英雄再来 第十一話 ソルディエル4

『大切』が少しずつ増えていく。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「エクスさん、少し休憩しましょうか。」
「そうっすね。」
ソルディエルは特攻隊に入ってから日々、訓練と実戦を繰り返していた。訓練を行う時によく組む相手の一人にエクスという少女がいた。

「ソルディエルさん、特攻隊には慣れたっすか?」
近場の適当な段差に腰掛けて軍隊からの支給食を手に取りながら、エクスはソルディエルに問いかけた。ソルディエルは少し考えてから答えた。
「…過ごしやすいです。村で暮らしていた時のことを考えれば非日常の世界だけれども、力を蓄え、魔法使いを殺せるこの日々に充実感を覚えている。」
ソルディエルは自分の機械の足を触った。
「王道具、でしたっけ。ワタシの体に実に良く馴染んで、どんなに贔屓目に見ても失った足以上の働きをしてくれる。これがあるから魔法使いを殺せる、魔法使いに対抗出来る。人間が作り出した機械の凄さを日々実感します。それから――――――。」

「それから?」

「…魔法使いが驚くほど殺しやすいことも分かりました。」

「確かに…。魔法使いは見た目も喋る言葉も同じで、違うのは魔法を使うかどうかっす。その魔法も発動するまでに少しの時間が必要だし、発動にも使い手の意思が必要だから奇襲には弱いし、懐に飛び込めば魔法の優位性はなくなるっすね。懐に飛び込んでグサッ!もしくは遠くからズドンッ!これで殺せるっす。魔法使いを知れば知るほど、戦えば戦うほど、弱点が見えてくるっすね。」

「最初は無理だと思えることでもやってみないと分からない。確か、昔のことわざで、『ころんぶすの卵』っていうんでしたっけ。」

「そうっすね。ところで、ころんぶすが何か知らないっすけど昆布の親戚か何かっすか?」

「さあ…。ワタシも知りません。」
ソルディエルはクスリと笑った。


「まあ、魔法使いは今までの歴史の中で魔法の恐怖でもってアタシ達の自由を奪ってきたってことっすよね。本当は戦う意思は自分で決めるものなのに、魔法の絶対的な力を見せられて戦う意思を奪われてきた。それは逆に言えば魔法使いも無敵じゃないし、魔法も万能じゃない。付け入る隙があるってことっす。アタシ達の反逆の狼煙はいずれ他の魔法使いに苦しむ人々にも勇気を与えるはずっす。まあ、そうなれば魔法使いの方はますますアタシ達を潰そうと必死になる訳っすけどね。」

「でもワタシ達は負けない。ジェゼナ隊長が教えてくれた、絶対に奪えないただ一つのものがあるから。」

「そうっすね。アタシもそう思うっす。」
エクスの表裏のない肯定の笑みにソルディエルは安らぎを覚えていた。

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この記事へのコメント

2015年01月03日 02:30
エクスの方が先輩だったんですか!
後の状況を知っている分、エクスに敬語を使うソルディエルが新鮮ですね。

佐久間「私も人間に生まれ変わった頃は、大切なものなんて我が身ひとつだけだった。それが、母しゃんに愛され、山田に愛され、死根也と再会し、栞とも出会い、大切なものが増えていった。」
山田「イイハナシめいてるところ悪いんだが、やや語弊があると思わないか。」
佐久間「思わない。」
維澄「エクスは、いつ頃から百合に目覚めていたんだろうか。」
八武「このときからだったら萌える!」
佐久間「・・・栞は、私と出会った頃からとか言わないよな?」
維澄「言うし。」
佐久間「おいやめろ。」
神邪「この世界にコロンブスはいないはずですから、これは梅花さんのもたらした知識なんですね。彼女の思いは生き続けていることを感じます。」
維澄「心が温かくなるね。」
佐久間「昆布だけどな。」
山田「梅花の、平和を願う思いこそ、最大限に伝わってほしかった・・。」
佐久間「しかし梅花は、武力を以って人間の歴史をもたらしたことを、忘れてはならない。それは梅花とチュルーリが、よく言っていたことだ。」
山田「平和の為の戦いか。しかし戦いは平和ではない。だとすれば何の為に・・」
佐久間「ま、そこに矛盾を感じ、悩む者だけが、平和を築けるってね。梅花やソルディエルにあって、後のマチネ兵らには無かったものだ。」
維澄「胸の話を含めてないだろうね?」
佐久間「ねえよ!」
八武「しおりんが疑うのも無理ないねぃ。」
山田「今まで散々・・」
佐久間「私が悪かったよ!」
2015年01月03日 16:09
火剣「魔法使いもエスパーも万能じゃねえ。どっちが先に仕掛けたのか?」
ゴリーレッド「SPECで、エスパーが人を攻撃して酷いと思ったが、警視庁の特殊部隊がエスパーは必ず人々に害をなすものと決めつけ全滅作戦に乗り出す。エスパーたちも全滅を防ぐため、自分たちを守るために応戦。攻撃ではなくて身を守るための応戦だった」
火剣「マチネと魔法使いはどっちが先だったのか。そして今でも魔法使い=悪という図式が身に染みている」
ゴリーレッド「もののけ姫で獣対人間の戦争は憎悪が根底にあるから終わりを知らなかった」
火剣「憎悪を乗り越えて和睦する道を切り開くアシタカみたいな人間が出て来ないと、復讐の連鎖で戦は永久に続く」
ゴリーレッド「簡単に倒せる魔法使いを見て、魔法使い恐れずに足らずと。だからこそオネクラスの出現は衝撃が大きい」
火剣「本来魔法使いというのは、人間がとても太刀打ちできる相手じゃない。理屈を超えたのが魔法だ」
コング「真面目な話をして僕の発言をとことんブロックするとは、許せん」
ゴリーレッド「コングも真面目な話をすればいい」
コング「ソルディエルの名前の由来はソルジャー。では、エクスの名前の由来はエクスタs」
ゴリーレッド「バックドロップ!」
コング「だあああ!」
ゴリーレッド「もう喋らなくていい」
2015年01月04日 10:01
>アッキーさん
ソルディエル過去編ということで彼女の今までをどんどん公開していきます。エクスとの関係もその一つです。今現在では身長とか胸とかはソルディエルの方が大きいのですが、昔はエクスの方がお姉さんの立場。ソルディエルとしても、エクスが副隊長をしてくれていることが大きな安心に繋がっています。
魔法使いに全てを奪われて、もうなにもいらないと無気力に囚われていたソルディエルですが、少しずつ新しいものを積み上げ始めています。人との出会いも大切なものの一つですね。その出会いで、生涯の友人を見つけられるかもしれないので。
エクスがいつソルディエルを好きになっていたのかは定かではありませんが、その辺りもいずれどこかで書きたいと思います。ひょっとすると出会った瞬間からもう惹かれ合っていた可能性も無きにしも非ず。
この世界にはいくつか不思議な言葉が伝わっていて、『ころんぶすの卵』もその一つ。気が付いたら皆の生活の中に定着して、意味も知っているけれど、どんな経緯で生まれた言葉なのか誰も知らない。長い歴史の中で経緯が忘れ去られたのか、それとも…。梅花さんやハデスなど、この世界に辿り着いた人々の影響が様々なところに少なからず存在するのです。
梅花さんの平和への想いは直接関わった人々には届いた。その人々の子ども達にも届いた。しかし、孫、ひ孫と時間を経るにつれて歴史の一コマになってしまった…。思えば梅花さんはずっと矛盾と戦ってきた。戦いを拒む心が平和を求め、平和を実現するために戦わなくてはいけない矛盾。正義とは、悪とは、自分はどちらなのか。
あ、佐久間さんが『狼少年』状態になってる。
2015年01月04日 10:01
>火剣獣三郎さん
鶏が先か卵が先か。長い歴史の中でどちらが先に仕掛けたのかは消し去られてしまいました。チュルーリの時には普通の人間が魔法使いに強引に命令して戦に駆り出した。カトレーアの時代には、魔法使いが国王となり、普通の人間を引き連れて戦を行った。ひょっとすると、交互に立場が入れ替わっているのかもしれません。その時の強さ、数、状況によって変化する。最早、最初がどうだったのかを伝える歴史書や口伝などもほとんどが失われている今では、目の前にあることが全てになってしまって、やったらやり返す、やられたからやる、という負の連鎖が完成してしまっています。根底に流れる何万という憎悪を断ち切るには並大抵の力では及ばない。まさしく、憎しみを超えた強い想いが必要になりますね。
大魔法使いなどはともかく、普通の魔法使いと普通の人間なら魔法が使えるかどうかだけ。そこに絶対的な力の差はなく、むしろ『殺す』と決めた方が先手を取れるから勝つことの方が多いかもしれません。人間を圧倒的に超えた大魔法使いですら、魔物と呼んで封印するオネに太刀打ちなど出来ない。人間は触れてはいけないものに触れてしまったのかもしれません。
ちなみにエクスの語源(?)はそっちではなく、単純にアルファベットのXだったりします。特務隊の各班長のコードネームも全てアルファベットから来ております。

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