英雄再来 第十三話 魔王13

化け物め、さっさとくたばれ。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「よくも…!よくも仲間達を…!!死ぬ覚悟は出来ているんだろうな!化け物があああ!!」
ビィは右手の王道具『一撃必殺(ハチサシ)』を構えた。それに対し、黒い鎧に包まれた大魔法使いも叫ぶ。
『かひゃはひゃはあアアアアア!!!がぎゃぎゃぎゃぎゃあアアアアア!!!』
だが、喉が潰れているためにビィには化け物の咆哮にしか聞こえなかった。


「喰らえええええ!!!」
ビィの右手の王道具から太い鋼の針が高速で打ち出される。ビィの王道具『一撃必殺(ハチサシ)』は狙撃に特化した王道具である。その貫通力は鋼鉄の板すらも軽々と撃ち抜く。

『キャハ!』
だが、その鋼の針を風精霊の一体が巨大な手で受け止めた。
「っ!!」
それと同時にもう一体の風精霊がビィの背後から襲いかかった。前方からは大魔法使いが黒く大きな爪を振りかざす。


ところが大魔法使いの攻撃も風精霊の攻撃も空振りに終わった。側面からキュウが高速で走ってきてビィを抱えてその場から脱出したのだ。そして、その際にビィがいた場所に爆弾が放り投げられていた。
『!!!?!?』



キュウの王道具『電光石火(イダテン)』は速く走るためだけの王道具である。機動力こそ高いが、攻撃に向いている訳ではない。キュウの攻撃の主軸は携帯している小型の手榴弾である。高速で移動することで相手を翻弄し、相手のそばを駆け抜ける時に足元に爆発寸前の手榴弾を放り投げる。それが爆発する時には自分は安全圏まで退避しているというのがキュウの基本的な戦い方であった。一歩間違えれば自分も爆発に巻き込まれる危険な戦い方ではあるが王道具『電光石火(イダテン)』がそれを戦術として確立させていた。



キュウの放った爆弾の爆発に大魔法使いも二体の風精霊も巻き込まれた。
『グオオオオオオ!!!』
爆風で吹き飛ばされた大魔法使い。その吹き飛ばされた先にはティイは待ち構えていた。ティイの王道具『神酒鬼没(ソーマル)』から溶解液がほとばしる。
(喰らえ!!)

『ゴガアアアアア!!!!』
大魔法使いの表面の黒い鎧が溶けて中身の一部が剥き出しになる。その時にティイが見たものは人の皮膚というよりもドロドロとした得体の知れない物体だった。
(何よ…あれは…!?)

大魔法使いは苦しみ、のたうち回った。風精霊二体は大慌てで大魔法使いの元に戻って、その周囲を高速で飛び回った。グルグル飛び回っている間に一体の風精霊の体が、風のように解けてもう一体に吸収されて一体になった。


その間にビィ、ティイ、キュウは大魔法使いを三方向から包囲するように移動していた。
「一斉攻撃!」
ビィの合図でキュウは爆弾を投げつけ、ティイは溶解液を追加で発射する。そして、ビィは大魔法使いの頭を狙って鋼の針を撃ち出した。

『キャハ!』
だが大魔法使いの周囲を高速で飛び回る風精霊が。爆弾の爆発も、溶解液も、果ては貫通性に特化した鋼の針すらも弾いた。
『アー、ウー!』
高速回転しながら風精霊はペロリと舌を出した。


風精霊に守られていて特務隊は大魔法使いに手を出せなくなったが、大魔法使いの方も戦えるような状態ではなかった。ティイの溶解液で溶けた黒い鎧のようなものの奥から腸のようなそうでないようなよく分からないドロドロしたものが漏れていたのだ。
『ガアアアアア!!!!』
大魔法使いは苦しみを紛らわすかのように、その場で暴れていた。そして、鋭い爪を自分自身に突き立てた。

「!!?」

そして、大魔法使いは自分の体内から最初に自分に打ち込まれた鋼の針を自分の肉片ごと引っ張り出した。
『ギャアアアアアア!!!!』
大魔法使いは叫び声を上げる。地面には黒いヘドロのようなものと、溶けた肉片のようなものが飛び散った。

(いくら自分の中の異物を取り出すためとはいえ、躊躇なく自分で自分をえぐるなんてドン引きです…。でも、鋼の針に塗ってある毒がある程度は回ったはず。もう魔法使いが死ぬのも時間の問題のはず…。)
ビィは大魔法使いの動きを注視しつつも、内心ではこのまま死ぬだろうと思っていた。それは今まで、何人もの魔法使いとの戦いで鋼の針が刺さって死ななかった者はいないという経験に基づいていた。



鋼の針と共に肉片を引っ張り出した後、大魔法使いの動きは鈍くなり石のようにその場にうずくまった。その周囲を風精霊が死体に群がる蝿のように飛び回っていた。

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この記事へのコメント

2015年05月24日 22:54
やった・・・か? だとしても喜べない状況ではあるのですが・・・。
守るべき人民を大勢失い、特務隊の今後は、どうなっていくのか。オネ長姉(だけ)は喜びそうですが。

佐久間「キャハッ♪精鋭だらけの新世界! バトルもあるよ!」
山田「不謹慎だぞ。」
佐久間「確かに無惨ではあるが、モンスターとしては昂揚を隠せない。それは山田もわかるだろ?」
山田「お前ほどにはわからない。」
神邪「ツヲさんは喜びませんかね?」
八武「後のツヲなら、美女いっぱいで嬉しいこと確実だが。」
佐久間「今は微妙か。」
維澄「過渡期。個の心情も、世界の動きも、激しく揺れ動いている。どうなってしまうのか。」
2015年05月25日 22:51
>アッキーさん
ついに…?流石のペリドットも毒には勝てなかったか…。これで後はオネを倒すだけ…?しかし、マチネの民のほとんどが死に絶え、生き残った僅かな者も散り散りに逃げている状況。この場に残っているのは特務隊の精鋭ばかりか。
強い者スキーのオネは喜びそうですね。ソルディエルに続いて特務隊にもスカウトアタックをかけてくるかもしれません。ツヲさんは、死んだ女性の方々に想いを馳せるか、今現在生き残った女性の方々に目を向けるか、半々といったところでしょうか。死を悼みつつ、生きている者がいることを喜ぶ的な。
さて、特務隊の試練がこれで終わったかと言うと実は…。
2015年05月25日 23:24
コング「ユウは服もズタボロであられもない姿? それを早く言ってよう」
ゴリーレッド「シャラップ」
コング「戦う正義のヒロインが敵との戦闘で服が破け、ところどころ肌が露出している姿は、かなりの萌えポイントなのに、そこを強調し」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「待てえええ!」
賢吾「魔法使いは不死身やからな。パニック映画の恐竜やサメならこでれ死ぬかもわからんが、魔法使いはわからん」
ゴリーレッド「確かにそうだ。動かなくなってもわからない」
賢吾「人間対魔法使いと一応なっとるが、技はもはや普通の人間とちゃうやろ」
ゴリーレッド「丸腰で闘うのは無理だ。また闘おうともしないと思う。魔法使い相手に自信があるんだと思う」
コング「丸腰で闘うのがスーパーヒロインだ」
ゴリーレッド「喋らなくていい」
賢吾「風精霊の笑い方は不気味やな」
コング「キャハ」
賢吾「エヴァでアハハハハハ、ウフフフフフと笑いながらアスカを地獄に引き込んだシーンを思い出す」
コング「風精霊に意思はあるのか?」
ゴリーレッド「どういう存在なんだ」
賢吾「風みたいなつかみどころがない存在か」
コング「よし、風精霊よガンバレ」
ゴリーレッド「ヒロピンは諦めなさい」

2015年05月26日 00:16
>コングさん
激しい戦いに目が奪われがちですが、実はユウはかなりあられもない姿になってます。紳士ならば背中を向けながら上着を渡すぐらいな感じに。犯人は風精霊。エロい意図はないと思われますが、結果としては…。
魔法使いも人間なので不死身ではないはずなのに、大魔法使いのペリドットは別格か。何度攻撃を受けても死なないこれらの光景を見れば不死なのかと思えてきます。最早、人間の力で殺せるのかどうかすら怪しい。パニック映画でも何人もの人が犠牲になってようやく最後に逆転の一手が見つかりギリギリで倒す結末が多いですが、魔法使い相手にはどうすればいいのか。
特務隊の人々も王道具を身に付けているので、異常な人間兵器っぷりを発揮しています。一人で一個小隊ぐらいの働きをしている感じ?王道具がなければここまで戦えなかったと思いますが、今まで多くの魔法使いを倒してきた自信もあるだろうし、全ての魔法使いを倒して恨みを晴らそうという気持ちもある。特務隊はどんな状況下でも魔法使いとの戦いを止めることはなさそうですね。
不気味に笑う風精霊ですが、精霊の言葉は人間には解読不能です。そもそも意味のあることを言っているのかどうかも不明で、それがまた不気味さを増している原因か。分裂も出来るし、風のように飛び回る、つかみどころのない厄介な相手ですね。

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