英雄再来 第十一話 ソルディエル16

ジェゼナ隊長のようになれるかな?

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

しばらくしてエクスはゆっくり口を開いた。
「…隊長も同じこと言ってたっす。」

ソルディエルは涙で濡れた顔を上げてエクスを見た。

「ちゃんと産んであげたかったって…。」

「ジェゼナ隊長が…?」

「ええ、そうっす。数々の大切なものを奪っていった魔法使いが憎いのは言うまでもないけれども、赤ん坊には何も罪はない。赤ん坊は親を選べないし、何よりボクから何も奪ってはいない。生きて産んだとしても様々な問題はあっただろうし、きっと誰よりも辛い思いをすることになっただろう。それでもボクが生きることを選んだように、ボクの赤ん坊も生きることを選ぶだろうって。何せ、ボクの血を引いているんだから。…確か、そんな感じのことを言ってました…。
それから、その子の分まで生きる。それが、今のボクのすべきことだ、と。そう言ってましたね…。隊長は特攻隊員の皆に優しくて情に厚い。冷酷な判断も必要な戦場において、それが弱点になるように思えるけれども、実はそうじゃないっす。誰の死をも、その意志を引き継いで次に繋げる。諦めたら今まで自分が受け取ってきた皆の意志も一緒に消してしまうことになる。だから絶対に諦めない。真の意味で誰も死なせないのが隊長なんっす。」


ソルディエルはエクスの言ったジェゼナの言葉を頭の中で反芻した。


「ワタシも…今日までにいくつも意志を受け取った…。受け取った分だけ、先に進むための力になる…。そっか…ジェゼナ隊長が何で強いのか、今、はっきりと分かった…。信じているんだ、人の意志を…。それを全部抱えて進んでるから強いんだ…。ずっとジェゼナ隊長が言い続けてきた言葉の意味がようやく分かった…!」

ソルディエルは寝床から立ち上がった。

「エクスさん、ワタシ、進みます。」

それははっきりとした言葉だった。強い口調でもないし、叫んでもいない。けれども、はっきりとどっしりと耳に届き、心に届く口調だった。それは宣言だった。決意表明だった。

エクスは心の中で安堵した。もうソルディエルは大丈夫だという確信を得られたのだから。他に理由をいくつも並べられるより、ソルディエルのその言葉、その声、その口調が、もう大丈夫である何よりの証拠に思えた。

「そうっすね。進みましょう。共に。」

ソルディエルとエクスはお互いに微笑み合った。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

ナイス
ガッツ(がんばれ!)

この記事へのコメント

2015年01月17日 23:46
コング「貞操具を破壊する時は命もないか」
ゴリーレッド「もうその話は終わった」
コング「終わってない。二度と悲劇を繰り返さないためか。なるほどなるほど。でも鍵があるはず」
火剣「自分で外したり装着したりするわけだから、鍵を取られたらアウトか」
コング「貞操具に手を触れたら光線が出るとか」
火剣「改良か。でも諸刃の剣のような気もする」
ゴリーレッド「強い口調でもない。叫んでもいない。木鶏は『力まず、つくろわず、ありのままの自然体』だから一歩近づいたのではないか」
火剣「白鵬も立ち合い直前に館内に巻き起こった遠藤コールでキレたのか、顔面張り手に顎に肘打ちのようなぶちかましの荒っぽい相撲を取ってしまった。木鶏になるのは難しいんだ」
コング「遠藤コールを聞いても全く意に介せずでないとダメなわけか。厳しい!」
ゴリーレッド「ジェゼナこそ木鶏に近い」
コング「みんな僕の域に達するまでまだまだだ」
ゴリーレッド「君は勿怪」
2015年01月18日 00:34
ソルディエルが特務隊の隊長になることは、この瞬間に決定したのですね。
ジェゼナ隊長と同じ体験をし、同じ結論へ辿り着く者。
エクスが敬語を使うようになったのは、ソルディエルが隊長になってからでしょうか?

佐久間「私も山田の子を産みたい。」
山田「感動シーンに水を差すな。」
佐久間「何故そうなる。」
維澄「いずれ女同士でも子供を・・・もとい、特務隊が女性で構成されている理由がよくわかる。」
八武「にゃるほど。魔法使いからの性被害と関係しているわけだ。それだけではないとしても・・・。」
佐久間「まあ、アールは違うしな。」
山田「あのときのソルディエルの対応は、こうした背景があったわけだなぁ。」
神邪「様々な問題というと、やっぱり差別ですかね。しかし僕でも生きることを選んだように、やっぱり生きようとするでしょう。生きて欲しいと願った人がいて、その人を尊敬し、その人に恥じない生き方をしたいと思うのです。」
維澄「竜堂眸は死産の赤子を魔術で蘇生させたんだったね。凄い執念だ。」
佐久間「もしも子供を生き返らせる方法があるとしたら、魔法にも手を出したかもしれんなぁ。ジェゼナたちが憎いのは、魔法使いであって魔法ではない。」
山田「それが後世、どこで捻じ曲がったのか。やはり“知らない世代”からなのか・・・。」
2015年01月18日 22:53
>火剣獣三郎さん
任務中は貞操具を着用している特務隊ですが、任務後には外している者も。ずっとつけっぱなしという訳にもいきませんし。なので鍵は各人が大切に保管しています。大概は自分の部屋の中のどこかに隠すような形で保管していますので、任務の際に鍵を奪われて…というようなことはないと思います。流石に魔法使いが特定の誰かの部屋に侵入し、鍵を奪って、その鍵に合う相手を襲いに行くというのは考え難いので。
貞操具に触れると光線が出るとか、凄い防犯(?)システムですが、多分難しいかと。誤作動して爆発なんてことになったらまずいし、触れたらってことは自分で触れないから外せもしないし、服を着るのも難しいかも。もし、辱めを受けるより死を選ぶ、というのなら無理やり貞操具を外そうとしたら爆発する、ぐらいのものは作れるかもしれません。
ソルディエルはこの経験を乗り越え、また一歩、木鶏に近付いたか。怒りで我を忘れては相手の策にかかり命を落とすことも。どんな時でも自然体でいられたら、それは大木のような安定した強さでしょう。ソルディエルもジェゼナもそれを目指しております。木鶏に至るまでにはどれほどの時間が必要なのか…。道のりは長いでしょう。
2015年01月18日 22:53
>アッキーさん
ソルディエルがジェゼナの後継者として特務隊隊長になったのは、やはり似たような苦しみを味わい、それでも先に進むと決めたから。実は後にソルディエルを特務隊隊長に推薦したのはエクスなのです。その時から、エクスは自分を呼び捨てにさせて、自身はソルディエルを隊長と呼び、敬語を使うようになります。
後の特務隊が女性のみで構成されている理由は、決して趣味とかそういうのではなく、厳然たる理由があったのです。特務隊の中には魔法使いからの性被害を受けて男性恐怖症になった者も少なくありません。当初は王道具使いを集めたメンバー構成でしたが、それと女性陣の集合が見事に一致。そして現在の特務隊は女性のみになりました。あの時のソルディエルのアールへの対応は被害にあった女性ならではの対応だったのです。
生まれた子どもにつきまとう様々な問題は、現代にも通じるものがあります。いわれのない言葉や差別などもそれに含まれますし、書いてないだけでマチネ内でも身体欠損者への差別や男女差別もたくさん存在します。特攻隊は対魔法使いという目標があるのと、ジェゼナが隊長をしているゆえにそういう部分があんまし出てません。
もし、生まれていたらきっと辛い人生になる。けれども、それでも生きようとする意志が人には備わっているのかもしれません。かつてセンテル国王が死んだ妻を蘇らせようとしていたように、生き返らせる方法があれば手を出していたのかも。
ちなみに、魔法が憎いのか、魔法使いが憎いのか。このテーマはどこかで盛り込みたいと考えています。

この記事へのトラックバック