英雄再来 第十三話 魔王8

生きてやがったよ…!

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

(奴らは…。)
その場に駆け付けた三人を見て、大魔法使いはかつての戦いを思い出していた。
マチネがジュールズに戦争を仕掛けて何度目かの話。今度はマチネが炎の国に攻め込んだという知らせを聞いて、雷の国と風の国から魔法使い達が間接援軍としてマチネに攻め込んだ。目的は炎の国に攻め込んだマチネ軍が引き上げざるを得ないような激しい攻撃を仕掛けること。マチネには巨大な壁があったが守る者がいなければ魔法使いなら時間をかけて壊すか乗り越えるかが可能だった。しかし、ジュールズはマチネの巨大壁を攻略出来たことが一度もない。全力で攻め立ててもマチネ軍が戻ってくるまでに攻略出来たことは一度もない。特務隊が守っていたからだ。ソルディエルの指揮の下、僅か数十名の特務隊が完璧な連携で魔法使いを寄せ付けなかった。もちろん、マチネを守っているのは特務隊だけではなく巡視隊や防衛軍も存在する。しかし、ペリドットの心に刻まれたのは魔法を使えないのに魔法使いと互角以上の戦いを繰り広げた特務隊の存在であった。


(グッ…!!)
突如、大魔法使いは頭の痛みに襲われて地上に降り立った。それと共に戦場に散っていた歪な形の風精霊達は次々に古代魔法銃デスチル・ジュールに戻っていった。
(使い過ぎたか…。再使用可能までしばらくかかりそうだ…。)
大魔法使いは自分の背中から生えている枯れ木のような黒い羽根のようなもの中に魔法銃を置いた。羽根は蛹のように縮んで魔法銃を包み、大きな瘤になった。


特務隊の三人には風精霊が引き上げたのが奇っ怪に映った。虚を付いて攻撃出来たが、数もまだまだ多いし、一体でも十分戦える風精霊が引き上げる意味が分からなかった。誘っているのか。罠かもしれない。そんな考えがよぎったが、惨殺されたマチネ住民達の死体を見て三人は怒りを抑えられなかった。気が付けば三人は大魔法使いに向かって走り出していた。
こちらで住民避難の誘導に当たっているはずの特務隊の隊員達と連絡が取れない。おそらくは一人残らず殺された、それ以外の考えが浮かばなかった。勇敢に戦っても風精霊は魔法使いの強力な魔法。特務隊の班長であっても全員でかからなければならない相手である。

(済まん…!もっと早く到着していれば…!)

(先に国に攻め込んでおいてそちらに注意を引いてる間に、別動隊で避難住民を殺すとか卑怯過ぎるだろ…!)

(許さない…魔法使い…!!必ず仇を討ちます!)




地上に降り立った黒い鎧のようなものに包まれている大魔法使いに向かって大班班長のオウが先制攻撃を仕掛けた。
「喰らえ!王道具『大聖砲管(キアノン)』!!」
オウは両手が王道具の特務隊員で、その攻撃は強力な大砲であった。一台しかない代わりに威力は折り紙付きで、マチネの新兵器の光子力放射とも引けを取らないほどだった。

その砲撃は一直線に大魔法使いに向かい、爆発した。



オウの砲撃は確かに命中した。しかし、それは大魔法使いにではなく、その前方にいた透明に近い風精霊にであった。煙が晴れた後、無傷の大魔法使いの周囲を、姿を現した一体の風精霊が飛び回っていた。その姿は童話に出て来る妖精に似ていた。

(ちっ…。)
オウは舌打ちした。間違ってもこれで死ぬような相手なら苦労はしないというのは分かっていたが、少しの手傷も負わせられていないというのは少々計算外だった。


『グッ…!』
だが、オウの予想に反して大魔法使いは片手を頭に当てて苦しむ仕草を見せた。無傷に見えても実は攻撃を受けていたのか。そうオウが思った時、大魔法使いの顔の黒いものが剥がれ落ちた。

「なっ…!てめえは…!」

他の二人も駆け付けて、大魔法使いの顔を見て驚いた。

「ペリドット!!」

「やはり生きていたんですね!!」

マチネが風の国を攻撃した時に撃ち落とした風の大魔法使いペリドット。死体は捜索したが確認されていない。その事実からマチネではジェゼナが「状況から見て大魔法使いはガーネット以外、生きている」と推測していた。ペリドットが生きているという事実は、ジェゼナの推測通り、他の行方不明である大魔法使いのムーンストーンやトル・マリンも生きていると三人は確信した。

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この記事へのコメント

2015年05月11日 23:59
恐るべき大魔法使いですが、やはり“魔物”に比べれば現実レベルの強さではあるようですね。オネVSソルディエルのときと違って、どうなるか予想しきれません。
ある意味では魔法使いの強さを過大評価しているマチネですが、それは逆に言えば、“魔物”を過小評価しているということにもなるのでしょうか。とてつもない脅威が迫っていることを、まだ殆どの者は知らない・・・!

佐久間「マチネ側の絶望的な状況。たとえペリドットを殺したとしても、より恐ろしいフィベが出てくる。」
山田「誰も幸せにはなれないのか?」
佐久間「魔物と仲間たちは幸せになれそうだが・・・つまりは、マチネともジュールズとも相容れない少数派。」
神邪「それはそれで、ある種の理想なのかもしれないですね。大勢が蠢く世界には疲れます。気心の知れた面々だけで、静かに暮らしたいと思いますよ。」
維澄「ある種の理想というと、超越的な独裁者の存在も、似たようなものなのかもしれないね。人間では成しえない、夢物語だけど・・・でも、佐久間やチュルーリは、それが出来る。」
佐久間「私は人間だ。」
八武「君は説得力という言葉のしんの意味を理解しているのかね?」
山田「エリークラかっ!」
佐久間「だいぶ戦況が多極化してきたが、ツヲたちは今どこで何をしてるんだろうなぁ。何かが起こってるのは把握してるだろうが、どこまで具体的に読めているかは。」
八武「可愛い彼女に、可愛い妹。他には何もいらないだろう。」
山田「いや、妹はフォウルだけじゃないからな?」
2015年05月12日 09:24
賢吾「人間ゆうても王道具の使い手は、魔法使いに匹敵する武器を持った戦士やな」
ゴリーレッド「素手で丸腰では勝てるわけがない」
コング「素手で丸腰のヒロインだから良いのではないか」
ゴリーレッド「不謹慎男は黙っていなさい」
賢吾「戦争に卑怯という言葉はむなしい。卑怯が当たり前なんが戦やからな。馬に乗って我こそはゆうてた時代の戦とはちゃう」
コング「手足を拘束されたヒロインが『卑怯だぞ!』と身じろぎするシーンが好き」
ゴリーレッド「関係ない話がしたいなら別室でプリスターとどうぞだ」
賢吾「ベリベットは手ごわい。魔法使いは人間とちごうて基本不死身か」
コング「妖精か。男の兵士には使えそうだ。半裸でセクシーな妖精が空中から迫って来たら、男の兵士は『え?』と躊躇する。その隙にズドン!」
ゴリーレッド「魔法使いの味方か貴様は」
コング「僕はゼロの味方」
2015年05月12日 22:57
>アッキーさん
たった一人でマチネを壊滅させたオネに比べれば大魔法使いはまだ人間の範疇にいるのかもしれません。大魔法使いは一度、マチネの兵器群の前に敗北しているので勝てないレベルではない…?しかし、マチネは魔法使い達が封じてきた「魔物」の存在を知らない。知らないものなど評価出来ない。オネも魔法使いの一体である、というのがマチネの認識です。
ペリドットが生きているということはペリドットの守る風の封印は解けていないのでまだフィベは姿を表していないようですが、アクア・マリンが死んでツヲさんが現れたようにペリドットを殺せば恐らく…。
誰もが幸せになりたいと願っているはずなのに、誰もが不幸の中で死んでいき、残った者は憎悪に囚われて更なる悲劇の道をひた走る…。その負のスパイラルを抜け出せるのは理から外れた強さを持つチュルーリ一家ぐらい?規格外の強さがあれば、人間が夢見ることも叶えられそうですね。
実は、この戦いの火蓋が切られた時、フォウル(闇堕ち)が土の国で引き起こした大地震がありました。なので、ツヲさんはまだ飛鳥花さんと二回目の戦いを終えてフォウルのいる土の国に向かっている段階なんです。他の妹達のためにもツヲさんは早くオネと合流した方がいいかもしれません。
2015年05月12日 22:57
>コングさん
魔法使いに対抗するために多数の武器や兵器が開発されました。王道具もその内の一つな訳です。既に王道具使いの中には並の魔法使いを凌駕する者もいる状況、どちらかが圧倒的に有利とか不利とかはないのかもしれません。
昔の戦では、戦の中にも作法や礼儀のようなものがあったり、一騎打ちが尊ばれたり、武士道精神、騎士道精神で真正面からの戦いが誉れとされ、卑怯な戦い方をすれば末代までの恥となる、そんな時代もあったでしょう。しかし、今は時代が違う。どんな卑怯な手を使っても勝てば官軍。勝って生きるためには卑怯などとは言ってられない。
魔法使いペリドットは一度死んだかと思われていましたが、何と生きていた…!?この衝撃の事実に特務隊と言えど動揺は隠せないか。今度は妖精の姿の風精霊を連れて単騎で攻め込んできました。魔法使いだけでなく、こちらの風精霊も厄介かもしれません。ゼロは未だに気絶中…。

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