英雄再来 第十一話 ソルディエル21

技術部には妖怪がいる。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「なあんじゃい、これは~?」

突然、技術部の者達のすぐ後ろからしわがれた声が響いた。技術部の者達が大慌てで後ろを振り向くと一人の白衣を着た小柄な老人が立っていた。その声がするまで誰もその老人の存在にも気配にも気が付けていなかった。
「ひっ!!」
「大博士!!」

「気を付けい!!」

大博士と呼ばれた者は、老人とは思えないほどの音量で叫んだ。技術部の者達は全員その場で直立不動になった。

「ん~、で?」
老人は片眉を釣り上げて、技術部の者達を見回した。
「お前ら何やってんの?誰か、説明。」

「え、えと…。」
「その…。」

「説明。」
老人はしどろもどろになっている技術部の者達に対して少しだけ強い口調で説明を求めた。一番近くにいた者が意を決して説明を始めた。

「ま、魔法使いが産まれたという知らせを聞いて、それを回収しようとしていました。」

「はあー?」

「ま、魔法使いが――――――。」

「はあー!?」

「ま、魔法使いが産まれたと聞いて駆け付けました!!!」

脂汗を流しながらそう叫び切った技術部の者に対して、老人は鼻の頭を掻きながら尋ねた。
「あのさあ…。魔法使いって、これ?」
「は、はい!そうです!」

それに対して老人は言い切った。
「違うよ。」

「え?は?」

「だから、違うよ。誰がどう見ても人の子じゃ~ん。」
戸惑う技術部の者に対して老人はおどけた口調で言ったが誰も笑わなかった。
「はいー。じゃあ、これが魔法使いだって説明してみてー。どこが違うの~?」

「た、例えば――――――。」
技術部の者はいくつかの箇所を指で差して、しどろもどろで説明した。

「あのさあ、これは未熟児でしょ?未熟児の標本は、飾ってあるの毎日見てるでしょ?今言ったのって全部、標準の範囲内だよ?」
老人の一言でその技術部の者はそれ以上何も言えなかった。

「はいー。じゃあ、他にこれが魔法使いだって説明出来る人、手ぇ挙げて~。」
その問いかけに対し、誰も手を挙げなかった。

「やっぱり人の子じゃ~ん。…。…お前らの目は節穴なの?馬鹿なの?…死にたいの?」

「ひっ!!」

老人は片眉を釣り上げて技術部の者達を再度、見回した。技術部の者達は直立不動の姿勢で怯えていた。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

ナイス ナイス

この記事へのコメント

2015年02月11日 07:33
ここで新キャラ登場・・・!?
技術部の妖怪と聞いて、真っ先に思い浮かべたのはアウトマでしたが、違いましたね。
現代のアウトマは妖怪と呼んで差し支えない貫禄を持っていると思いますが・・・。

山田「スカッとするぜ。」
佐久間「強いのかな?」
維澄「畏怖ではなく尊敬かもしれない。尊敬している人から軽蔑されるのは恐い。」
八武「ふむ、標本?」
山田「飾ってあるのか。」
八武「技術部は私好みの場所かもしれない。」
山田「しかしマトモな人がいて良かった・・。」
神邪「僕も散々、人間じゃないとか言われてきましたね。内臓を瘴気に食い尽くされた今となっては、それも正しくなりましたが・・・いや、赤ん坊が羨ましいとかじゃないですよ。」
佐久間「神邪は普通の人間だ。バケモノじゃない。」
山田「いいセリフなんだが、お前から見れば大概は人間の範疇に入るよな。」
佐久間「まあ、というか、人間であることにどれだけの価値があるかって話にもなってくるんだがな。」
維澄「あるいは、何を以って人間と呼ぶのか。王道具に侵食されようとジェゼナは人間だし、魔法使いたちも人間だ。ではバケモノとは?」
八武「チュルーリ?」
山田「対話を放棄し、一方的に相手を蔑むことかな。そうした人間がたくさん集まったら、恐ろしいことになる。」
佐久間「そうした有象無象を、圧倒的な個の力でねじり潰すのが私の趣味だ。」
山田「そこは生き様とか信念とか言ってくれ。」
2015年02月11日 20:40
火剣「技術部とジェゼナ。決定的な決裂か?」
ゴリーレッド「まさかジェゼナを脅すようなことをするとは」
コング「いかんね」
火剣「人間にはこれだけは絶対に譲れないという思想・哲学があるからな」
ゴリーレッド「ジェゼナの感覚からして技術部の考えは到底許せるものではなかった」
コング「大博士?」
火剣「凄い迫力だな」
コング「はあー? 死にたいの?」
ゴリーレッド「このキャラだから余計に怖い」
火剣「話のわかる人がいて良かった」
2015年02月11日 21:37
>アッキーさん
新キャラの大博士の登場です。過去のマチネでは生きていますが、現在の方では生きてはいません。現在の方でアウトマが技術部の中でトップのような立ち位置にいるのは、この大博士の影響は結構あるかもしれません。この頃のアウトマは怒られているその技術部の者達の中にいます。
ジェゼナに対してはごちゃごちゃいう技術部の者達も、この大博士には恐れおののき従う。ジェゼナと違って、大博士は容赦のない人なので…。大博士は尊敬か畏怖かどちらでしょうね。
技術部は悪く言えばマッドサイエンティストの巣窟ですから、八武さん好みの場所かもしれません。マチネの闇の部分の一つでもあります。
技術部では王道具を人間に移植するということも行っているので、人間の構造把握も行っています。その過程で死体などが保存されていて、標本も数多く存在します。大博士は今までたくさんの死体を見てきたので、ソルディエルの未熟児を人間だと断じました。人間だと肯定してもらえるだけでも、ありがたい話です。
人間の定義とはなんなのか、何が人間を人間たらしめているのか。それはやはり心なのかもしれません。外見が人間でも、心が醜いと鬼とか悪魔とか言われる訳ですし。ジェゼナは、四肢は既に機械ですが、やっぱり人間。
相手の心、人の心が分からなくなったら、それは化け物となってしまうのか。もしくは、相手の気持ちを考えないようになってしまったら、化け物になってしまうのか。後のマチネ軍の蹂躙劇はまさに悪魔の所業と呼ぶに相応しいものだったことを考えると、やはりそうなのかもしれません。
2015年02月11日 21:37
>火剣獣三郎さん
マチネ内部で決定的な決裂が?戦闘部隊の主力である特攻隊と武器開発の要である技術部が決裂すればマチネにとって決定的な崩壊にすら繋がる危険性があります。特に脅すような提案はまずかったですね。自分達の欲望や主張を一方的に押し通すようなことはしてはいけない。
さて、決裂が決定的かと思いきや、特攻隊のトップがジェゼナなら、技術部のトップはこの大博士なのです。なので、この二人が対立しなければ技術部と特攻隊の決裂には繋がらないと思われます。
技術部のトップ、影で妖怪と言われるほどの人物ですが、話の分かる人で良かった…。

この記事へのトラックバック