英雄再来 第十三話 魔王11

悲しみは怒りに変えて力とする。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

大魔法使いはオウに向かって突撃してきた。オウの王道具は通常の据え置き砲台よりも小回りは効くが、それでも接近戦は苦手であった。

『害虫がアアアア!!!』

「ぐっ!!」

両腕が機械であるのでオウは腕で一度目の攻撃を防ぎ、二度目以降の攻撃は後ろに下がって回避した。大魔法使いは更に追撃しようとする。その大魔法使いの背中に向かってユウとティイが火炎放射と溶解液を放った。

「喰らえっ!」
「させません!」

『キャハ!』
しかし、的が大魔法使いの背中に絞られているために風精霊が炎と溶解液、両方の攻撃を防いだ。
『アー、ウー。』
風精霊はまたしても舌をペロリと出して笑った。ユウとティイの前に立ちはだかる風精霊によって、二人はオウと大魔法使いの戦いに手が出せなくなった。



オウはとにかく距離を取ろうと、後ろ後ろへと攻撃を交わしながら移動していた。しかし、大魔法使いが簡単に距離を取らせてくれる訳もない。オウは攻撃に転じることが出来なかった。
しかし、攻撃を交わし続けていてオウはあることに気が付いた。攻撃が単調なのだ。一度目に腕で大魔法使いの攻撃を受けた時、その強い衝撃で防御し続けることは不可能と判断しての回避行動だったが、思った以上に回避の方がこの魔法使いと戦うには相性がいいのかもしれない。思えば、魔法使いは基本的に魔法による遠距離攻撃が得意で、積極的に近接戦闘を行うのは炎の大魔法使いガーネットなどの極一部の魔法使いのみ。
(こいつは近接戦闘に慣れていないのかもしれない。いや、怒りに任せて攻撃してきている…?そうか…こいつも、仲間の魔法使いが殺されて頭にきてるんだ…。戦場では冷静になれない奴が真っ先に死んでいくと隊長がいつも言っていた…。仲間の死を悲しむのは魔法使いを殺して全てが終わってから…。それまでは悲しみは怒りに変えて、魔法使いを滅ぼす力とする!皆…。魔法使いに殺された皆…!オレに力を貸してくれ!!)

オウは大魔法使いの攻撃の調子を読んで一気に懐に飛び込んだ。
『!!?』
大魔法使いが懐に入られたことに気が付いたその瞬間にオウは王道具を構えていた。
「喰らえええええ!!!」
瞬間、大魔法使いとオウを巻き込んで大爆発が起こった。オウは威力を最大にして密着状態から『大聖砲管(キアノン)』を放ったのだ。

『グアアアアアア!!!』
「グオオオオオオ!!!」

オウは両腕の王道具の大破と引き換えに大魔法使いの黒い鎧の一部を吹き飛ばした。その鎧の中から大魔法使いの腸の一部が飛び出した。
『ア!!ア!!ガアアアアアア!!?!?』
大魔法使いの苦しみようは半端ではなかった。そのまま地面に倒れ込んで、もがいて爪で地面を引っかき回し苦しんだ。

『アー!』
風精霊も異変に気が付いて、ユウとティイの相手など放って大魔法使いの元に駆け寄る。
『ウー!ウーアー!』

この機会をユウもティイも逃さなかった。ティイは左手を半回転させて液体を放った。それにユウは最大火力で火炎弾を放つ。

『ウー!!』
風精霊は再び両手を広げて二つの攻撃を弾き返そうとした。だが、ユウの放った火炎弾がティイの放った液体に触れた瞬間、火炎弾は一瞬にして何十倍にも膨れ上がり、その辺り一帯は炎に包まれた。



ユウの右手の王道具『灼熱業火(ヤマヤキ)』は単なる火炎放射としても使えるが、火炎弾を飛ばす大砲的な使い方も出来る。そして、ティイの左腕の王道具『神酒鬼没(ソーマル)』は溶解液だけでなく、可燃性の液体を放つことも出来る。王道具を主力武器としている特務隊は、その使い方の幅を増やすことや応用を考えることに余念がなかった。その努力が成果に繋がった。大魔法使いは風精霊共々炎の海に呑み込まれた。

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この記事へのコメント

2015年05月19日 13:34
コング「僕も接近戦は得意だ」
ゴリーレッド「喋らなくていい」
コング「両手を床に押さえつけられた時の女子の焦り顔が何ともかわいい。強気な表情の裏に、『待ってよ、1秒も耐えられない技はなしよ』という女の子特有の甘えた顔が・・・」
ゴリーレッド「だから関係ない話は別室でプリスターとしなさい」
コング「マチネにはそういう甘えた女子がいないな」
賢吾「当たり前や」
ゴリーレッド「巨大な敵を倒すのはやはり火か」
賢吾「火の海にすれば何とか勝てるか」
ゴリーレッド「大魔法使いを破ったか」
コング「このまま突き進むか」
2015年05月19日 22:55
意外な結果・・・。これはペリドットの油断ではなく、特務隊が強いんですね。長引くと思っていましたが、流石としか言いようがありません。
しかしペリドットは無惨な最期・・・。

佐久間「おお、どちらかというとペリドット優勢と見ていたが。」
山田「俺もだ。」
佐久間「単なる足し算なら、3人まとめてもペリドットに及ばなかったはず。連携によって何倍にも攻撃力を高めた威力だな。」
山田「ペリドットは、今度こそ死んでしまったか・・・?」
八武「こんな死に方はしたくないものだ。」
維澄「そしてフィベ。」
神邪「ですね。」
佐久間「この絶望がたまらない。」
山田「お前・・・。」
2015年05月20日 22:30
>コングさん
ナイフや剣などの武器は接近戦でこそ真価を発揮しますが、大砲などは遠距離でこそ輝く。大砲の王道具を持つオウに対しては接近戦が有利でした。それでもオウの大反撃、そして連携攻撃による火の海。特務隊は肝の据わっている者が多いですね。勝利以外を求めない、そんな覚悟なのかもしれません。
大概の生物は火に弱い。爆薬や炎は色々と有効だと思われます。辺りが火の海になっては流石の大魔法使いも生きてはいない…?この勢いでオネも倒せるか?それとも…。
2015年05月20日 22:30
>アッキーさん
ペリドットに油断はありませんでした。しかし、憎しみが視野を狭めたか。風精霊に自分を守らせておいて風魔法を多用すれば一方的な戦いをすることも出来たはず。一方で、対魔法使いに特化した特務隊の強いこと強いこと。歴戦の強者なだけのことはあります。王道具一つと引き換えにペリドットを撃破…?
実力ではペリドットの方が上でも、特務隊の三人は足し算ではなく掛け算で強さが上がる。ソルディエルやジェゼナが大切にしていた人間らしさが連携をより強固で強いものにしたのでしょう。
ペリドットは今度こそ…。死んだとしたら行き先は天国か地獄か。復讐に取り憑かれたのならば、やはり行き先は地獄か…。風の国は炎に包まれ、そしてここでもまた炎の海に…。地獄の炎から出てし大魔法使いがまた炎の中に還っていくのか。
ペリドットの死によっていよいよ出るか、チュルーリ一家のフィベ。それとも…?

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