英雄再来 第十一話 ソルディエル14

これ以上、何を奪うというのか。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「止めろお!!魔法使いいい!!」
ソルディエルは叫びながら寝台から転げ落ちた。

「――――――!!」

「まだ奪うのか!!ワタシからまだ奪うのかああ!!」

「――――――!!」

「まだ奪い足りないのか!!?そうまでして奪いたいのかあああ!!?」

「ソルディエル君!!」

そこでようやくソルディエルは夢を見ていたことに気が付いた。そして、ジェゼナが暴れる自分を怪我しないように抱き押さえ、大声で名前を呼び続けていたことにも気が付いた。

「ソルディエル君!!」

「はぁー!はぁー!はぁー!はぁー!」
ソルディエルはジェゼナに背中をさすってもらいながら、どうにか呼吸を整えた。

「ソルディエル君…。」

ソルディエルは唇を噛み締め、体全体に力を入れて、身を震わせながら呟くように言葉を吐いた。
「魔法使いめぇええ…!これ以上、何を奪うというのだぁあああ…!」
震えながら吐き出した声は、ソルディエルの精一杯我慢した泣き声だった。ソルディエルはそれ以上の言葉を発することが出来ず、ただ咳き込み、泣き出した。ジェゼナはソルディエルの背中に手を置きながら、もう片方の手で掛け布団を引っ張って、それで二人をくるんだ。

それ以降、ソルディエルは涙枯れるまで泣いた。小さな子どものように泣いた。もう涙など出ないと思っていたが、それでも止めどなく溢れ出ていた。





だいぶと時間が経った頃に、ソルディエルは泣き止んだ。そして、ゆっくりと顔を上げて、ジェゼナを見た。
「…ジェゼナ隊長…。…。…。…ワタシの子は…。」
そう言われて、ジェゼナは目を伏せた。それだけでソルディエルには分かってしまった。いつも相手の目を見て話をするジェゼナが目をそらすことの意味を。

ソルディエルは両の拳を今までで一番強く握り、体全体を強ばらせ、腹に思いっきり力を入れて、力の限り叫んだ。とにかく叫んだ。その声は部屋中に鳴り響き、部屋を越えて、廊下まで、マチネの他の場所まで鳴り響いた。叫んでいないとソルディエルは自分自身が狂ってしまいそうだった。ただひたすらに叫んで、肺の中の空気がなくなり、頭に血が上って、それでも叫び続けた結果、ソルディエルは再び気を失った。

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この記事へのコメント

2015年01月13日 23:45
望まぬ妊娠とはいえ、我が子は我が子。暴虐の魔法使いの血を引いているということよりも、あんな父親には渡したくないという思いが勝ったようですね。
やはり未熟児で、助けることは出来なかった。それでも、ソルディエルの心を覆ったのが、嫌悪や不快感ではなく、怒りと悲しみであることは、まだしも救いだと思います。

神邪「いつから僕は、怒りや悲しみを濁らせて、嫌悪感いっぱいの人間になってしまったのか・・・。」
佐久間「13歳くらい?」
神邪「その前後ですかね。」
佐久間「ソルディエルは純粋だ。本気の怒りを解放すれば、体が限界を迎える。それでこそ本物だとわかる。」
神邪「同感です。怒りの感情に身を任せれば、肉体に変調をきたします。そうでないならば、大した怒りじゃないんですよ。」
山田「それは厳しい意見に思えるが。」
八武「うんにゃ、厳しくないよ。私が滅多に怒らないのは何故だと思う?」
山田「・・・。」
八武「しおりんや佐久間も、あんまり怒らないだろ。それは逆に、怒りを溜め込んでいるのさ。」
維澄「まあ、なるべく冷静に考えようとはしている。ソルディエルの爆発は、ちっとも大袈裟じゃないと感じるくらいには、私もストレス溜まっているのかな。」
佐久間「胸で癒すとか言うなよ?」
維澄「チッ、釘を刺されたか・・。」
八武「しおりん?」
2015年01月14日 23:45
>アッキーさん
本当に半々でした。魔法使いの子どもだからという思いももちろんあり、それが前面に出れば結果は違ったし、そうなる可能性も大いにありました。しかし、その場面になった時、出た言葉はこちらだった。本当にギリギリのところで、子どもへの愛情が勝ちました。
非常に残念ながら、ソルディエルの子どもは死産でした。しかし、あんな子は死んで当然とか、妊娠なんかしたくなかった、という思いではなく、子どもの死をただ純粋に嘆き悲しむことが出来たのは、まだ救いなのかもしれません。もしかすると、魔法使いを嫌悪するあまりに子どもすらも嫌悪したことで、自分自身を嫌悪することになったかもしれませんから。
心を砕かれてそこから立ち直り、復讐に燃える特攻隊のソルディエルは、傍から見ればたくましかったり勇ましかったり。しかし、その中身はとても純粋な少女のままなのです。本来なら親にまだ甘えたり、ワガママ言ったり、自分の将来を色々妄想したり、恋に恋する年頃だった。だからこそ100%の怒りを解放した時、体が耐え切れなかった。今まで抑圧されたものが一気に解放されたのですから。今はただ、ソルディエルの心の傷が癒されるようにと願うばかり…。

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