英雄再来 第十一話 ソルディエル17

ワタシは独りじゃない。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ソルディエルとエクスがしばらく他愛のない話をしていると、部屋の扉を叩く音が聞こえた。
「はい、どうぞ。」
ソルディエルの呼びかけに対して扉が開き、果物を持った一人の少年が入ってきた。

「ソルディエル見舞いに来た。と、エクスさんもいたんですね…。」

「ヴィーセ。」
ソルディエルは少しだけ驚いた。ヴィーセはソルディエルとほぼ同時期に特攻隊に入った少年で、常に二本の剣を腰に差していた。特攻隊の新入りにはよくある特徴ではあるが、目付きは悪くて、愛想があまりなく、感情をあまり表に出さないし、他と距離を置く傾向がある少年だった。そんなヴィーセが見舞いに来てくれたことに対してソルディエルは驚きと喜びを感じていた。
「嬉しいことをしてくれるじゃないか。…ところで、そのほっぺたはどうしたのだ?」
ヴィーセの頬には傷を覆うための少し大きめの絆創膏が貼られていた。
「任務の時にか?」

ヴィーセは少しだけ間を置いて答えた。
「…転んだ。」

「ぷっ…!」
思わず吹き出したエクスをヴィーセが睨み付けた。
「やや、ごめんっす。」
エクスは手を合わせてヴィーセに謝った。

「?」
ソルディエルは首を傾げた。ヴィーセは新入りではあるが、ソルディエル同様既に頭角を現し始めていて、いずれ龍に化けるか虎に化けるか、そんな素質を感じさせる少年だった。そんな彼が転んだ時に受身も取らず頬を打ったというのは少し想像し難かった。

「とにかく、転んだのだ。」
しかも、妙に転んだことにこだわっている。絶対に転んだ時の怪我ではないとソルディエルは思った。
任務の時の負傷なら不名誉でも何でもないだろうから隠す必要はない。何かを隠そうとしているのは間違いないが、ヴィーセが転んだと強く主張するのでソルディエルはそれ以上追求しなかった。


「そういや、ヴィーセは何でアタシに対しては敬語なんすか?隊長に敬語なのは分かるっすけど。」

「そういうエクスさんも、どうして年下のソルディエルを「さん」付けなんですか?」

「え?ああ、ん~、どうしてっすかね?」
あっけらかんと答えるエクスを見てヴィーセは溜息を吐いた。


「…まあ、そんなことよりもだ、ソルディエル。」
ヴィーセは、ソルディエルを見た。
「どうなんだ?」

「感覚的には六、七割といったところだろう。基礎訓練から始めて、一週間以内に復帰してみせる。」

「そうか。」
ヴィーセは少しホッとしたような表情を浮かべた。

「あ、今のは「いつものソルディエルだ」って顔っすね。何だかんだ言って――――――。」
そう言いかけたエクスをヴィーセが睨み付けた。
「あ、図星っすか?」
エクスは手を口に当ててニヤニヤしている。
「ワタシはただ特攻隊の戦力が減るのを心配しているだけですが。何か?」
「別に~。素直じゃないって思っただけっす。」

「…とにかく、ソルディエル。君の体は君のものだけじゃない。隊長や特攻隊の期待…いや、人間の希望だ。欠けることは許されない。」
「全ての魔法使いを殺すまで戦いを止めるつもりはない。ワタシに託した仲間の分、そして自分自身の分まできっちり戦う。そしてワタシが戦い続ける限り、ワタシに託した仲間の想いも決して消えることはない。ワタシ達の戦いの果てに必ずや、魔法使いのいない平和な世界を創り出そうじゃないか。」

「特攻隊復帰の日を待っている。」
そう言ってヴィーセはソルディエルの部屋を後にした。

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この記事へのコメント

2015年01月26日 01:57
ヴィーセはソルディエルのことを・・・? 変わりつつある関係性も含めてニヤニヤ。
しかし気になるのは頬の傷。よからぬ迫害に遭ったのかと想像しますが、それとも任務で負った傷でしょうか。

佐久間「何だか誰かを思い出すな。」
山田「お前だ、お前。」
維澄「目つきが悪く、愛想も無く、無表情で、近寄りがたい。そんな佐久間を見てみたい。」
佐久間「いや、本当に見たいか?」
八武「見たい。」
神邪「見たいです。」
佐久間「何でだよ・・・。」
山田「俺は間近で見ていた。羨ましいか?」
神邪「羨ましいですね。」
八武「まったくだ。」
維澄「タイムマシンに乗りたい。」
佐久間「病人どもは放っといて、頬の傷について・・・・・・私以外オール病気だった。」
神邪「迫害はありそうですね。」
八武「ふむ、それがマチネの歪みを象徴しているとも言える。」
山田「なるほど、軽々しく迫害していた連中や、その系譜は、軽々しく思想を理解した気になるってか。」
維澄「勝ち馬に乗って、自分たちが迫害していたことさえ忘れてしまうんだ。」
佐久間「頬の傷が迫害かどうかは別にしても、実際に迫害やら何やらはあるみたいだしな。」
2015年01月26日 23:38
>アッキーさん
ヴィーセにとって同時期に特攻隊に入り、目覚しい成果を上げている上に王道具使いでもあるソルディエルは嫌が応でも気になります。仲間でありライバルであり、そして王道具が使える者という憧れもあり。青春の香りがしますね。しかし、頬の傷はなんなのか。ヴィーセは頑なに理由を隠しておりますが…。
特攻隊に来る人間は魔法使いに家族を殺されたり酷い目に遭った者達ばかりなので、目付きが悪かったり、似たような境遇の者達に対しても中々心を開けない者も多いです。世界中が敵に見えているような、そんな感じ。昔の佐久間さんもそうだったのでしょうか。
ヴィーセの頬の怪我の真相はさておき、マチネも決して一枚岩ではありません。人が集まれば歪みを大きくなり、大きいゆえに気が付くのに時間がかかる。そして気が付いた時には手遅れな場合も…。迫害された者が他人の痛みを分かり、人に優しくなれる者は決して多数派ではないと思います。辛い目に遭った者は、その辛さを別の誰か弱い者に対して同じことをするの珍しい現象ではない。負の系譜もまたマチネの中に存在します。

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