英雄再来 第十二話 大博士5

ジェーはワシが殺した。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「違う!」
アウトマは叫んだが大博士は冷静に言葉を返した。
「違わんよ。ジェーが機械になることを知っててワシは王道具『侵食統一』を移植したのじゃ。」

「違う!両手両足に移植出来るだけの量があったのが『侵食統一』のみだったからでしょう!」

「ではなぜ『侵食統一』のみがそれだけ量があったかというとな、以前にそれを身に付けていた者がおったからなんじゃよ。そいつは魔法使いとの戦いで死んだんじゃが、戦闘終了後に死体は回収出来たんじゃ。んで、解剖してみて驚いたよ。明らかに元々あった王道具よりも量が増えておるのじゃから。その時の資料などを整理して、王道具『侵食統一』は身に付けた者の体全てを侵食する性質を持っていることなどが判明したのじゃ。その時にマチネ心臓移植計画が始まっておる。ワシはジェーがこうなると分かっていたんじゃよ。」

「それでも、大博士はジェゼナさんに危険性を説明した!しかも包み隠さず!」

「じゃから?両手両足を失ったジェーにどんな説明をしても受け入れたじゃろう。なにせその時にジェーには選択肢などなかったのじゃから。王道具によって両手両足を得る以外の選択肢などなかったのじゃ。あんなもん、死んでくれと言ったのと同じじゃ。」

「それでも、ジェゼナさんは感謝していた!殺される相手に感謝なんて有り得ない!」

「有り得るんじゃよ。今、ワシはお主に感謝している。ワシの後継者としてワシを殺してくれることに。まあ、ワシが殺人鬼ではないと言うのならそれでもよかろう。お主はそう思えばよい。ワシはワシ自身を殺人鬼と思って死ぬがな。」

「でも、大博士はこれからマチネのために――――――!」

「いいや。自分の研究成果を試したいだけじゃ。」

「だったら生きて、その目で確かめての研究成果でしょうが!」

「そういう研究は全てやり尽くした。後はこういう実験しか出来ないんじゃ。お主が見届けてくれるだけで十分じゃよ。」

「…っ。」

アウトマは言葉が胸につっかえて、それ以上喋れなかった。

「さあ、そろそろ始めてくれんか。ワシの王道具『表裏皆無(クライ・クライン)』を永続的に起動させ続ける装置の起動を。」

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この記事へのコメント

2015年04月19日 18:08
火剣「大博士の意志は不動。誰にも止められない」
ゴリーレッド「アウトマの辛い気持ちも察してほしいところだが」
賢吾「次元はちーとちゃうが、刑事ドラマで似たような場面がある」
火剣「KOROSHITEくれと頼まれて実行したという事件か」
賢吾「そうや。逝くほうも感謝。実行するほうは号泣。せやけど、警察はどんな理由があれ、やられるほうが納得のうえであっても、それは違法であり、逮捕となるが」
ゴリーレッド「マチネは特殊な国だとしても、本来ならば命の続く限り生きるのが正しい。ただ命を使うと書いて使命。ジェゼナも大博士も使命を果たす気持ちしかないのだろう」
火剣「ハカイダーの使命はキカイダーを破壊することだ」
ゴリーレッド「その話はいい」
賢吾「それにしてはキカイダーのキック一発で空中高くまで飛んでいってしまう」
火剣「コミカルなヒールだ」
賢吾「コングか」
火剣「コングは強い」
ゴリーレッド「アウトマは大博士が望むように成長できるかな?」
2015年04月20日 09:45
なるほど、ジェゼナを殺したという自責の念や、後継者へ覚悟を背負わせる為だけでなく、そうした事情もあったわけですか。
何だか、それでこそ大博士という気がして、嬉しくなってきます・・・不謹慎ですが。
表裏皆無の機能とは、いったい何なのか。大博士が王道具の持ち主であることは、驚きこそすれ納得いくものですが、効果は謎。
表も裏も無いメビウスの輪に、それより1つ次元の高いクラインの壺。内も外も無い。もしかして、異世界と繋がることが出来る道具・・・とか?
マチネの人々が魔法使いを敵視しているとしても、更に遡った、拝島梅花について何を思っているかは不明ですし、大博士ならハデスのことも憎悪してない可能性も十分ありそう。
肝心の文献ですが、逆に言えば、その歴史を知ったからこそ大博士は今の厳然たる人格を持つに至ったのでは・・・と考えると、色々と辻褄が合ってきます。
魔法使いと人間は同質というのも、当たり前の話のようですが、マチネでは当たり前ではないはず。異端中の異端。それこそ大博士も秘匿するほどに。
科学に誠実であることで、そうした結論に至ったと考えてきましたが、何か重大な秘密を知っている雰囲気もあるので・・・。
2015年04月20日 22:04
>火剣獣三郎さん
アウトマの説得にも全く聞く耳を持たない大博士。止まる気などさらさらありませんね。自身の寿命が近いのを察して、このまま止まってしまうよりも何かをしなければならないという気持ちがかなり強いです。周りを顧みないほどに。
普通は絶対に選ばない「死」という結末ですが、ごく限られた特殊な状況では大博士のように最後を頼む者もいる。本来は生きる方が正しいけれども、人間の意志は時にそれに関係なく行動する。今までマチネでたくさんの技術を生み出してきた大博士は自身の使命を果たすため一直線。法律も倫理も度外視しております。
さて、後のアウトマはどのように成長したのか。思えばソルディエルとの絡み、ゼロとの絡み以降全然登場していませんが、まさかオネの攻撃で…?再登場があるかどうかはさておき、重要な役割を大博士から託されたことは間違いないです。
2015年04月20日 22:04
>アッキーさん
技術系の仕事に没頭する理由は魔法使いという外的要因でしたが研究職が大博士の天職だったことは間違いないでしょう。なので、マチネのため、後の者に残すため、引き継ぐためもありますが、研究者としての探求も忘れない大博士。王道具の効果は結構ピンキリで、単純な肉体強化からジェゼナのような大国の心臓を担うほどの出力を出すものまで様々です。そして、王道具を一番研究している大博士の王道具が規格内に収まるわけがなく…?表裏皆無:効果不明。
もしこの王道具が異世界を繋ぐとすれば、かつてカトレーアがハデスを呼び出したように、かつて世界が英雄を渇望し梅花さんが呼び出されたように、新たな英雄が誕生する?
大博士が歴史をどれだけ把握しているかは不明です。案外、根源の事情まで知っているのか、それとも…。ハデスがいた時代からは既に数百年の月日が、梅花さんの時代からは数千年の月日が流れていて正しい歴史を知っている者は一人もいないのかもしれません。それでも、どこかには真実の断片が残っているはず。大博士はそれを見つけたから現在の人格を形成出来た?さて、大博士はその辺りの事情を語ってくれるのか。それとも、何も話さずここで最後を迎えるのか。

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