英雄再来 第十三話 魔王7

害虫共め、痛みを知れ。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

それは一方的で圧倒的な戦いだった。大魔法使いの一方的な勝利だった。マチネの住民のほとんどが地上から消え、立ち向かった特務隊や巡視隊の者達も一方的に戦場の露と消えた。次に大魔法使いの目に映ったのは運良く生き残った少数のマチネの住民達だった。

『精霊召喚、風精霊(シルフィード)!』

大魔法使いの一言で何体もの風精霊が古代魔法銃デスチル・ジュールから飛び出した。新しく出現した風精霊は、そのどれもが歪な形をしていた。馬が崩れたような姿のもの、虎が崩れたような姿のもの、鋭い鎌を持った猪のような姿のもの。まるで荒廃した術者の心を反映したような姿ばかりだった。

『さあ、害虫を退治しろ!』

大魔法使いの号令一下、それらの風精霊が生き残っているマチネの住民達に一斉に襲いかかった。風で切り裂かれた手足が舞い、血が噴水のように吹き出して戦場の乾いた土に呑み込まれていく。残った命も次々と消え、マチネの住人の叫び声が響く。

「止めてくれー!」
「殺さないでー!」
「助けてくれー!」
「嫌だー!」
「死にたくないー!」
「うわあああああ!」


その光景を大魔法使いは空から平然と見下ろしていた。それが当たり前の光景だと言わんばかりに見下ろしていた。

(害虫共の声の煩いこと煩いこと…。死ぬ時ぐらい大人しく死ねないものなのか…。今まで散々、好き放題しておいて、最後まで煩わしい世界の害虫共め…。
ジュールズが、魔法使いが貴様らに何をした?中央の豊かな土地を譲り、黒い台座すらも放棄して我々の先祖は周辺の土地へと移住した。この世界を支えるために、魔物を封じるために敢えてそちらの道を選んだのだ。どれだけ貴様らに配慮したと思っているのだ。
では、貴様らがジュールズの魔法使いに何をした?魔法使いを悪と断じ、話し合いもせずに戦を仕掛け、たくさんの魔法使いを殺した。大人も子どもも老人も関係なく、男も女も関係なく、戦える者も戦えない者も関係なく、無差別に殺し尽くした…!
精霊達が教えてくれる…貴様らがジュールズの国々でどれほどの非道を行ってきたのかを…!土の国では周囲の村々を真っ先に襲い、そこで捕まえた人の腹に爆弾を仕込みムーンストーンのところに運ばせたと…!外道という言葉以外、何も思いつかない…!!苦しめ…!もっと苦しめ害虫共め!貴様らは苦しんで死ぬ以外許されんのだ!!)


次々に風精霊が人々を斬り裂き、砕き、殺していく。どれだけ抵抗しても精霊と人間では万に一つの勝ち目もない。どれだけ懇願しても精霊に人間の言葉は通じない。言葉が通じるのは召喚時に魔力の精度が一定以上高い精霊のみである。奇っ怪な姿の風精霊達は大魔法使いの命令に従い淡々と人々を殺していった。



生きている人々の数がどんどん少なくなる中、遠くから一発の砲撃があった。
「くそがあ!!そこから離れろぉ!!」
それがマチネの住人を襲っている一体の風精霊に命中した。それが、この戦況が変化する狼煙であった。両腕が機械で出来た大柄の女性が大魔法使いから見て左の方から風精霊を攻撃しながら向かってくる。


「てめえらあ!ふざけんなあ!オレが相手だ!!」
大魔法使いの右の方からは右手が機械で出来た筋骨隆々の女性が風精霊に火炎放射を喰らわせながら向かってくる。


「ここはワタクシが引き受けます!皆さんは逃げてください!」
大魔法使いの真正面からは左手が機械で出来た小柄な女性が風精霊に攻撃を当てて注意を引きつけながら向かってくる。


風の国の方向、マチネの八時の方角の近くに配備されていた特務隊の班長三人が戦場に駆け付けたのだ。


特務隊のオウ、ユウ、ティイが現れた!

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

2015年05月10日 18:24
コング「・・・むごいい」
賢吾「これを見るとコングは紳士やな」
ゴリーレッド「比べる相手を間違えている」
賢吾「せやけどマチネも相当な非道をしたゆうのが魔法使いの言い分や」
ゴリーレッド「ひとたび戦争が始まってしまったら、非戦闘員を避けるという発想がなくなってしまう」
賢吾「ソルディエルのように『全員生き残れ』ゆう指揮官は珍しい」
ゴリーレッド「この連絡をたとえ聞いてもその通りに実行できる状況は過ぎていた」
コング「魔法使いは生贄を取らずにどんどん葬ってしまうのか」
ゴリーレッド「くだらないことを口走ったら延髄斬りしか待ってないぞ」
コング「有無も言わさずと生贄に取るのとどっちが悪かな」
賢吾「誇り高き戦士にとって生け捕りは屈辱やろ」
コング「オウ、ユウ、ティイ。強そうだが、しかし大魔法使いにどうやって勝てるのか」
賢吾「アールは生きている。アールが全ての鍵を握っている」
ゴリーレッド「理屈で考えて普通の人間に勝ち目があるとは思えない」
コング「アールがゼロに変身! ♪この頃流行りの女の子、お尻が大きい女の子」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「NO!」
賢吾「光里、響希、望美は無事か。もう見てられんほど悲惨や。これが戦争やな」
2015年05月10日 21:56
ペリドットの思うことは殆ど正しいと思えるのに、正しい情報が伝わっていないということで、こんな取り返しのつかない悲劇に・・・。
我々の世界と照らし合わせると、良し悪しを別にしても、軍隊のある国に住むことの意味を思い知らされます。自国の軍隊が他国民を虐殺(間接的にも)すれば、それすなわち自国民が他国の軍隊から虐殺されるということなんですね。
軍隊が守るのは“国民”ではなく“国家”である。国民を守る為に軍備増強などという論が、いかに馬鹿馬鹿しいかわかります。特務隊は、あくまで復讐をメインに据えており、国民を“守ってやってる”という傲慢さが殆ど無いあたりが、好ましいですね。

山田「守ってやってると得意気になるのと、守ろうと努力する思いとは、別物どころか両極端なんだな。」
八武「それぞれ真っ直ぐな思いを抱えているというのに・・・いや、だからこそ悲しくとも不愉快ではないということか。」
佐久間「なるほど、中央の土地は特別だったな、そう言えば。譲ったという言い方はともかく、ペリドットの言い分は概ね正しくはある。」
山田「俺は半分くらいしか納得できないが。」
佐久間「そうか? アイヌ民族や琉球民族のことを考えれば、どうだ?」
山田「うーむ・・。」
維澄「確かにね。ペリドットの言い分だと、本当に望んで譲り渡したのか、それに譲るときに具体的に何があったのか、イマイチわからない。奪われたとまでは言わないけれど、渋々手放したというよりは“譲った”という表現を使う方が、誇らしくはある。そういう心理かもしれない。」
神邪「ちなみに、だいぶアルファベットが出てきましたね。」
佐久間「えーと、J、G、DL、X、B、そして今回でO、U、Tか。まだいたか?」
2015年05月11日 22:53
>コングさん
目を背けたくなるような光景が広がっていきます…。残念ならが前回の戦闘で光里、響希、望美は死亡。それ以外の特務隊員もほとんどが殲滅しています。マチネは魔法使いの非道に復讐するという名目で戦争をして、大魔法使いはマチネが一方的に非道なことをしたとして復讐の戦いを挑む。今の大魔法使いには風の国に向かってきているマチネのものというだけで戦闘員に見えています。マチネの方で軍隊といえば武装しているのが普通ですが、魔法使いの方では統一的な服装や装備はありません。なので、マチネからすれば一般人の集団でも、大魔法使いからみれば私服軍隊に見えるのです。
生き残ってこその勝利だと考えるソルディエルは全員生存を最優先命令として出しましたが、それを聞けた者はいなかった。そして、聞けていても誰もが大魔法使いに戦いを挑んでいたでしょう。そうしなければ守れないから…。
対魔法使いのメンバーとしてマチネの壁に配備されていた特務隊のオウ、ユウ、ティイが駆け付けた時には生き残っている者はほとんどいませんでしたが、ゼロではなかった。そして、アールも気絶しているだけでどこかで倒れているはず。早く目覚めて欲しいところです。この班長三人でどこまで大魔法使いと戦えるのか。悲惨な戦い、戦争はまだ続く…。
2015年05月11日 22:54
>アッキーさん
もし限られた情報の中で理論を組み立てれば、その中では正論を出せるけれども、自分が認識している部分や自分が知っている情報が世界の全てではありません。新しい情報が入ればそれまでに構築した理論が全く別の結論だったりもするかもしれません。誰かを攻撃すれば誰かから攻撃される。因果応報というのは世界の掟なのかもしれません。
人間は思ったよりもたくさんのことを知ることは出来ない。70億人の一人ひとりを知るのは難しいから、カテゴリーである程度把握するのがある種の限界なのかもしれません。そして、国というカテゴリーで分ければ、その国の軍隊のしたことは、その国の全員の意思と他の者からは捉えられる。その辺りが、復讐されて当然というのと、何もしていないのに攻撃されたから反撃して当然という、交わることのない平行線上の戦いへと向かう原因かもしれません。
特務隊が軍部の中で異色なのは最終的な行動原理が個人の復讐にあるところかもしれません。ソルディエルに関しても、マチネ全体のために働いているというよりジェゼナや部下達のため、そして自分自身の復讐のために動いているのかもしれません。
魔法使いも特務隊も根は純粋なのかもしれません。純粋な怒りが原動力となっている辺り、共通しているのかも。
2015年05月11日 22:54
実際、大魔法使いとなったカトレーアがどのような経緯で、どのような想いを込めて、誰にどう譲ったのかは数百年以上も昔のことなので詳しい記録は残っていません。しかし、今までの歴史を振り返れば、中央の土地は英雄が最初に現れた特別な場所で、かつ様々な国が奪い合った争いの中心にあった土地でもありました。カトレーア自身の故郷でもあった土地を手放すというのはどういう思いだったのか。それはまた別の機会で。
アルファベットの皆さんが段々と出てきましたね。そこにアールと、急班班長のキュウ、それと愛班班長のアイを加えると今まで出た全員のはずです。実はまだ未登場(?)のアルファベットのキャラがいたり…?

この記事へのトラックバック