英雄再来 第十二話 大博士2

機械は必ず勝つ。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

マチネに兵力も戦力も整い、魔法使いと戦えるまでになったが勝利もしくは殲滅となると話は違う。魔法使いの抵抗は激しく、地の利は魔法使いにあり、戦力もまだ魔法の方が上だった。攻撃を行うものの、魔法使いの援軍が来て軍隊は引き上げ。なので戦争は毎回のように痛み分けのような状態。マチネの意思決定機関である長老会はいつものように定例会議を行って、そのことについて話していた。

「今回も勝てなかったか…。まだ兵士と武器が足りんのか…!」

「量はある程度確保された。しかし、問題は質じゃ。」

「ジェゼナか大博士がいればまだアレだったんじゃが…。どうにもあの二人がいなくなってからしばらくたって、兵士も兵器も質が思うように上がっとらん気がする…。」


ジェゼナが眠りに就いた後、大博士はジェゼナのための玉座を作った。

その後、大博士は失踪した。

誰にも何も言わずに忽然と姿を消したのだ。大博士の一番の弟子であるアウトマもどこに行ったのか知らないと言う。研究成果や技術などは直前にアウトマが引き継いでいたので技術部の機能への損害は最小限だったが、その失踪の理由は今でも謎であった。

大博士の失踪に関して、罪悪感から自殺したという噂がある。ジェゼナのために作ったという玉座だが、実は着工自体は随分前から行われていた。つまり、大博士は最初からジェゼナが機械化することを分かっていて、わざと言わなかったという噂である。マチネの巨大心臓を造るためにジェゼナを間接的に手にかけたことによる罪悪感から逃れるために失踪した、などと言われているが真実は闇の中である。


「ジェゼナに関してはマチネの心臓になってもらって万々歳じゃったな。」

「その言い方はどうかと思うがの…。」

「しかし、実際そうじゃろ。マチネに心臓が出来て、昼夜問わず武器の生産が出来るようになった。今までの動力不足や燃料不足も解消出来た。しかも、特攻隊を解体して指揮官を増やすことが出来た。最早、言うことなしじゃろ。ジェゼナさまさまと言ったところじゃ。よくぞ育ててくれた。マチネのためによくぞここまで尽くしてくれた。四肢を失いながらもよくぞここまで貢献出来た。十分やってくれたよ。十分過ぎる程に。」


ジェゼナも大博士もいなくなった後、三部隊となった特攻隊の内、近距離班と遠距離班はなし崩し的に解体され、指揮官の任に就くことになった者も多かった。逆に王道具班はその特異性からそのまま残され、特務隊と名を変えてマチネ全体の最終防衛部隊として位置付けられていた。普段はマチネ内の雑務をこなし、戦争時にはマチネに攻め込んできた魔法使いの撃退を主な任務としていた。特務隊の存在は大きく、戦争時にマチネが魔法使いの襲撃を受けた時、出払っているマチネ軍が戻ってくるまで持ちこたえられたのは特務隊の活躍の成果であった。


「それにジェゼナの思想は敷居が高過ぎた。あれでは付いていける者は極少数じゃ。人間の意志では魔法使いは倒せん。魔法使いを倒すのは力じゃ。魔法使いを超える力じゃ。それは機械じゃ。そこら辺のところ、大博士はよく分かっていた。魔法使いを倒すためには人間のままでは駄目じゃ。心を鬼にして、修羅にしなければ勝てん。」

「しかし、ジェゼナの指導がなくなってから兵士の質が思うように上がらんのも事実じゃがな。」

「それは魔法使いの脅威を知らん若者世代が増えたからじゃろ。指導者もジェゼナ以外にたくさんおる。ジェゼナ一人がいてもいなくてもそう大きくは変わらんよ。まあ、魔法使いに対する恨みの強さでジェゼナに勝る者はおらんかったがの。」

「そうじゃの。わしらをしてもジェゼナの魔法使いに対する徹底的な敵意は別格じゃ。無論、あのような目に遭えば当然といえば当然じゃが…。」

「わしらもジェゼナも運が良かった。運良く生き残った。結局、あの世代で生き残っているのがわしらぐらいじゃからのう。」

「とにかく、今の状況から何が出来るのかを考えるのじゃ。それに大博士は最後に言い残したそうじゃないか。機械が魔法を駆逐すると。わしらには機械がある。魔法などというものが人間に良いものを運ぶはずがない。機械こそが人間を導く唯一のものじゃからな。」

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この記事へのコメント

2015年04月06日 21:49
火剣「戦で難しいのは攻守だ」
ゴリーレッド「将棋でも攻めと守りは適材適所が重要。飛車角が玉を守り、金銀が攻めたんでは適材適所とは言えない」
火剣「前に劉備が遠征する時、関羽を連れて、城の守りを張飛に任せたら、張飛は泥酔して兵を暴行し、呂布にその隙を突かれて城を奪われた」
コング「劉備の母と妻は人質に、ぐふふふ」
ゴリーレッド「笑いごとではない」
火剣「呂布が善良な将だから良かったものの」
ゴリーレッド「ところで大博士が失踪?」
火剣「謎だ」
ゴリーレッド「ジェゼナを褒めながら、長老会の言葉の端々に嫉妬心を感じる」
火剣「多くの者に尊敬されている人間はジェラシーの対象になるものだ」
コング「♪あんたが大将! あんたが大将、あんたが大将!」
ゴリーレッド「やる気あるのか?」
コング「見よ、このやる気満々の笑顔を」
火剣「指導者不在の軍は脆いからな。危うい」
2015年04月06日 23:34
ジェゼナが眠りについただけでなく、大博士までが失踪!?
何かワケあって失踪したなら、まだいいのですが・・・。その場合は、大博士のことだから、良い考えがあるか隠された事実を掴んだか。いずれにしてもワクワクします。
しかし長老たちの話を聞いていると、どうも不穏な想像をしてしまいます。まさかとは思いますが、暗殺されたということは・・・?
あるいは、暗殺を察知して身を隠した可能性も考えられますね。

山田「何がどうと上手く言えないんだが、大博士の言う“人間やめた力”と、長老の言う力とは、どこか違う気がする。」
佐久間「それこそジェゼナに対する姿勢だ。言ってることも内実も同じだと思うが、違うところは、Gとジェゼナは互いに“反論を言う者”として位置づけられているということ。つまり、ジェゼナとG、2人あわせて完全だったんだ。」
八武「対抗意見の活性化か・・。」
維澄「同じ意見の者だけで組織されていては、それはファシズムでしかないからね。」
山田「しかし大博士は、どこへ消えたのか。タイトルは大博士だが・・」
2015年04月07日 21:58
>火剣獣三郎さん
攻めが得意だと守りが手薄で、守りが得意だと攻めが苦手。両方共が得意という人は多くはないでしょう。その中で優秀となれば更に少なくなります。現在のマチネ軍の将の配置は、悪くはないけれども適材適所とも言えないという感じです。王道具使いである特務隊の利点を最大限に活かしているとは言い難いし、嫌々ながらもしくは心にわだかまりを持ったまま指揮官になった者も少なくはありません。巨大になったマチネで完璧な采配を振るえる者は最早いないのか…?
ジェゼナと対をなす技術部の長も同時期に失踪。これは技術部だけでなくマチネ全体としても大きな痛手でした。この謎は近々明かされる予定です。
長老会はどちらかといえば無意識の側面が強いかもしれませんが、ジェゼナを疎んでいる節があります。それは嫉妬心からか、はたまた未知なる王道具への不安感か。女性蔑視の考え方がないとも言い切れない。この辺りは複雑な人間の深層心理的なものも入っているかもしれません。
さて、明確な指導者がいないこのマチネの状況は色々と危ういものがありそうですね…。
2015年04月07日 21:58
>アッキーさん
マチネの大黒柱のような存在が相次いで…。大博士の生死は不明ですが、理由なく失踪するはずがない人ですから、何か考えがあるのか。どこかで何かの活動をしているのか、それとも…。
長老会の会話に何やら不審な点がある…?長老会はジェゼナ、大博士がいなくなれば権力を一手に掌握出来る。まさか、権力欲しさに…?さてさて、大博士の安否は…。タイトルが大博士なのにこれではタイトル詐欺?
人間の認識は厳密には一人ひとりが異なり、同じものを見ても全く同じ認識は出来ないそうです。大博士が使う言葉と長老会の者達が使う言葉、同じものを使っていると本人が思っても、ひょっとすると別物なのかも。同じ言葉でも立場で意味が変わり、人柄でも関係性でも意味が変わりますから。
大博士とジェゼナは対をなす者同士だったのかもしれません。かつて、誰も見向きもしなかった両手両足を失った少女に目を止めた大博士はその時から自分と対をなす者としてジェゼナに何かを感じていたのかもしれません。

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