英雄再来 第十一話 ソルディエル27

隊を率いる者の資格。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

月日は流れた。その間にマチネはどんどんと巨大になっていった。魔法使いに居場所を奪われた者達は更に増え、その者達の子どもも増えてきた。そして、特攻隊の人数も大分と増えた。
人数が増えればジェゼナといえども把握が難しくなり、伝令や命令が伝わるのが遅くなったり、意見の交流が少なくなったりする。そこでジェゼナは特攻隊を三班に分けることにした。
主に体術と共に剣や斧などを専門とする近距離班、主に弓や大砲、爆弾などを専門とする遠距離班、そして王道具を持つ者を集めた王道具班。この時の班分けは各人が紙に希望を書き、それを加味した上でジェゼナが面接をしてから所属班を決めるという、意見収集型採用と呼ばれる特殊な採用方法であった。当時の人々の感覚では、軍隊において個人の意見をここまで汲み取るような方式は他に類を見ないのでとても驚かれたという。その際、自身の適正や希望する班を書くだけでなく、それぞれの班の班長、副班長に相応しいと思う者を自薦他薦問わず何名でも書く欄まであった。


(特務隊も班に分けるまでに人数が増えたか…。確かに、昔に比べて武器の性能も上がって、死ぬ者が少なくなった。しかし、特攻隊に入る者が減りはしない。皆が魔法使いに対して戦おう、戦わなければならないという気持ちを持っているからだ。ただ、人数が増えれば連携が取りにくくなるのは避けられない。さて、ワタシは当然、王道具班を希望するが、問題は…。)
ソルディエルもまた所属班希望用紙と睨めっこをしていた。

(班長、副班長、か…。特攻隊全体の隊長はジェゼナ隊長なのは変わらないが、班長・副班長は特攻隊全体の副隊長のようなものだな。責任重大だ。王道具班の班長にはやはりエクスさんを推薦だな。経験豊富で、王道具の扱いにも長けている。王道具使いの中でジェゼナ隊長を除けば一番長く特攻隊にいるから誰も反対はしないだろう。
近距離班の班長は…シンさん…もしくはヴィーセか…?ヴイーセの奴は決断力があるし、剣術の修行も絶え間なく行っている。ただ、シンさんほど経験豊富とはいかないか。シンさんを班長、ヴィーセを副班長に推薦しておこう。
遠距離班はどうだろうか…。やはり班長はイルルさんかな。クリメは班長には向いていないか…。クリメの奴は参謀こそピッタリだな。副班長に推薦しておこう。
さて、問題は王道具班の副班長か…。誰を推薦したものか…。もし、出来るのならワタシが副班長になってエクスさんを一番近くで手助け出来たら…。ただ、ワタシは副班長という柄ではないな…。もし…もし、ワタシが班長でエクスさんが副班長なら、凄くやりやすいだろうな。凄い安心感だ。)

結局、ソルディエルは王道具班の副班長のところに誰の名前も書けずに提出した。



各人の書類が集まり、面接も全員終了した次の日、ソルディエルとエクスはジェゼナに呼び出された。

「ジェゼナ隊長、ソルディエルです。」
「エクスです。」
二人はジェゼナの部屋の扉を軽く叩き、返事を待った。

「どうぞ。待ってたよ。」
中からすぐにジェゼナの返事が返ってきた。ソルディエルとエクスは部屋の中に入った。


ジェゼナの部屋は隊長という地位を考えると部屋はかなり小さく、こじんまりとしていた。部屋の中の物は少なく、必要最低限の物しか置いていないような印象を与えていた。

「二人共、座って。」
丸い机と椅子に腰掛けているジェゼナは二人を向かい側の椅子に座るように促した。
「失礼します。」
「どうもっす。」

二人が椅子に座ってからジェゼナは背筋を伸ばした。
「さて、本題に入る前に二人に一つ質問をしたい。思い付いたものを一言で即答して欲しい。」

「はい。」
「了解っす。」
二人の真剣な眼差しをジェゼナもしっかりと見つめた。

「部隊を率いる者、隊長に最も必要なものは何か?」

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この記事へのコメント

2015年02月24日 23:19
部隊を率いる者に最も必要なもの…。
私は「愛」だと思います。それが一番先に浮かびました。次に統率力とか、頭の良さとか、柔軟性とか…。
愛がなければ何も見えないってことで。
2015年02月24日 23:59
見知った名前がチラホラ・・・。魔法使いに居場所を奪われた者たちは、けっこう最近まで増えていたんですね。
ということは、ジュールズが牧歌的になったのは、かなり現在に近いということになるのか・・・それとも、一部の邪悪な魔法使いが荒らし回っているのか。
これが黒い魔法使いの策略だとしたら、なかなか恐ろしいことですね。長い時間をかけて、マチネとジュールズをいがみ合わせ、殺し合いをさせている・・・?
少なくとも、ジュールズが一方的な被害者、無辜の民であるという認識は、だいぶ改めなければならないようです。もちろん虐殺を正当化するわけではないですが。

維澄「民主的な制度だね。」
佐久間「ソルディエルは自分が班長の器であることを自覚しているのか。やはり天才・・」
山田「謙遜が美徳であるような社会じゃないからな。実力者が前に出なければ、大勢が死んでしまう。」
維澄「自分を第三者的に評価できることは、人をまとめる者の資質の1つ。ジェゼナの問いかけに、どう答えるのか・・・?」
神邪「必要なことは幾つか浮かびますが、最も必要なこととなると・・」
八武「これは正解のある問いとは違う。ジェゼナはソルディエルとエクスのフィロソフィーを知りたいんだ。」
維澄「なるほど。」
佐久間「どう答えるか楽しみだな。」
2015年02月26日 19:12
>表裏さん
部隊を率いる者はまず部下のことを考えなければなりません。なので「愛」は重要な要素ですね。それと、部下から「愛」されるということは統率力の高さの表れでもあります。部下を愛し、部下に愛される者こそが隊長に相応しいでしょうね。
2015年02月26日 19:13
>アッキーさん
後のマチネ軍の隊長になる人々は大体、特攻隊出身であることが多いです。実は、ある時期から魔法使いが村を襲うことは止んでいます。しかし、それを知る術は誰にもない。しかも、魔法使いに怯えて隠れながら何年も暮らしていた人々が、マチネの存在を知ってやって来るケースが後を立たないのです。なので、マチネは魔法使いが常に人々の村や町を襲っていると考えています。生き残りがいない村などのことも考えると真実を把握する術はないのです。
ジュールズがどのような組織で現在のような性格になったのがいつ頃かなどはマチネには分かりません。マチネが一枚岩ではないようにジュールズも決して一枚岩ではないし、紆余曲折あったと思われますが、根幹は開祖カトレーアの頃から変わっていません、即ち、チュルーリの封印を維持し続けること。それが世界を守るために大切だと信じて…。
さて、人々の虐殺は一部の魔法使いの策略なのか。それとも、ジュールズも何か大きく関わっているのか…?
2015年02月26日 19:13
ジェゼナは人の心を大切にするということを軸に思考訓練を積み重ねて、今までのマチネにはない民主的な制度を次々に生み出しています。ジェゼナは人々の意見を聞くことを重要視しています。それが人の心を育てるし、大切にすることでもあると分かっているのです。
あ、ごめんなさい。副隊長枠を書けなかったのはエクスじゃなくてソルディエルだ…。修正…。申し訳ない…。やっぱり風邪っぴきだとミスが出るなあ…。ソルディエルは隊長職をもしもと考えていましたが結局、書けずじまいでした。
さて、ジェゼナ隊長の問答タイム。基本的に対話好き。禅問答も正解のある問いというより、物事の本質をどう考えるのか、どう見ているのかを答える、正解が一つではない問い。もっと言えば、対話の中で正解を考えて、深めていくきっかけとしての問いなのかもしれません。さて、二人はどう答えるのか。

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