英雄再来 第十一話 ソルディエル9

魔法使いこそ悪魔の使いだ。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

雷魔法の基本形である『雷(スンデル)』をまともに受けて、ソルディエルの全身に電撃の激痛が走った。
(あああああ!!!)
その痛みに耐え切れずに地面に倒れ込んだが、すぐに戦士としての本能が彼女を立ち上がらせる。それでも、負傷した事実は消えない。

「雷(スンデル)!!」

「がっ!!」
魔法使いの二発目の攻撃も当たり、ソルディエルは地面に転がった。

「この悪魔め!これは天罰だ!雷(スンデル)!!」
魔法使いは倒れたソルディエルに対しても容赦なく魔法を放った。
「そうやって地べたに這いつくばるがいい!野蛮なお前達にはお似合いの姿だ!」

「…黙れ。」
電撃を受けながら、ソルディエルは立ち上がった。

「!馬鹿な!雷(スンデル)をあれほど受けて…!」


「黙れ魔法使い!!」


ソルディエルの頭の中には自分が両足を失った日の記憶が鮮明に蘇っていた。炎によって親も何もかも奪われた挙句、乱暴され、心を焼き尽くされたあの日のことを。

――――――――――――――――――

『――――――魔法使いは神に選ばれた人間!羽虫ごときが抵抗するのもおこがましい――――――』

――――――――――――――――――

「何が野蛮だ!何が天罰だ!何が悪魔だ!貴様ら悪魔の目から見れば我々が悪魔に見えるだけだ!!貴様らが神を名乗るなら、その神ごとブッ潰す!!」


魔法使いはソルディエルの迫力に怯んだ。また、なぜ雷(スンデル)をあれだけ受けても立っていられるのか不思議で仕方がなかった。その魔法使いにとっては超常現象に等しかった。自分の魔力をありったけ使って撃った雷(スンデル)は人を殺すのに十分過ぎる威力を持っていたのだから。
そして、全力で魔法を撃ち続けて自身の魔力が尽きかけていた。使えて、雷(スンデル)一発分。それもまた恐れに拍車をかけていた。

実はソルディエルに当たった雷(スンデル)は地面へと逃げていた。ソルディエルの両足の王道具『世界一蹴(カミツブシ)』は金属で出来ていて、しかも地面に付いている。もし、空中で雷(スンデル)を受けていればソルディエルの命はなかった。

ただ、雷(スンデル)によってソルディエルの体力はかなり奪われていた。今現在、気力を振り絞っている状態で、戦うだけの体力が残っているかどうかは非常に怪しかった。それでも、自分の全てを奪った魔法使いへの剥き出しの復讐心が、目の前の魔法使いを怯ませていた。


「っ…!死ねええ!!」
それでも魔法使いは最後の魔力でもって最後の攻撃を試みた。どの道、後方からも他の敵が迫っていることを感じていたその魔法使いは退くという選択肢がなかった。仲間を逃がすために戦う抜くと決めた時から、この魔法使いの運命はどのような過程を経ようとも結果は同じだったかもしれない。
「雷(スンデル)!!」
それでも、自分の抵抗が長ければ長いほど他の逃げている仲間の魔法使いが生き残る可能性が高くなる。少しでも敵の数を減らせばその分だけ誰か助かる者が増えるかもしれない。魔法使いは最後の力を振り絞って魔法を放った。





その瞬間だった。
「うおおおおお!!!」
横の茂みの方から一人の男が突進して、ソルディエルと魔法使いの間に割って入った。

「!!?」
「!!!」

その男はソルディエルの代わりに雷(スンデル)をその身に受けた。
「ぐああああああ!!!」
それと同時に男が出現と共に投げ付けていた手榴弾が爆発し、魔法使いは爆死した。


ソルディエルを助けようと割って入ったのは同じ特攻隊の人間であった。
「――――――!!」
ソルディエルは声にならない叫びを上げながら、地面に倒れた特攻隊隊員の『爆弾屋のボン』に駆け寄った。

「しっかりしろ!ボン!!」

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この記事へのコメント

2015年01月09日 00:02
“悪い魔法使い”で“悪魔の使い”。ならば“悪い機械”は悪鬼たるのでしょうか。互いに相手を悪と見ている光景。
この雷使いは相当の実力者だと思われますが、ソルディエルは標準クラスだと思っているのかもしれないですね。そして過去の記憶が蘇る・・・。
おそらくボンは、あの親子を逃がすなと言うでしょう。そしてソルディエルが逃がすわけもなく・・・?
2015年01月09日 20:35
>アッキーさん
魔法は悪魔の方法だと、ヴィーセ隊長が言っていた。魔法使いを悪魔と考えるマチネから見た自然な感情からでた言葉。しかし、魔法使いから見ればマチネこそ悪魔。それこそ悪鬼、外道と呼ばれる。互いを悪と見なし、誤解を解く糸口すら憎しみにかき消される状況。まさに負の連鎖…。
この雷の魔法使いは後から来たということは、他の特攻隊と戦いながら、しかも注意を惹きつけ、しんがりとなっていたと思われます。だいぶと消耗していますが、それでも戦える辺り、この村の1、2を争う実力者でしょう。しかし、例の襲撃した非道なる魔法使いの強さが魔法使いの基準であるマチネから見れば、こんな魔法使いが大量にいると思っています。
死亡率の高い特攻隊では、このボンのような死に方をする者も数多くいます。そして、彼はソルディエルに何を伝え、ソルディエルはどう行動するのか。

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