英雄再来 第十一話 ソルディエル5

この『大切』を守りたい。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

会話をしながらジェゼナのことが話題になったので、ソルディエルは思い出したように言った。
「ジェゼナ隊長も王道具使いなんですよね。」

「そうっす。失った両手両足を全部王道具にしたんっす。馴染むまで大分と時間がかかったらしいっすけど、今じゃ特攻隊最強で隊長っすからね。それでいて『未だ木鶏足り得ず』なんて言って、最弱だって言ってるんすから凄いっすね。隊長が男だったら絶対、求婚してるっす。」

「男だったら…?」
ソルディエルの体がピクリと動いた。

「ジェゼナ隊長は女っすよ?つるぺったんすけど。」

そう言いながらエクスはソルディエルの胸元を見た。ソルディエルも最近、妙に苦しくなった自分の胸元を見た。

沈黙が少しの間、場を支配した。

「…ふーん。まあ、特攻隊では性別とかあまり意識しないし…。」

「そうっすね。魔法使い殺すのに男とか女とかこだわってられないし、隊長がそういう方針だし、そういう扱いしてくれるっすから。武器とか兵器とか機械使えたら、それでいいっすからね。」

「そうですね…。」

「まあ、隊長の場合、王道具付けてから体が成長してないらしいっす。王道具の副作用は未だに色々言われてるっすからね。」

マチネが偶然にも王道具を手に入れたのは随分と昔に遡る。しかし、その後からマチネが王道具を戦力の一つに数えるようになるまでにはかなりの時間を要した。王道具は限られた者にしか扱えないし、どんな能力なのかも使うまで分からない。義手や義足として体に埋め込む実験も上手く体に馴染む者と拒否反応が出て死ぬ者に分かれ、その判別法が確立するまでにも時間を要している。また、体に馴染んだとしても寿命が縮まる、体が成長しなくなる、子どもが出来なくなるなどと、まことしやかに言われていた。

特攻隊は最新の兵器実験場でもあった。王道具を始めとして、最新の武器兵器が持ち込まれていた。特攻隊はそれらを実際に使い、自分に合ったものを実戦で使う。多くの隊員から良いとされた物が更に洗練された形で作られていく。もちろん、その中には扱いが難しい物や危険な物も多数含まれていた。しかし、魔法使いを殺せるのなら明日はいらないと考える者達ばかりの集まりである。危険など百も承知であった。

王道具は危険な武器の象徴であった。強力な力を得られる代わりに拒否反応が出た時は問答無用で死ぬ。ジェゼナの四肢を王道具にするというのは正気の沙汰では有り得ない行為だった。およそ前例のない王道具の装着だったが、結果としてジェゼナは生き残り、特攻隊隊長という地位についた。ジェゼナが他の者達から一目置かれ、隊長として皆をまとめられるもの王道具によるものが大きい。





「それでも王道具は、希望です。」
ソルディエルは自分の機械の足に目をやった。
「ワタシに立ち上がる勇気をくれた。ジェゼナ隊長もそうだと思います。」

「そうっすね。王道具がなかったら今のアタシ達はいないっす。」
エクスは自分の機械の手を握ったり開いたりして動かした。
「王道具がなかったら今でもアタシは何も…希望すら掴めなかったはずっすから。それでも隊長はまだ満足じゃなくて、自分を弱いって評価して更に強くなろうとしてる…。」

ソルディエルは少しうつむいてポツリと言った。
「多分、本心だと思います…。」

「…そうっすよね…。」
エクスは空を見上げた。
「未だにアタシ達と魔法使いとの戦力差は圧倒的で、奇襲に頼るしかないし、潰せてる魔法使いは一部の雑魚。本当に強い連中は未だに一体も殺せてないし、魔法使いの集団を束ねてる大魔法使いとなると…。」

そう言いかけて、エクスは自分の頬を平手で叩いた。

「ああ、もう!食事は終わり!ソルディエルさん、食後の特訓を始めますか。」

「はい。…お願いします!」

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この記事へのコメント

2015年01月04日 15:11
火剣「なるほど、未だ木鶏足り得ずという言葉は、強くなるための言葉かもしれねえ」
ゴリーレッド「端から見て力量が素晴らしい完成された人格の持ち主が『私は訓練中の身だから』と言うのが常。そういう人は何歳になっても進化し続けている」
火剣「向上心を失ったら人間は成長が止まる」
ゴリーレッド「未だ木鶏足り得ずとは、完璧を目指すというよりも、永久に前進し続けるための言葉なのかもしれない」
火剣「つまり、私は木鶏になったとは一生言わない」
コング「そうかな。ここに木鶏の模範がいるではないか」
ゴリーレッド「どこにだ?」
コング「ここに」
ゴリーレッド「冗談は性格だけにしなさい」
火剣「それよりジェゼナは女?」
コング「何ぬねの」
ゴリーレッド「王道具には副作用があるのか」
火剣「死ぬかもしれない実験を積極果敢に実行する。そういう意味でも特攻隊なんだな」
ゴリーレッド「人を実験台にする極悪の人体実験とは違う」
コング「女子がスッポンポンにされて手術台に寝かされ、『待って、何をする気ですか?』」
ゴリーレッド「ダブルアームスープレックス!」
コング「だあああ・・・最後まで言わせろう」
ゴリーレッド「黙れ不謹慎男」
火剣「男も女も関係ない。ある意味平等か。もちろん男は女に対しての気遣いは細かい場面場面で見せるべきだと思うが」
ゴリーレッド「尊重と見下しは紙一重だ」

2015年01月04日 23:09
このセリフ、やはりマチネ王・・・って、女!?
そう言えば、仮面の者は性別が明かされていなかったような・・・。

佐久間「装着したら成長しないとか、ロリコンに優しすぎる道具だな。」
山田「お前が言うな。」
佐久間「何で。」
山田「肉体年齢を自在に変えられるんだろ。」
佐久間「つまり貴様・・・私がツルペタ幼女になることを望んでいるのか? このロリコンめ!」
山田「何故そういう結論になる。」
維澄「しかしマチネ王が女性とは驚いた。これがヒューリスティックスか。」
八武「自分の好ましい状態に成長した段階で、王道具を装着。これだよ!」
神邪「もしも平和な世の中だったら、そういう方向に使われていたんでしょうか・・・。」
2015年01月05日 10:42
>火剣獣三郎さん
人間、もうこれでいいと思ってしまうと成長がないのかもしれません。卑下する必要はないけれど、謙虚ではありたい。自分はまだ足りていないんだという気持ちが、自分を更に高める秘訣なのかもしれません。何か一つを極めるにしても、その道に進めば進むほど天井がないこと思い知ったり、その頂きはまだまだ遥か彼方だと感じたり。向上心は何歳になっても大切だし、何年経っても持ち続けていたいです。完璧を目指し、しかし、その思い描く完璧に到達した時、ここは本当の完璧じゃなかったんだと再び進み始める。生涯進み続けたいものです。もし、自分が木鶏足り得える、という言葉は一生言えないか、死ぬ時に心の中で言うか、そんな感じかもしれませんね。
さて、実は女だったジェゼナ隊長ですが、特に隠している訳ではありません。しかし、本人も別に積極的に公言していないので知らない隊員の方が多いかも。入れ替わりも日常茶飯事ですし。
王道具はまだ解明されていない未知の領域が多いです。しかし、大きな力が手に入るのなら危険を承知で使うのが特攻隊。戦場でも、こういう実験でも、体を張る一番危険な役回りを特攻隊は行っています。機械が操作される人間の男女を区別しないように、特攻隊でも男女の区別はしない、というのがジェゼナ隊長の方針。お互いに相手を尊重する心があれば、真の平等が実現する。そこを誤れば見下しになってしまう。真の平等は実現するのか。
2015年01月05日 10:43
>アッキーさん
実はジェゼナは女性だったのです。焼かれた顔は仮面を付けていて見えないし、エクスが言う通りつるぺったんなので、前の回想で抱き締められていたソルディエルはジェゼナを男だと思っていました。ジェゼナが後の仮面の者(マチネ王)だとすれば初の女性の王様ということになりますね。
体が成長しないのは王道具のせいなのか、四肢切断という過酷な状況によって金田一少年の事件簿の巌窟王のように体が成長しなくなった可能性もありますが、明確には不明です。
王道具は通常の義手と違って体に埋め込むように装着します。なので金属アレルギーの人は拒否反応が出るし、その時の手術が原因で感染症にかかったりして命を落としたりする可能性があり、現代の高度な医療技術がなければ、本来は行ってはいけない非常に危険なものなのです。それと、付けるためには体の一部がないことが前提なので気軽に付けられるものではなさそうです。ただ、王道具を小型化する技術があれば可能かも。
技術が向上すれば通常の義手以上のものとしての役割を得られるので、平和利用も十分考えられます。こんな時代でなければ…。

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