英雄再来 第十一話 ソルディエル28

貴女が一番、相応しい。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「決断力です。」
「判断力っすかね。」
二人共が即答したが、ソルディエルの方が少し早かった。

「その訳を聞こう。ソルディエル君はなぜ決断力を選択した?」

「隊長の命令は、それ一つで部下の生死を明確に分けます。判断の難しい場面であっても決断しなければ、その分だけ部下の命を危険にさらします。戦場という場面で何よりもまず決断力がなければ隊長は務まらないでしょう。」

「では、エクス君は?」

「もうソルディエルさんに大体言われちゃったっすけど…。部隊において隊長は頭脳っす。頭がきっちりとした判断しなきゃ部隊が死ぬっすよ。」


「うん、決まりだね。」
ジェゼナは笑みをこぼした。
「これよりマチネ特攻隊王道具班の班長にソルディエル、副班長にエクスを任命する。二人共協力して班をまとめて欲しい。」

「えっ!?」
その言葉に驚いたのはソルディエルだった。
「ワタシが班長!?エクスさんじゃなくて!?」

「そうだよ。なぜなら、今、二人共が同じことを言ったからね。班員を率いる班長になるべきは決断力、判断力に特に優れた者が相応しいと。」

「しかし、エクスさんは――――――!」
そこまで言いかけてソルディエルはハッとした。自分がこの場で言ったことと、提出した書類に書いたこととの違いに気が付いた。
「経験豊富で…。その…。」

「そう、エクス君は経験豊富だ。ソルディエル君がエクス君を班長に推薦する理由として経験豊富と書いている。もちろん経験から来る判断力、決断力も当然ある。しかし、それ以上に戦場では直感的な決断が必要な場面の方が多い。なぜなら相手は未知の敵、魔法使いなのだから。魔法使いに関してはまだまだ我々の知らないことの方が圧倒的に多い。そして戦場では分からないことの方が多い。もっと言えば、経験は思考訓練の積み重ねで補える。ちなみに、エクス君はソルディエル君を班長に推薦し、その理由を判断力に優れていると書いている。」

「!」
ソルディエルは驚きの顔でエクスを見た。そこには自分を高く評価してくれたことへの驚きの他に若干の照れと喜びが含まれていた。

「そして、ボクは副班長こそ経験豊富な者が務めるべきだと思っている。エクス君は決断力特化型ではなく、なんでも出来る万能型だろう。班長とは違う視点から全体を見て、いつでも補助や援助に入れるように準備出来るためには経験が物を言うだろう。ボクはソルディエル君が班長で、エクス君が副班長だったら二人にとって凄くやりやすいと思うんだ。」

「アタシもそう思うっす。ついつい妄想しちゃうっすよ。ソルディエルさんが隊長でアタシが副隊長だったらどんな感じなんだろうって。ソルディエルさんもそんな風に思ったことってないっすか?」

「…敵わないです…。まるでワタシの心まで全部分かっているみたい…。」

「長い付き合いっすからね。あ、もちろんジェゼナ隊長は後、三十年は現役で隊長だと思うっす。」

「そうだね。ボクは死ぬまで、生涯現役でいたいね。もしボクが引退する時は全ての魔法使いを根絶やしにして平和な世界を創り出した時だ。
さて、改めて。ソルディエル、エクス。二人共、王道具班の班長、副班長として共に協力し、班員達と団結し、更なる活躍を期待している。よろしく頼むぞ。」

「はいっ!」
「はい!」

澄んだ二人の声が気持ちよく響いた。

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この記事へのコメント

2015年02月26日 23:17
火剣「隊を率いる者の資格か」
ゴリーレッド「三班に分けたのはさすがだ。組織が大きくなるのと同時に、一人ひとりを確実に指導できる長を置かないと、ジェゼナが一人で大勢を見ることになる。そうすると届かない部分も出てくる」
火剣「人事はだいたい上の者が有無も言わさず決めるものだが、皆の意見を聞くなんて素晴らしい」
ゴリーレッド「質素な生活こそリーダーの条件でもある」
コング「豪華で広い部屋に住み、美女をはべらせ。そういう役人もいる」
ゴリーレッド「人心は離れる」
火剣「戦場は何が起きるかわからないから直感的決断が大事か」
ゴリーレッド「自分を高く評価してくれることの喜び。自己中は隊を滅ぼし、エクスやソルディエルのような人を見る目のある者が隊を強固にする」
火剣「正と副か。後輩が長で先輩が副ということもある。人事に失敗したら戦にも破れる」
ゴリーレッド「人事は生命線だ」
コング「真面目な話で僕の出番をブロックしたな」
2015年02月27日 00:46
決断力と判断力。わずかな時間での中で考えられることは限られているので、どこかで決断しなければならないですね。

山田「なるほどな。三国志でも、経験豊富な参謀と、決断の早い将という組み合わせだ。」
維澄「古代や中世の戦から、近代的な部隊へ変遷していく過程が、よくわかるね。部隊の長というものを、偉いとか偉くないとかではなく、ひとつの役割として捉える。部隊の理想モデルを構成する1ピースとして考えるんだ。」
八武「にゃるほど・・・ジェゼナが“人間であること”にこだわっているのも、それだからこそってのはあるねぃ。」
佐久間「そうだな。構成員を歯車として考える、非人間的発想だから、歯止めとして“人間であること”にこだわり続ける必要が出てくるわけだ。」
神邪「そこを疎かにしてしまったのが、後のマチネ軍ですか・・・。僕も他人事ではないですね。」
佐久間「いや、神邪の場合は別の話だ。ここで触れられているのは、あくまで集団行動の論理なんだよ。たとえ何ら特殊な力を持っていなくても、集団として組織された時点で、非人間的な性質を帯びてくるもの・・・そこは“集団”の長であるジェゼナと、“集団”から外れた位置にいる大博士とでは、感覚が違って当たり前だろうなぁ。」
2015年02月28日 20:56
>火剣獣三郎さん
隊を率いる者にはより多くのものが求められる。それは能力であったり、性格であったり、経験であったり。そして、隊長は部下の指導も大切な仕事。しかし、人数が増えれば必然的に一人にかけられる時間が減ってしまう。そうして、届かないところが出る前にジェゼナはいち早く特攻隊の分割を始めました。後の特務隊が複数班に分かれているのも、この頃のことがあるからなのです。
人の心を大切にする方針のジェゼナは、人事の際も意見集約を欠かしません。意見を集めることで自分自身が見えていなかったものを発見出来たり、再確認出来たり。そんなこんなで忙しいジェゼナは、自分の部屋は殺風景で小さいまんま。最初に部屋を与えられてからあまり変わってません。ひょっとすると贅沢は人心が離れるという意味で「敵」だと無意識に考えているのかもしれません。そもそも魔法使いとの戦いでいつ死ぬか分からないので、贅沢な暮らしなど眼中にないのかも。
戦場での決断の遅さや間違った判断は即死に繋がる。リーダーは隊の皆を生き残らせなければなりませんから正しく早く決断出来ることは必須だと思われます。誰をリーダーにするか、この人事は隊の運命を分けるでしょう。年齢を基準にすればエクスが正でソルディエルが副になるところですが、次々と人が入れ替わる特攻隊の性質上、年齢よりも能力や適材適所が優先される。また、そういう視線で選ぶジェゼナであったから今回の人事が成り立ちました。
2015年02月28日 20:57
>アッキーさん
戦いは決断の連続だし、人生も決断の連続。決断しても失敗して、死んだ者もいる。しかし、決断をせずに死ななかった者はいない。とにかく、決断しなければ絶対に生き残れない。
三国志では例えば曹操と荀彧、呂布と陳宮とかですかね。その人がどんな役割だったら最大限力を発揮出来るのか、ジェゼナが腐心しているところでもあります。役割はともすれば人を機械の部品のように扱ってしまう側面があるかもしれません。だからこそ、意見の集約が大切だと、ジェゼナは直感的に感じているのかも。
しかし、マチネは大きくなり過ぎた。しかも急速に。ジェゼナの方法は人が多くなれば届かないところが出て、いずれ変質を始めるということが後のマチネ軍で示されています。
個別に個人でいる分には何もなくても集団になった時に何らかの圧力が発生する。それが空気であったり雰囲気であったりと、個別とは別の集団としての特徴が出て来る。集団の長はそのことを重々分かっていなければいけませんね。
大博士は色々と外れてますね。多分、通常の社会にいたら間違いなく異端者。魔法使いという敵がいるからこそ技術部で長をしているようなものかもしれません。

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