英雄再来 第十一話 ソルディエル20

全ては大切なものを守るために。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「出て行け!!今の君達に、ここにいる資格はない!!」

ジェゼナは技術部の者達を一喝した。技術部の者達は十人程いたが、皆がたじろぎ、黙った。滅多に手に入らない研究材料を目の前にした興奮も一気に醒めた。
興奮から、彼らには感情的になってジェゼナに食ってかかる選択肢もあった。だが、今現在の数の差も男女の差も覆すだけの実力をジェゼナが備えていることは、王道具の研究をしている彼らが一番よく分かっていた。しかもジェゼナはマチネ最強の特攻隊において隊長を務めている。それが意味するものがなんなのかを知らない者はいなかった。
それでも、彼らは貴重な実験材料を前にして、それを諦めることなど出来なかった。

「…い、いいんですか、ジェゼナ隊長…。」

彼らは感情的な反抗ではなく、理論的な反論を試みた。

「おれら、技術部に逆らうってことは、王道具の調整が出来なくなるってことですよ…。」
「そ、そうだ!王道具は我々が作っているんですよ!」
「それに、この研究はより多くの魔法使いを殺すことに繋がる研究です!それを妨害するんですか!?それはマチネへの反逆ではないのですか!?」
「そ、そうだ!そうだ!我々はマチネのために活動している!感情的にならないでもらいたい!」
「は、配慮が欠けていたことは認めましょう。しかし、全てはマチネの発展のため!」
「どうです?ここは譲ってもらえませんか?も、もちろん、今後とも特攻隊には最大限の協力を惜しみませんよ。」
「ここで我々が争っても魔法使いが喜ぶだけですよ。」
「そうです、そうです。王道具を調整、開発する我々と使う特攻隊がいるからマチネは成り立っているのです。」


ジェゼナは一通り彼らの話を聞き終わってから呟くように言った。
「分かった…。」

その言葉を聞いて技術部の者達は安堵した。戦いになれば自分達が大変な目に遭うことは確実であったから、これらの提案は賭けだった。恐る恐る言葉を選びながら言ったが、内心はビクビクしていた。しかし、ジェゼナが感情的な人間でなく理論的な人間であることを知っていた彼らは、論破出来る可能性があると思っていた。だが、ジェゼナの分かった、は提案を受け入れる、という意味ではなかった。

「そこまで言うなら王道具などいらない!!今後、調整もいらない!!こちらとしても、結構だ!!ボクの部下の子どもの死体にまで手を出そうという君達の協力はいらない!!死を悼む心をなくした君達など見ていられない!!この場から立ち去れ!!」


その言葉を技術部の者達は決定的な拒絶の言葉と受け取った。どうにか穏便に済ませたかった彼らとしては、ジェゼナに突っぱねられることは避けたかった。どうにか元の鞘に戻したかった。しかし、ここまで来ると引くに引けなかった。

「い、いいんですか!?そんなことを言って!本当にいいんですか!?」
「ちょ、調整もいらないだなんて、あんたは両手両足の全てが王道具だ!調整なしでは半年も持たずして接続部分が腐って使い物にならなくなるんですよ!?最悪、死ぬんですよ!?」
「いいんですか!?命を粗末にして!それじゃ魔法使いへの復讐も果たせませんよ!?」
「王道具を調整出来るのは技術部だけ!今まで魔法使いに勝てたのも王道具があったからでしょう!?それを捨てるんですか!?考え直した方がいいんじゃないですか!?」

技術部の者達の言葉は、ジェゼナの気持ちを変えるのになんの効果ももたらさなかった。

「いらないと言っている!!調整も王道具も、結構だ!!ここから出て行け!!」

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この記事へのコメント

2015年02月10日 03:02
これはジェゼナ隊長が怒るのも当然ですね。理論的になりきれない、どこか押し付けがましい物言い。
技術部としても、戦えないなりにマチネへ貢献しようという思いで頑張ってきたのでしょうが・・・そこは汲んでやっているジェゼナは立派。

山田「そうか、ここでジェゼナが暴力で叩き潰したら、それは戦う力を持たない者を蔑んでいることになるのか。」
佐久間「見習えよ、暴力皇帝。」
山田「お前も死根也も俺より強いだろうが。」
八武「やはりビンタが一番というわけか。」
神邪「そうですね。」
維澄「君たちが言うと意味が変わる。」
佐久間「ともかく、私なら逆らう者は殺している。ジェゼナこそ理性的で論理的なんだな。」
維澄「よくある物言いで、戦闘しない人間を保身だの臆病者だの蔑む奴がいるが、ジェゼナはこんな状況でも、そういう物言いをしない。けじめをつけているね。」
神邪「それこそ論理的だと僕も思います。」
八武「ジェゼナ自身が身体障害者で、戦えない惨めさを知っているからだろうねぃ。」
神邪「ここまで誠実でありながら、まだ人間と魔法使いという対立の図式の中なんですね・・・。」
山田「そうなんだよな。」
2015年02月10日 23:42
>アッキーさん
ジェゼナ隊長大激怒。技術部と特攻隊って意外(?)に相性悪そうです。この場で技術部の者達が何かを言うたびにそれが全てジェゼナ隊長の逆鱗に触れるという罠。ジェゼナとしては、全ての人間が自分の出来る最大限のことを行ってマチネという総体を形成し、それでもって魔法使いに対抗しようとしているので、ここで技術部を切り捨てるような真似はしません。最前線で戦うことと共に、後ろからの後方支援の重要性もジェゼナは分かっているのです。
もしジェゼナが感情に身を任せればここにいる全員を数分で半殺しにしていると思われます。でも、それをしないのはやっぱり同じマチネの仲間だという意識があるからです。あのビンタも、目を覚ませという戒めと反省を期待しての一撃でした。
元々、特攻隊の王道具使い達は身体欠損者で「戦えない者達」でした。そのために差別を受けたり、戦えない(協力出来ない)ということで人間扱いとは程遠い扱いを受けた者も。王道具という力を手に入れた時、ジェゼナは自分が差別をする側に回らないようにということも、思考訓練の一環で考えを巡らせています。戦わない人間にも出来ることがあり、それらの力こそ結集する必要があると考えています。
ここまで誠実で、思慮も深く、賢いジェゼナですが、それでも魔法使いとの対立を止めようという方向での思考は行っていません。魔法使いによって両手両足を失い、その後も多くの経験をしてきたジェゼナは未だに憎しみの渦の中にいる。だから木鶏足り得ないと常に言う。それは自分が憎しみに囚われていることへの自覚なのです。そして、今までどれだけの思考訓練を重ねても、人との対話を重ねても、未だにジェゼナは自分を木鶏足り得ないと評しています。ジェゼナは対立の構図から抜け出られるのか…。

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