英雄再来 第十一話 ソルディエル18

闇はどこにでも存在する。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ヴィーセが出て行ってから少しして、特攻隊の隊員が何人もソルディエルの見舞いに来た。今まで特攻隊は外へ出かける任務を行っていて、今日が帰還の日だったのだ。しかし、不思議なことに何人かの隊員はヴィーセと同じ場所に怪我を負っていて、聞いても転んだとしか言わなかった。
そして、極めつけはソルディエルが王道具の整備のために技術部に行った時のことだった。

「アウトマ!貴様もか!?」
マチネの技術部所属の科学者、アウトマも何故か頬に絆創膏を付けていた。
「な、何の話だ!?」
ソルディエルは苦い顔をしたが、それ以上は追求しなかった。


「…王道具の整備をしてもらいに来た。」
普段のソルディエルからすれば、どことなくぶっきらぼうな言い方であった。アウトマは若白髪混じりの頭を掻きながら『一』と書かれた扉を指差した。
「あの先に進んでくれ。後はいつも通りだ。」

ソルディエルが無言のまま歩き始めたその時、アウトマが意を決したように言い放った。
「ソルディエル、お主の息子は墓地の一番奥に葬った。一番新しい墓だから行けばどれかはすぐ分かる。後で花でも手向けてやるといい。」

「…人として葬ってくれたんだな。感謝する…。」
ソルディエルは一瞬だけ振り返って、そのまま扉の向こうへと去っていった。


後に残ったアウトマは唇を噛み締めていた。
(…感謝などするな、ソルディエル…。ワタシにそんな資格はない…。ワタシは最低だ…。)
アウトマはまだ少し痛む自分の頬に手を当てて、数日前のことを思い出していた。
(ジェゼナはソルディエルに話していないのか…。話していれば、感謝などという言葉が出るはずもないからな…。)


――――――――――――

話は数日前の、ソルディエルが霊安室の外で出産した後まで遡る。

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この記事へのコメント

2015年01月27日 00:14
・・・? まさか、死産だったのではなく・・・?
そして更に謎めいてきた、頬の傷。迫害だとすれば、同じ場所というのは・・・見せしめとすれば考えられなくもないですが。

佐久間「始末されたのかなぁ。」
山田「まさか・・・しかし、ありえるか?」
八武「そういう依頼もあったねぃ。」
山田「受けたのか。」
八武「というか、堕胎というのは、そういうものだ。合法的であってもな。」
山田「そうだな・・・。」
八武「法律では、未熟児であっても生存可能とされる時期からは、堕胎できないことになっている。それを過ぎれば、生まれてから殺すのも、中で潰すのも、等しく生臭い感触だ。」
維澄「どこからが命なのかは、時代や環境で規定されるわけだね。口減らしで幼児を殺すのは、今でもある。」
神邪「始末どころか、死産だったのを蘇らせてもらった僕は、本当に恵まれています。」
佐久間「ま、死んでたら恨み言も吐けないけどな。」
八武「それはそうと、若かりし頃のアウトマ登場。若白髪か。」
佐久間「お前も20代の頃から白髪だったな。」
八武「色々あったからねぃ。」
2015年01月27日 00:24
火剣「ヴィーセ」
コング「龍か虎かとは凄い期待のされようだ。龍虎になれば無敵。飛車角が成って龍馬のようだ」
ゴリーレッド「飛車角といえば関羽と張飛のような」
コング「すけさんも聞きなさい。かくさんも聞きなさい。かっかっか・・・」
ゴリーレッド「カンガルーキック!」
コング「NO!」
火剣「魔法使いのいない世界がイコール平和な世界とは、残念ながらならねんだ」
ゴリーレッド「ところで皆頬に傷? そして皆転んだとすぐバレる嘘をつく。何があった」
コング「闘魂ビンタの行列に並んだなんて、戦士が恥ずかしくて言えるか」
ゴリーレッド「張り手!」
コング「だあああああ!」
火剣「気になるな」
コング「魔法使いがらみか?」
ゴリーレッド「だったら隠す必要がない」
コング「キスされたか」
火剣「まじめに推理しろ」
2015年02月01日 23:53
>アッキーさん
あの場でソルディエルは気絶し、目覚めるまでの一切のことを彼女は知りません。逆にその場にいたジェゼナや後に連絡を受けて駆け付けた技術部や医療班の者などはその間の出来事を多かれ少なかれ知っています。そのことと頬の傷にどんな関係があるのか。見せしめか、それとも…?
少なくとも現在、確実なことはソルディエルの子どもは死んでいるということだけです。死産だったにせよ、始末されたにせよ、何一つ言葉を発することはない。成長することもなく、言葉を交わすことも、笑い合うことすら出来なかった。ソルディエルにとっては確かに存在した命でした。
思えばブログを始めて少ししてから藪四郎さんの話で堕胎をテーマにしました。高校の時に聞いた堕胎に関する話が暗く、どうにかバッドエンドではない話を私自身が望んでいたから生まれた話なのかもしれません。今回はどんな話になるのやら…。
ソルディエルの過去、マチネの過去の話なので、若い頃のアウトマも登場。後のことを考えると、アウトマは過労と苦悩によって人より早く老けたかもしれません。
2015年02月01日 23:54
>火剣獣三郎さん
後のマチネで炎の国討伐部隊の隊長を任されるヴィーセも、実は特攻隊出身です。ジュールズの中で一番戦闘力が高い魔法使いが揃っていたのが炎の国であり、炎の大魔法使いのガーネットはジュールズ最強との呼び声が高かった。そことの戦闘と任されるほど、ヴィーセは出世しました。まさに飛車が裏返って龍になったかのよう。
魔法使いと人間は同じ世界に暮らすことは出来ないのか。もし、多くの魔法使いもまた同じ人間であることを知ることが出来れば、真の平和に一歩近付くことが出来るのでしょうが、残念ながら両者の架け橋はまだ存在していません。
二人ぐらいなら同じところに傷があってもまだどうとでも言い訳出来る気はしますが、それが三人、四人、それ以上ともなると明らかに何かあったと思うしかない。本当に何があったんでしょうね。魔法使いがらみなら隠さなくてもいいはずなのに。案外、本当に気合注入のための怪我だったりして?

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