英雄再来 第十三話 魔王3

ワタシは役立たずでした。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

オネはソルディエルの次の言葉をニマニマしながら待った。ソルディエルが完全に自分の部下になるその一言を発する瞬間を心待ちにしていた。

その時、突然、空中にあったオネの超巨大な炎(ブラーゼ)が消滅した。
「あ?」
(魔法による対消滅?)
オネがそれに気を取られた瞬間だった。

「ぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!」

叫びながら超高速で飛んで来た何かにぶつかられてオネは吹き飛んだ。その吹き飛びようは半端ではなかった。一体、何がどれだけ恐ろしい速さでぶつかればここまでの威力が出るのだろうか。オネは溶けて何もなくなった空中を飛び続け、その先にある燃え尽きた家々や建物を貫通し、マチネの巨大壁にぶつかって、そこに大きなヒビを入れてようやく止まった。

一方、オネにぶつかった方も相当だった。ぶつかった拍子に地面に叩きつけられ、回転しながら辺りをずっこけるようにして地面を削りまくり、最後にはドロドロに溶けた元瓦礫に突っ込んで埋まって止まった。

ソルディエルは何が起こったのか分からなかった。目は火傷で見えないし、音だけ聞いても何かが壊れる音だけが響き渡るので状況が飲み込めない。ただ一つだけ分かるのはオネに対して何者かが戦いを挑んだことだった。ソルディエルはとにかく状況を把握しようと耳に神経を集中させた。

辺りの音が止んだ後、少しして誰かがこちらに歩いてくる音が聞こえた。

(誰だ…?魔法使い…か?それとも、エクス…!?)


「隊長ぅうう…。」
ソルディエルは自分の耳を疑った。それは本来なら最前線に出るにはまだ早い、新人の彼女の声だった。
「ごめんなざいぃぃいい…!」
泣きじゃくりながら謝るその声は、間違いなく彼女の声だった。

「アール…!アールなのか…!?」

「は、はひ…ぃ…。」

ソルディエルがその時に、一番に感じたことは安堵だった。
「生きていてくれたんだな、アール…!」
この戦いで何度も死に瀕したソルディエルにとって、生きて特務隊の部下と再会出来ることは何にも代え難い喜びだった。どうしてアールがこの場にいるのか。オネがどうなったのか。そんなことよりもただ部下と再会出来たことが何よりも喜ばしいことだった。

「隊長…。エクス副隊長からの伝言です…。」
「!」
ソルディエルは耳を澄ました。ゼロの口から出た言葉の数々はソルディエルの心をえぐった。

「風の国に避難途中だった住民は――――――――――――。現在、生き残っているのは――――――――――――。そして、風の国からやって来た魔法使いは特務隊の副班長、班長で退治すると…。命に代えても、必ずと…。」

ゼロの言葉は途中から泣き声とかすれ声の混合に変わっていた。

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この記事へのコメント

2015年05月04日 21:53
ここでアールの登場ですか! てっきりエクスが来たのかと思いましたが・・・。
パワー的にはオネと同じオーダーと思われる、末妹ゼロ。希望が見えてきた気がします。
とはいえ、風の国というとフィベ?

佐久間「まだまだ予断を許さない状況か。」
八武「あああああ、どうして後3分待てなかったの!?」
山田「それはムスカに聞いてくれ。」
佐久間「オネからすれば、望外のボーナスか。それとも・・」
維澄「確かに、家族が敵になるというのは、どう思うんだろうか。オネの性格からして、どちらもありそうで読めない。」
佐久間「どちらの可能性もあるというより、どちらの思いもあるだろうな。ツヲとの関係や、元祖チュルーリの性質からしても、愛する者と戦いたい欲望があると見た。」
山田「それはお前のことじゃないのか・・・?」
佐久間「好き“だけど”殺す? ううん、好き“だから”殺すの・・・けだし名言である。」
山田「おいやめろ。」
神邪「チュルーリさんの、どんな性質が受け継がれてるんでしょうね?」
佐久間「ああ、それを考えていたのか。オネは言わずもがなだが、ゼロには何だろうな。チュルーリが梅花を慕っていたことを思い起こしたが・・。」
山田「逆に言えば、オネには慕える者がいないのかも。自身が“大神霊チュルーリ”であるような口ぶりを見せる一方で、“梅花を慕うチュルーリ”ではないようなことも言ってたような・・。」
2015年05月05日 10:22
ゴリーレッド「オネの超巨大な炎を消滅させるということは」
賢吾「機械じゃ無理や。魔法対消滅?」
コング「オネを吹き飛ばす? 隊長? 新人?」
ゴリーレッド「アール!」
賢吾「ここでアール登場。ごめんなさいは全てを暴露する気か」
コング「アールの女、アールの女・・・」
ゴリーレッド「うつ伏せに寝ているのを見ると首筋にギロチンドロップを炸裂させたくなるな」
コング「待て」
賢吾「ゼロか。再会の喜びと生きていた感動でソルディエルは気づいてないか」
ゴリーレッド「新人のゼロにオネを止める力があるわけがない」
コング「どう思うだろう。ゼロが実は魔法使いだったと知った時」
賢吾「ヤバイな」
ゴリーレッド「そしてオネはどう出る?」
コング「アールはソルディエルへの恩を優先したか。いい子いい子」
2015年05月05日 10:56
>アッキーさん
もう読者の記憶からも忘れ去られているかもしれないと私が心配しているゼロが参上!エクスは現在、交戦中ですね。エクスが駆け付けても美味しい状況ではありますが、ここはゼロのターン。マチネでの話もそうでしたが、ゼロが登場してからエクスはソルディエルを取られることが多い?ようやくオネを何とか出来そうな人がやって来ました。まだまだ予断を許さない状況ではありますが希望が繋がった。一方で、風の国方面に出現した魔法使いとは一体…?風の国で封印されていたのはフィベで間違いないです。
ゼロの登場でオネはソルディエルの心を折り損ねました。後、三分あったら折れてたでしょう。まさに間一髪。しかし、オネにとっては棚ぼた的な、敵が増えた的な、本気を出せる相手が来てくれた的な側面があるのか。ゼロがソルディエルを守る限り、オネとの戦闘は避けられそうにありません。
ゼロもチュルーリの子どもである以上、何らかの形でチュルーリの力や性質を受け継いでいるはず。チュルーリが梅花を慕うように(本人を前にすると中々素直になれないところもあるようですが)、ゼロもソルディエルを慕っている。一人の心の中にはいくつもの側面が存在します。さて、どんな側面が出て来るのか。
もしオネが慕っている者が存在するとすれば、それはオネよりも強い者となるのかもしれません。しかし、梅花さんも元祖チュルーリもいない今、オネは『一人』なのかもしれません。
2015年05月05日 10:56
>コングさん
大量の弾丸や大砲、兵器や爆弾をありったけ投入すればオネの炎に一度ぐらいは対抗することは出来るでしょう。しかし、一瞬で完全に相殺することは同じ魔法使いでなければ不可能。マチネの者では出来ない芸当です。そして、オネを吹き飛ばし堂々のアール登場!初っ端から泣きじゃくっていますが、そのごめんなさいの真意は如何に。
そして、ソルディエルはあまりにも急な展開と感動の再会で頭が回っていません。少し考えれば疑問点だらけですが…。感動の波が引いて、冷静になり、生き残ろうと状況を整理し始めればすぐに浮かぶ疑問、何故アールがここにいるのか、どうやって来たのか、オネはどうなったのか、炎はどうなったのか。もし、エクスや特務隊の面々も来ているのなら疑問は解決する訳ですが、そのメンバーは未だに風の国方面に留まっているとゼロ自身が告げた。ここにいるのはゼロのみ。つまり、オネを吹き飛ばしたのもゼロ。となると、必然的にゼロが魔法使いと同等の力を持っているという結論に…。
新しく来た新人が魔法使いと知った時、ソルディエルはどうするのか。修羅場の予感しかしませんね…。一方、オネも吹き飛ばされたぐらいでは死にはしない。どうなるのか…。

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