幕間 最終戦争へ

この戦いで真の平和を取り戻そう。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ジェゼナが眠ってから数年間、マチネは巨大な心臓と化したジェゼナの力を使い、産業を発展させ、軍備を増強し続けた。そして、戦争をし続けた。それでも、マチネは一度たりともジュールズに『勝った』ことはなかった。局所的にはともかく、魔法使いを滅ぼすところまでは到底たどり着けず、戦争は膠着状態にあった。

機械や兵器が主流になった戦争であっても扱うのは結局、人間である。そして、この頃のマチネの兵士の多くは魔法使いに直接襲われた経験のない世代になっていた。親や祖父母から話は聞いているが、百聞は一見にしかずである。マチネの多くの兵士達は魔法使いの脅威を実感する機会が少なかった。多くの武器や兵器で安全な場所から攻撃出来ることもそれに拍車をかけていた。はっきり言えば、マチネの兵士達にジュールズと戦争をする明確な理由が薄らいで、士気が下がり始めていた。長老会を始め、軍部は様々な理由を付随させて士気の維持に努めていたが、不満が次第にマチネの軍部、更にはマチネ全体に広がり始めていた。

そんな時、奇跡のような出来事が起こった。絶対に目を覚ますはずのないマチネの巨大心臓となったはずのジェゼナに意識が戻ったのだ。長老会は目覚めたジェゼナをマチネの王にすることで求心力を取り戻し、士気の向上に使おうと考えた。ジェゼナの采配の上手さは半ば伝説になっていたし、国の産業が成り立っているのはジェゼナのおかげである。ジェゼナはマチネの象徴的存在になっていた。そのジェゼナが采配を振るってくれるとなれば、巻き返しが出来ると考えたのだ。

もちろん、傍から見れば虫のいい話だったかもしれない。しかし、ジェゼナはそれを引き受けた。そして、まずジェゼナが行ったのは軍部内の人事改革だった。数年間の空白を埋めるかのように知識や情報を得て、起きていられる僅かな時間を軍部の者達との面会に当てて、適材適所を追求した。軍部で働きやすいように部隊環境の向上に努めた。そして、軍部を大きく五つの部隊に分けてジュールズの五国に同時に戦争出来るように準備を整えた。王道具『侵食統一』の副作用で起きていられる時間は一日の内、二、三時間ほどだったが特務隊のソルディエル達に的確な指示を与え、常に起きているのと変わらないぐらいの采配を振るった。そして、マチネはついにジュールズ五国全てに同時に戦争を仕掛けることが実行出来る体勢が整った。


最後の戦争が始まった。


土の国も、風の国も、炎の国も、雷の国も、水の国も、ジェゼナの采配によって編成された部隊とマチネの新兵器によって次々に陥落していった。土の国のムーンストーンは爆死、風の国のペリドットは光子力放射で撃墜、炎の国のガーネットは焼死、雷の国のトル・マリンは海に身を投げ、水の国のアクア・マリンは毒死した。しかし、ジュールズの大魔法使いが次々に死んで、国そのものが破壊されることでジュールズが封じていた『魔物』と呼ばれる者達を復活させることになるとは想像出来なかった。

土の国からはソイル・フォウル・チュルーリが、水の国からはワーテル・ツヲ・チュルーリが、そして炎の国からはブラーゼ・オネ・チュルーリが現れ、それぞれの国に侵攻していたマチネ軍を殲滅させた。

その後、ブラーゼ・オネ・チュルーリはたった一体でマチネに攻め込んだ。その結果、マチネは火の海に包まれた。マチネ最強の戦闘部隊である特務隊の隊長ソルディエルですら、オネの圧倒的な力の前に敗北した。そして――――――。










「気に入ったぞ!お前が欲しい!タイチョー、私の部下になれ!」

両手も両足も焼け爛れ、目も光を失ったソルディエルに馬乗りになってオネは笑いながら命令した。それに対してソルディエルは全力で抵抗した。

「黙れぇ!吐き気がするほどおぞましい!!」
ソルディエルの目は炎で焼かれて何も映しはしなかったが、声のする方に向かって力一杯、唾を吐きかけた。
「屈するものか!!貴様ら魔法使いに心まで屈するものか!!貴様らがどれほど強かろうとワタシの心は操れない!!ワタシの意思(こころ)はワタシが決める!!」

焼け爛れた喉の痛みも構わず、ソルディエルは力の限り叫んだ。

「心まで貴様ら魔法使いの思い通りになってたまるかあ!!!」

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この記事へのコメント

2015年04月25日 22:49
ジェゼナの視点で考えると、眠っている間に時代が変わったのは、色々と新鮮でありながら歯痒いものもあったと想像できます。ソルディエルの成長は、ひとつの救いでしょうか。
長らくマチネの物語に触れてきた今では、ジュールズとの戦いの印象も、だいぶ違ってきますね。あれら殲滅作戦の手際の良さは、ジェゼナの采配ありきだったのかと思うと、なかなか複雑です。
そして、いよいよ物語は、あのときの場面へ戻ってきたーーー! ここまで長かった!
死亡フラグが乱立しているソルディエルですが、是非ともオネ長姉にバッキバキに折ってもらいたいものです。しかしソルディエルの心までは折れないはず。

八武「決して折れないソルディエルの心! しかし、それを折るからこそ興奮するのではないか!」
山田「言うことが最低だな。死ぬがいい。」
八武「待ちね、待ちねぇ!」
佐久間「いつから江戸っ子になった?」
維澄「未だ緊迫した状況が続いているのに、何だろうな、この清涼感は。」
神邪「未来を感じるからでしょうか。」
佐久間「ここで逆転の手があるとすれば、アールか、あるいは大博士の王道具くらいだろうが・・・。」
山田「確かにオネは、元のチュルーリほど手に負えないわけではないみたいだからな。」
佐久間「まあ、前にも言った通り、明らかマチネの手に負える相手でないのは確かなんだが、しかし大博士が魔物の存在を知っていたとすれば・・」
神邪「それは逆に、ゾッとする話ですね。」
維澄「そうだね・・・。腑に落ちなかったのは、ジェゼナの目覚めと、大博士の言うことの食い違いなんだ。目覚めを予測できていたとすれば、そして、なおかつ“ジェーを殺した”というのだとすれば、たとえ目覚めたとしても魔物の手にかかるということを、暗に含んでいたのかもしれない。・・・まあ、流石に邪推が過ぎると思うけどね。」
2015年04月26日 13:31
火剣「戦いで平和を取り戻せるのか?」
ゴリーレッド「平和のために戦争の準備をする。マチネもそこに突入してしまった」
火剣「平和のためには平和の準備をするしかない。しかし選択肢は戦争しかないという気持ちになってしまっている。国全体がこうなると戦争反対を叫んだら非国民か臆病者にされてしまうから思っても言えない」
コング「平和への近道はEROSUだ」
ゴリーレッド「ジェゼナの意識が戻った?」
火剣「やはり士気は大事だ」
コング「♪はーるを愛するひーとはー、薄着が好きなひとー」
ゴリーレッド「五国を陥落させるとは、やはり指揮を執る将で戦況が変わる」
コング「女刑事陥落」
ゴリーレッド「そういう話は別室でプリスターと」
火剣「現代のチュルーリの話に辿り着いたか」
コング「肉体を奪うのは暴力で実行できるが、心まで奪わないと本当の勝利ではない。僕も多くのヒロインの心を奪ってきた」
ゴリーレッド「脅しただけだ」
コング「強気のヒロインが屈服する時の無念の表情に」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「NO! まだ何も言ってない!」
火剣「心まで屈したら、ヒロインにとって最大の恥辱だ」
コング「ソルディエルが屈服するところが見たい」
ゴリーレッド「鬼畜かっ」
2015年04月26日 17:28
>アッキーさん
一度、眠りに就いて目覚めたら何年も経っていた。ジェゼナにとってはタイムスリップしたような感覚。眠る前とは様々なことが変わり、新鮮で目新しいことも多かったと思います。その一方で、未だに魔法使いは滅びておらず、戦況は膠着状態。ジェゼナの望む世界は未だに実現されていませんでした。なのでジェゼナは眠る直前に立てた誓い、交わした約束通りに行動を開始するのでした。平和が実現されていなければもう一度、共に戦うと…。
さて、長い回想、そして過去話からようやく現代に戻ってくることが出来ました。マジで長かったです。瀕死のソルディエルを召し抱えようとするオネの場面。オネは死亡フラグも心も全て折っていくのか、さてさて…。ソルディエルの心を折るのは並大抵のことでは出来ません。ここまで徹底的に痛めつけられても、屈していないのですから。しかし、「ころんぶすの卵」よろしく、意外なところ(?)に弱点があるかもしれません。
マチネ側の起死回生の一手になりそうなのはやはりアールの存在か、王道具。オネも決して無敵ではないけれども、どうあがいても人の手に負えるような相手ではありませんね。魔物と呼ばれているのは伊達ではない。
さて、未だに大博士に関して不明な点が存在しますね。大博士が真実の何をどこまで知っていたのかで、色々と違いますが、大博士も人としての限界があったので、ジェゼナの目覚めを予期出来なかったのかもしれません。しかし、もし、そこまで分かっていたとすると、そこから導かれる真実は…?未だに真相は闇の中…。
2015年04月26日 17:28
>火剣獣三郎さん
平和と戦争は正反対の場所に存在する事象。しかし、平和を勝ち取るために何かしらの行動を起こさなければ平和は勝手にはやってこない。平和を実現するためにはやはり戦わなければならない。しかし、目的のために手段を選ばないという姿勢は目的そのものを見失う可能性が大いにつきまとう。それでも、戦わなければならないという気持ちが、恨みが、憎しみが先行し、ついには全面戦争へと突入してしまいました。踏み止まれる一線はとうの昔に踏み越えていたのかもしれません。マチネ全体は例の魔法使いから逃げてきた人々の集まりですから戦わないという選択肢が最初からない。非戦を言えば、非国民として酷い目に合わされるし、少しのそっち寄りの発言も厳禁。特に上層部では。
数年間の眠りから醒めたジェゼナが采配を振るい、士気を高め、ジュールズを圧倒。実の話、マチネにはジュールズを凌駕するだけの武器や兵器が揃っていました。しかし、それを効率的に使えなかったために攻めきれなかった。ジェゼナがしたことは適正化のみで、直接的な強化は行っていないのです。そこにジェゼナの将としての力が見て取れます。
ついに現在の話に戻ってきました。ソルディエルはオネに両手両足、更には視力までも焼かれましたが、まだ心は折れていません。昔、両足を失った後に立ち直ったソルディエルに対して肉体を奪うことは心を折ることに繋がらないのです。ジェゼナの教えを守り、絶対に心を屈してはならないと構えるソルディエルと絶対に心を折って配下に加えようと企むオネ。この盾と矛の対決の行方は、果たして。

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