英雄再来 第十三話 魔王2

心は既に焼かれて消えていたのか。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ソルディエルの脳裏に灼熱の光景が蘇っていた。かつて、自分の住んでいた場所も親も知り合いも両足も全てを焼き払われたあの幼き日のあの光景が。


あの炎の前にどんな抵抗も無意味だった。あの炎の前に人の意志は無意味だった。両足と共にあの炎に抵抗の意志ごと焼き払われ、何も出来なかった。何も出来ない道を選んでしまった。抵抗する道を諦めてしまった。あの日から悪夢ばかりを見る。ずっと悪夢ばかりを見る。王道具を得ても、仲間を得ても、悪夢が止まらない。ワタシは、陛下のように強くなろうとした。でも、強くなれなかった。ワタシは今だに木鶏足り得ない。今でも、失うのが怖い。部下を失うのが怖い。マチネの人々を守れないのが悔しい。そして、何より――――――。

「隊長――――――。」

エクスを失うのが何よりも、怖い…!ずっとワタシの一番そばに居続けたエクスを失うのが何よりも――――――。

ソルディエルの脳裏に焼き付いた炎が記憶の中の笑顔のエクスに燃え移る。そして、記憶の中の特攻隊での出来事やジェゼナやエクスとの触れ合い、仲間達との思い出が次々と炎に飲まれていった。











ボロボロの満身創痍の体でソルディエルに出来ることは一つだけだった。ソルディエルは悔しさを飲み込んで言った。

「止めてくれ…。もうこれ以上、奪わないでくれ…。大切な…部下なんだ…。頼む…!」

敵に、魔法使いに対して一言であっても弱音を吐く。それは本来なら決してしてはいけない行為である。しかし、今のソルディエルにはその言葉を吐く以外のことは出来なかった。そして、その言葉を聞いて、オネは勝ちを確信したように笑った。

「頼む…?おかしいなあ…。お前と私は敵同士…。敵に対して懇願する…?ここは戦場。敵に懇願したところで聞いてはくれまい…。お前は、そんなことも分からないような戦士ではないはずだが…。しかし…。しかし、だ。お前が私の部下だったら、その願いを聞き入れることもやぶさかではない…。で、もう一度聞きたいんだが、お前は私の部下だよねえ?」

オネはワザと念を押すように聞いた。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

驚いた

この記事へのコメント

2015年05月03日 00:35
コング「ぐふふふ。ソルディエルがついに哀願。しかしドSのオネのこと。はいそうですかとはいかない」
賢吾「性格悪過ぎるやろ。ソルディエルが懇願するゆうことは相当なもんと察するのが・・・」
コング「察するのが何だ。オネが淑女に見えるか」
ゴリーレッド「これからプリスターばりの意地悪な言葉責めが始まるのか」
賢吾「あかんな」
コング「アカンことはない。オネはとことん行く。ソルディエルの誇りを蹂躙する。ここは一旦軍門に降るしかない」
賢吾「関羽も一度敵の軍門に降ったことがある。最初は潔く斬り死にするつもりだったが、主君劉備の妻が曹操に丁重に扱われていると聞き、剣を置いて従った」
ゴリーレッド「無念だが仕方ない」
コング「曹操は偉いな。邪悪な暴兵なら、敵軍の将軍の妻と聞いたらヨダレもん。ぐひひひ」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「待てえええ!」
賢吾「つまり、オネみたいなタイプは、敵軍の重要人物と知ると燃えてしまうわけや。ソルディエルの身も心もいたぶる気か」
ゴリーレッド「何とかならないか」
コング「①エクスが急襲。②ツヲ紳士が乱入。③ソルディエルが部下になる。三択なら竹下景子に1000円」
賢吾「クイズダービーか」
ゴリーレッド「ソルディエルが反撃」
2015年05月03日 22:44
ついに折れてしまった・・・!
見ていて辛い場面ではありますが、あの時点でソルディエルの死を考えていたので、ある意味では安堵してしまうのが何とも複雑です。

佐久間「素晴らしい責めだ!」
山田「むごい・・・。俺の心もバッキバキだよ。」
八武「私の体も一部がバッキバキに猛っている。誇り高きソルディエルが屈する瞬間・・・おおお、これを待っていた!」
山田「骨を砕いてやろうか?」
神邪「僕は未だオネさんの境地には立てないようです。」
山田「そっちへ行くな。」
神邪「そういうことではなく、敵を敵としてしか捉えられないんですよ。オネさんのセリフの、前半部分までしか到達できていないんです。“あなたと私は敵同士のはずでしょう?”としか、言えないんです。その先が無い。」
佐久間「それが普通だ。敵を部下にするのは、三国志ゲームでは一般的だが、実際なかなか難しいものだよ。」
神邪「僕にはカリスマが無いですからね。根が下っ端なんです。」
維澄「ある意味オネは、カリスマの塊か。チュルーリの性質を最も色濃く受け継いでいるとの評判だからね。」
佐久間「しかし案外、それぞれに性質は均等に分配されてるような気もするが・・・。」
山田「それは物語が進むのを待とう。ソルディエルも、生きていれば反撃の機会が巡ってくるかもしれない。」
八武「それを楽しめるのがオネ。」
神邪「それを恐れてしまうから、僕は王の器ではないんですね。」
佐久間「なるほど、ツヲの存在は貴重だな。」
維澄「どういう意味?」
佐久間「いや、オネが部下を欲する気持ちを想像していたんだ。」
維澄「・・・?」
2015年05月04日 17:33
>コングさん
ついに心が折れたソルディエル。仲間のため、なにより一番の部下であり、気心の知れた先輩でもあるエクスを失うことは何事にも代え難かった。自分の我を通すことで仲間達が死ぬのなら、そこまでして我を通すべきなのか。ソルディエルの苦悩は相当なものだったと思われますが、その苦悩をある程度は察しつつも全く追撃の手を緩めない。とことんまでソルディエルを追い詰めて心を粉々にしようとしています。ソルディエルを部下にすることを目的としている以上、反抗心の欠片も残さず完全に屈服するまであの手この手を使うでしょう。
戦士ならば軍門に下るよりも戦って死ぬことを選ぶ者も多いかと思われます。ソルディエルも生きているのが不思議なぐらいで、本来なら炎に飲まれて死んでいた。それでも生き残った、つまり強さを持っているからオネもスカウトに踏み切った。やはり敵軍であっても、有能な人物を欲しがるのはどの時代でも同じかもしれません。
エクスが危険を察知するか、向こうの戦闘を終わらせてこちらに駆けつけてくれればまだ戦いの行方は分からないし、ツヲさんが到着すれば戦況もまた変化するかもしれません。それともソルディエルは完全に屈するのか、反撃の糸口はあるのか。答えは…。
2015年05月04日 17:33
>アッキーさん
心の折れる音が聞こえる…。どんな状況であれ生きていることを喜ぶべきか、心が折れても生きるべきか。誇りか命か。それは精神的な死か肉体的な死かの選択をするようなものかもしれません。
オネがいる位置が到達するべき境地なのかかどうかは分かりませんが、相手をただ敵として認識するのか、敵の中にも自分にとって有益な者がいるのかでは後者の思考が出来る方がより広い視野なのかもしれません。まあ、今まで敵対していた相手を味方に引き入れるのは難しいので、色々と仲間にするための努力やその他の様々なことが必要になるのは間違いないでしょう。ある者は度量に、ある者は強さに、ある者はカリスマに惹かれて仲間になるかも。思えばチュルーリにはミッドが最後まで付き従った。案外、チュルーリは従う者でも、逆らう者でも、自分に向かってくる者との会話や戦いを楽しんでいた。部下となったソルディエルが反逆の牙を研ぐのすらオネの楽しみの一つか。
ツヲさんとオネの関係はいかなるものなのか。詳しくは物語が進んだ時に。ただ、戦うに値する相手を見つけることすら困難なほど強いオネのそばにいたツヲさんはその孤独を紛らわす唯一の相手なのかもしれません。オネが部下を欲する理由も案外、自身の強すぎる力に由来するかもしれません。

この記事へのトラックバック