英雄再来 第十三話 魔王9

所詮は害虫か。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

他の大魔法使いも生きているということが確定事項となった三人にとって、この戦いはますます厳しいものとなっていた。一刻も早く風の大魔法使いペリドットを倒さなければ、他の大魔法使いも駆け付けて絶対に太刀打ち出来なくなる。かといって三人であっても大魔法使いに勝てるかどうかすら怪しい。とにかく攻撃しなければ活路を切り開けない。そう考えて、三人は同時に一斉攻撃に移った。

「焼き尽くせ!王道具『灼熱業火(ヤマヤキ)』!」
湯班班長のユウの機械の右手から灼熱の炎が吹き出す。マチネの通常の火炎放射器の何倍もの威力があった。

「溶かし尽くせ!王道具『神酒鬼没(ソーマル)』!」
茶班班長のティイの機械の左手から溶解液が飛び出す。生き物なら何でも溶かす危険な液体だった。

「喰らえ!王道具『大聖砲管(キアノン)』!!」
そして大班班長のオウの両手の大砲が火を噴いた。三方向からの攻撃を大魔法使いは交わさなかった。





『キャハ!』
三人の一斉攻撃と共に大魔法使いの周囲を飛び回っていた風精霊が両手を広げた。広げられた両手は巨大化して、一つはユウの火炎放射の炎を弾き飛ばし、もう一つはティイの溶解液を吹き飛ばし、オウの砲撃は風精霊自身の体で受け止めた。
『アー、ウー。』
風精霊はペロリと舌を出してケラケラと笑った。



三人は面食らった。自分達の一斉攻撃が一つも通らなかったのだから。しかし、既に三人は散開して大魔法使いの周囲を囲んでいた。先程の攻撃が防がれたのは前方の三方向から攻撃したから。完全な周囲三方向なら先程のような防ぎ方は出来ない。

『アア…。』
だが、ここで大魔法使いの体勢が整った。先程の苦しんでいた様子がなくなり、黒いヘドロのような鎧が再生し、顔を覆った。
『マチネの精鋭共…。先程の攻撃といい、それは魔道具…。なぜ貴様らが持っている…?』
大魔法使いは黒い鎧のようなものの奥から眼光を光らせて、三人を見回した。

「!?」
「!!」
「!!」
三人は大魔法使いを警戒し、更に神経を尖らせた。

大魔法使いは感情のままに叫んだ。
『魔道具は魔法使いがより魔法を強力にするために生み出した道具…。なぜ…。奪ったのか…!魔法使い達を殺し、奪ったのか!!ふざけるな!!貴様らは魔法使いからいくつ奪えば気が済むというのか!!住処を脅かし、命を奪い、何もかもを奪い尽くす!!魔法使いが何をした!?世界を守るために魔物を封印し、ただ世界の片隅でひっそりと暮らしていただけだというのに!貴様らは自分達の薄汚い欲望を満たすためだけに魔法使いを殺し、世界を危機に陥れた!害虫め…!この害虫共めがアアアアァァァァ!!!』


大魔法使いの叫びに特務隊の三人は顔をしかめ、ますます警戒を強めた。
「こいつ…!何を言ってやがんだ…!?」
オウは憎悪と微かに困惑の表情を見せた。

「聞くな!呪いの言葉だ!」
ユウはその叫び声を敵の攻撃と断じた。

「魔法使い…!ここまで壊れた奴は初めて見ます…!」
ティイは化け物を見るような目で大魔法使いを睨んだ。

大魔法使いの目に映った三人の表情は憎悪だった。そして、嫌悪だった。異常なものを見る目付きだった。大魔法使いは、全身から何かが抜けるのを感じた。そして、その代わりに怒りの感情だけが沸き起こっていた。
『最早、言葉も通じないのか…!!所詮は害虫!姿形は人間であっても心は虫に等しいな!貴様らに生きる価値などない!!ここで死ねエエエエェェェェ!!!』
大魔法使いの体を覆う黒いヘドロのような鎧が変化して、両手に鋭い爪が加わった。


大魔法使いが襲いかかってきた!

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この記事へのコメント

2015年05月13日 23:04
認識が違いすぎる・・・!
お互いにとって、相手は仲間を殺してきた憎むべき存在。言葉を額面通り受け取ることは出来ないですよね・・・。

山田「マチネは魔道具と王道具が同じものだと知らない。ジュールズはマチネで王道具が作られていることを知らない。その結果がこれか・・。」
佐久間「ペリドット優勢か?」
八武「どうだろうねぃ。理性を無くしたとも取れる。」
維澄「ペリドットを倒しても、フィベが復活する。逆にペリドットが勝っても、みんなは戻らない。どちらも未来の無い戦いなのか・・・?」
佐久間「個人の未来はあるさ。」
神邪「しかし、誰もが佐久間さんのように個人として生きているわけでもありません。」
佐久間「それが出来るのは畢竟オネくらいかもしれないな。やっぱ“集団”は息苦しいよ・・・。」
2015年05月15日 02:08
>アッキーさん
同じ人間であっても見ている場所も方向も完全に違う。物の見方が違えば考え方も全く異なります。ちなみにこの場面、魔法使いを死ぬほど恨んでいる特務隊の班長達は、もっと激しく感情的になってもおかしくない場面。その冷静さは長年の戦闘によって培われたのか、それとも…?
マチネもジュールズも独自の方法で魔力のこもった武器の開発に成功しています。ちょうど、別の解法を使っても答えが一致するようなもの。それは偶然ではなく必然でしたが、互いが互いのことを知らなさ過ぎるのかもしれません。
いよいよ感情を剥き出しにしてなりふり構わず襲いかかってきたペリドットですが、果たして有利なのか不利なのか…。勝っても負けても未来がないのなら、第三の道はどこにあるのか。もし避けられない破滅の未来が分かっていれば、第三の道を探すことも出来たかもしれませんが、そもそもそんなことは視野にすら入っていません。探していないものは見つからない。つかもうとしている栄光の未来は、客観的に見れば水面の月を掴むような話なのかもしれません。
マチネという集団、ジュールズという集団、どちらも幸せを得られる未来はないのか…。

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