英雄再来 第十一話 ソルディエル10

本当に仲間を殺したのは誰か。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ソルディエルは自分の怪我も痛みも忘れて、身を挺して自分を助けた特攻隊隊員のボンの元に駆け付けた。

「ソルディエル…。無事か…?」
ボンは薄目を開けてソルディエルの顔を見た。
「私は大丈夫だ!それよりも自分の心配をしろ!何で…!」
ソルディエルの無事を確認出来て胸を撫で下ろしているボンと対照的にソルディエルの頭の中は罪悪感が渦巻いていた。

爆弾の扱いに優れたボンならワザワザ飛び出して来なくても茂みから手榴弾などを投げ付けるだけでよかった。今、ここで自分が助かり、ボンが倒れているのは間違いなく自分の失態であると激しく後悔していた。

後悔と苦悩の表情を浮かべるソルディエルを見て、ボンは乾いた笑みを浮かべた。
「悪ぃ…。実はもう助かんねえんだ…。」
見ればボンには雷(スンデル)を受けて出来た傷以外の傷がたくさんあり、一番酷いのは包帯を巻いているのにも関わらず血が滲み出ている腹だった。
「どじっちまってさ…。死に場所を探してた…。一体でも多く道連れにしてやろうって…。そしたら追い詰められてるソルディエルが見えた訳よ…。どうよ、最高にかっこよかったろ…?」
ボンは無理に笑顔を見せた。自身の痛みと死への恐怖をしでも紛らわせるため、ソルディエルの罪悪感を少しでも和らげるため、そして何より最後に輝いて死ぬため。この選択を後悔していないということを示すために、ボンは笑った。

ソルディエルは歯を食いしばって涙を滲ませた。
「馬鹿者…。」

ボンは最後の力を振り絞ってソルディエルの手を掴んだ。
「ソルディエル…。王道具は希望なんだよ…。王道具使いは皆の希望なんだよ…。オレ達なんかよりずっとたくさんの想いと期待が向けられてんだよ…。」

「そんなことあるか…。特攻隊は全員平等だ…!特攻隊で誰一人欠けても駄目だろ…!」

「なあ、ソルディエル…。託していいか…?王道具使いのお前に、オレの意志を託したいんだ…。絶対に奪えない、大切な…。」

「分かった…。受け取る…!しかと受け取ったぞ…!ボン…!」
ソルディエルは強く、強くボンの手を握り返した。ボンは安心したかのように満足そうな微笑みを浮かべた。そして、ソルディエルを握っていた手から力が抜けた。ボンは二度と動かなくなった。





ソルディエルは唇を噛み締めて泣いた。ボンの手の温もりを感じながら泣いた。もう、この温かさが二度と戻らないことを、もうボンと二度と言葉を交わせないことを、全てが永遠に失われたことを想って泣いた。

(未だ木鶏足り得ない…!ワタシは未だに木鶏足り得ない…!なんと未熟な…!あの時、二人の魔法使いを殺すことに躊躇したことがボンを殺したんだ…!あの時、心が木鶏であったなら、ジェゼナ隊長との想定通りに行動していたなら後ろから来た魔法使いに気が付く時間もあっただろう…!ソルディエルの馬鹿者め…!貴様はなんと愚かなのだ!ここは戦場だぞ!戦場において情けなどかける奴がいるか!敵である魔法使いに情けなど…!そのために仲間が死んだんだぞ!馬鹿者め!ソルディエル、貴様がボンを殺したんだ!それにも関わらず、ボンは恨み言の一つも言わず、ワタシに全てを託したんだぞ!こんなワタシに…!済まない、ボン…!今のワタシには、その想いを受け取るだけの資格がない…!ならば、今、本当に覚悟を決める…!そうじゃないと、ボンの意志を受け取れない…!それは本当にボンを殺してしまうことになる…!)

ソルディエルは、そっとボンの手を離し、立ち上がった。

(ワタシは、もう――――――)

ソルディエルの瞳からは、もう涙も枯れ果てていた。

(――――――迷ワナイ。)

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この記事へのコメント

2015年01月09日 21:33
火剣「悲しい。あまりにも悲しい」
コング「ギャグが飛ばせない」
ゴリーレッド「飛ばしたら泣かす」
火剣「戦場という極限状態では人間の本性が出てしまうか」
ゴリーレッド「もちろん極限状態だから略奪・陵辱は仕方ないとか言う愚か者は論外としても」
火剣「SF映画で忘れられない場面がある。トリケラトプスの化け物みたいな怪獣が突進して来て、男は木に上った。しかし女は逃げ遅れる。そして至近距離に怪獣が! ここまでと思ったか女は短剣を自分の喉元に! それを木の上から見ていた男は、叫びながら怪獣と彼女の間に飛び降りる」
ゴリーレッド「いざという時にどういう行動を取るか。こればかりは平時ではわからない」
火剣「ボンはすでに瀕死の重傷だった。死に場所は戦士にとっては重要だ。生き残ったソルディエルがボンの最期を語り継いでくれる」
ゴリーレッド「ソルディエルに迷わない心を植えつけた。これが大きい。どうせ死ぬなら最後に命を何に使うかボンは瞬時に考えたか」
コング「地球最後の日には何をする?」
ゴリーレッド「喋らなくていい」
火剣「答えがウインドウのように見える」
コング「バレたか。崇高なボンと比べて僕を軽蔑の眼で見るのは人として間違っている」
ゴリーレッド「シャラップ」
火剣「ソルディエルも傷だけらだが、心の強さで支えている」

2015年01月09日 23:56
既に助からない傷・・・。ならば猶更ソルディエルの責任ではないですが、感情は納得してくれない。同じ死ぬにしても、勝ってから死にたかっただろうと、ソルディエルは思っているでしょうね・・。
ボンはソルディエルのことを、王道具使い、みんなの希望としてだけでなく、個人的にもある感情があったのだと思います。道連れにしてやろうというのなら、相手に抱きついて自爆した方が確実ですからね・・・。
しかし、それを伝えても鎖となってしまう。自分だけの思いで縛るのではなく、みんなの希望と期待を背負わせることを選び、死を迎えた。そこがカッコイイところだと思います。
2015年01月10日 21:32
>火剣獣三郎さん
ただただ悲しみに満ちた時が続きます。憎しみの果ての戦いの中に、果たして喜びがあるのかどうか。それでも戦いを止めることが出来ない。そのことが一層悲しみを深くするのかもしれません。
極限状態では人の本心が出る。普段から口にしていることを極限状態で出来る人は多くないでしょう。案外、自分自身がまさかこんなことをするだなんて、と思うかもしれません。交通事故で誰かをかばう時、危ないと思った瞬間に既に体が動いていて走馬灯が過ぎる中、まさか飛び出して助けるなんて自分自身も驚いていると、そんなこともあるかも。
ボンは戦士としての死に場所を探していました。同じ死に方なら、自分自身が納得出来る死に方を、自分自身が誇れる死に方を、自分自身が後悔のない死に方をしたいものです。どう死ぬかを考えることはどう生きるか、どう生きたかということにも繋がる。ボンが残したかったものを、ソルディエルは受け止め、引き継げたか。
地球最後の日になっても私は医者であり続けたいから人を治療し続けると言ったお医者さんがいます。自分が生涯かけてやり遂げたい仕事があるのなら、例え地球最後の日であっても、その仕事を全うしたいですね。他にも家族や恋人など、大切な人と過ごすとか。
雷魔法を食らって、ソルディエルもだいぶと満身創痍ですが、気力で持ち堪えています。それと、嫌な話ですがソルディエルの身に付けている王道具は本質的に外道具や魔道具と同じ。外道具が人間の魂を混ぜ合わせて作られたように、実は誰かの魂を吸収して成長するのがこれら道具系統の特徴の一つです。なんと、ボンの魂がソルディエルの預かり知らぬ内に吸収され、それが彼女の体力を少しばかり回復させております。ソルディエルがそれを知ったらどう思うのか…。
2015年01月10日 21:33
>アッキーさん
魔法使いVSマチネの戦いは村のそこらかしこで行われていて、ボンは別の戦場を制圧した時に負傷しました。他の仲間と魔法使いは相討ち。最低限の手当だけをしてボンは次の戦場、散る場所を探していた時にソルディエルを発見したという訳です。
客観的には責任などないけれど、自分を庇って死んだことは事実。そのことはソルディエルの心に大きなインパクトを与えました。全ての魔法使いを殺して死ぬ、それが理想。しかし、魔法使いに一方的に多くの者を殺されて来たマチネ側にとっては、1000年前の人間が宇宙旅行をしよう言うようなもの。せめて一矢報いる、意味のある生き方を、意味のある死に方を。その想いを特化させてきた特攻隊のメンバーはやはり、人一倍勝利への執着心は大きかったはず。だからこそ死に瀕した時に一番可能性の高いものに賭けた。
ソルディエルのことは少なからず想っていたはずです。特攻隊の中でもソルディエルは密かに人気。常に真剣な態度と、じんわりと醸し出される色気が人気の理由だととか何とか。皆のアイドル的側面が大きかったかも。
後のことをソルディエルに託し、ここで特攻隊、爆弾屋のボンは退場となります。

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