性を感じない。」
八武「そう言わずに。」
維澄「それはさておき、これで準備運動レベルというのが、力の差を物語っているね。異質であるだけでなく、圧倒的である。」
神邪「これほどの力を持つ者の考えることって、どんなものでしょうね。母さんも膨大な火力を持っていましたが・・・。」
佐久間「異端と超越。二重の意味で外れている者は、およそ真っ当な生活は営めない。そんな奴が考えることは、限られてくるさ。」
神邪「支配、ですか。」
佐久間「私やオネは、多分そのタイプだな。」
2014年12月26日 19:55
>アッキーさん
現実は残酷で、どれほど努力してもどれほど奇跡が起こっても覆せない事柄がある。人間が宇宙の果てまで旅出来ないように、地球の中心部まで行けないように、絶対に不可能なことは存在する。そして、オネとソルディエルの戦いも、途中でどれだけの奇跡がありドラマがあっても結末は最初に予感した通り。ソルディエルがオネに勝つ、それは人間が火山に勝つような荒唐無稽な話だったのかもしれません…。
オネの正体、それはこの世界の炎という概念そのものに近く、精霊界と魔法世界における炎魔法力そのものが人間の形をしたようなもの。人に似て人のような思考をしても人にはなれない。では、そんな者が考えることとは一体なんなのか。およそ人間らしい生活は送れないし、それに合わせられるような周りもいない。しかし、オネは準備運動だけで満足するようなタイプではないでしょう。となると、そのフラストレーションはどんな形になるのか。その一つが支配という形なのかもしれませんね。

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