英雄再来 第十四話 エクス1

『勝利』を掴もう。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

エクスは上空で結界を張っている魔法使いをジッと観察していた。そしておもむろに口を開いた。

「お前、ペリドットか?」

『!』
エクスはペリドットの僅かな反応を見逃さなかった。
「やっぱり風の大魔法使いペリドットか。随分と姿が変わっていたから気が付かなかった。」

『そういう貴様はマチネ軍の司令官だな?何度目かの戦で我らがマチネに攻め入った時、壁の上から兵を動かしていた…。』

「アタシは、マチネ特務隊副隊長のエクスだ。」

その言葉を聞いた瞬間、ペリドットの顔が更に険しくなった。
『貴様がエクス…!ガーネットが言っていた要注意人物の一人、『無敵の剣』エクスか!数々の魔法使い達を僅か数十名の部隊で打ち破ってきた特攻隊の生き残り…!!その恨みもここで晴らさせてもらうぞ!貴様の死を持ってな!』

ペリドットは怒りを込めて呪文を唱えた。
『風(ウィンド)!!』
する、エクスの周囲に巨大な竜巻が発生した。その威力にペリドットは内心驚いていた。
(『魔法の威力が増している…?何故…?皆が、死んでいった皆が力を貸してくれているのか?ありがたい…!共に恨みを晴らそう!!』)

『風(ウィンド)!風(ウィンド)!風(ウィンド)!』
ペリドットは次々と魔法を使い、エクスのいる地上は無数の風の刃が飛び交う無法地帯と化した。岩も地面も斬り刻まれ、大量の土埃が舞い上がり、風は砂嵐に変わった。
『風よ、吹き荒れろ!もっと吹き荒れろ!我らの怒りよ、吹き荒べ!!』

しばらくして風が止み、斬り刻まれたエクスの姿が現れる、そうペリドットは思っていた。しかし、砂嵐の収まった後からエクスは平然とした顔で現れた。
『!!?』

「精度が足りないし、狙いも出鱈目。そんな大雑把な攻撃は通じないよ。」
エクスは空中のペリドットを見上げた。
「どうした?もう終わり?かかって来ないの?」
『…っ!』

エクスはペリドットの反応を見ながら、少し間を置いて喋り始めた。
「…慎重だなあ。光子力放射が怖い?」

『っ!!』

「風の国では光子力放射で撃墜されたと聞いてる。かろうじて生き残ったものの、相当の重傷だった?そこまで慎重になるぐらいに、さ。」

『貴様…!』

「あ、さっきからチラチラ周り見てるけど『そっち』には光子力放射台はないよ。」

ペリドットの頬には一筋の冷や汗が流れていた。自分の心を読んでいるかのようなエクスの言葉に動揺していた。それでも平常心を保とうと、ペリドットは現在の最大の脅威である光子力放射を無力化するために位置を特定しようと思考を巡らせていた。
(『どこだ…?先程飛んで来たのは間違いなくあの時の光の攻撃…。光子力放射というようだが、どこかに必ず発射砲台があるはず…。だが、攻撃が飛んで来た方向には何もないし、向かって来たのはこいつのみ。どうなっている…?』)

「『ここ』だよ。」
エクスは自分の両手をペリドットに向けた。パッと見た感じは何の変哲もない手のひらだった。
「アタシの本当の腕はもうないんだよ。」

――――――――――――――――――
真っ赤に焼けた空。空から赤いものが降ってくる。
『――――――魔法使いは神に選ばれた人間!羽虫ごときが抵抗するのもおこがましい――――――』

真っ赤に燃える大地。空からの落し物が何もかもを焼き尽くす。
「――――――お姉ちゃん!お姉ちゃーん!――――――」

その日、ある村に炎の雨が降った。突如現れた黒い魔法使いが炎の雨を降らせた。空から何十、何百という炎の槍が降り注ぎ、何もかもを焼き尽くす。人々は逃げ惑い、散り散りバラバラになり、そして炎で焼かれて死んでいく。

「――――――お姉ちゃーん!怖いよお!――――――」
親ともはぐれた二人の少女。一人は姉、一人は妹。二人は叫びながら必死に炎の海を脱出しようと走っていた。姉は妹の手を引いて、妹はついていくのに必死で走っていた。靴を履く時間などなく、裸足でひたすら村の外へと走っていた。

「――――――お姉ちゃーん!――――――」
その時、小さき妹が足に何かが当たって倒れた。その瞬間、姉の手が外れた。姉は勢い余って先に行ってしまったが、すぐに体勢を立て直すと妹の方に向かって全力で戻ってきた。再び妹の手を取るために両手を伸ばして。妹も両手を伸ばして、姉の手を掴もうとした。

その時、巨大な炎の柱が降った。その二人が再び手を繋ぐことは出来なかった。手を取り合って、立ち上がることは出来なかった。

――――――――――――――――――

「あの日、腕ごとお姉ちゃんを魔法使いに持って行かれてアタシは何も掴めなくなった。でも、魔法使いに滅ぼされた村の地下から鉄鉱脈が見つかって、そこから義手や義足が作られた。王道具はそうやって作られた。アタシは王道具を移植してもう一度、物を掴めるようになった。そして、次は今まで掴めなかったものを掴む。」

(『まさか、マチネは魔道具の自国生産まで行えるようになっていたのか…!?』)

ペリドットは寒気を感じた。体全体に悪寒が走った。それは本能からの警告だった。

「陛下は言った。魔法使いのための神はいても、我々のための神はいないと。でも、我々の神なんてもういなくていい。王道具が我々に勝利を掴ませてくれるから。これが、アタシの王道具『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』だ。」

ペリドットは歯車のようなものが回る音を聞きながら、今まで見たことのない奇っ怪な光景を目にした。エクスの手のひらから発射砲の先のようなものが見えた。それは光子力放射台の発射口の先端だった。
(『何だあれは…!?あれはまるで空間転送魔法ではないか…!属性魔法に含まれない、未だに分類されていない『その他』の失われた魔法…!?』)

エクスの手のひらから光子力放射が放たれた。

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この記事へのコメント

2015年06月20日 23:19
以前も出ていましたか・・。しかし本当の能力は、空間転移・・・?
マチネという国家の名前を冠する、あるいは国家の名前のもとがエクスの王道具なのでしょうか。
それを扱うエクスは強キャラ。「アタシは隊長よりも強い!」みたいな、ミストバーンを地で行く感じがしますね。

佐久間「あれ? 急にペリドットが弱くなった気がする。」
山田「それだけエクスが強いということか。尋常ならざる過去が、彼女を強くした。」
佐久間「ハリボテの強さは幾らでも身につけられるが、実のある強さは苦痛の果てにしかない。エクスの強さは、苦痛を昇華した強さだ。」
山田「そうか、ペリドットは未だ昇華していない。消化も出来ていない。だから弱く見えるのか・・。」
佐久間「とはいえ、勝敗は別だがな。」
山田「ここからペリドットの逆転もあると?」
佐久間「少なくとも、物的には。」
八武「あー、にゃるほど。」
神邪「人質作戦ですか。避難したメンバーを追いかけて・・」
山田「しかしエクスは、非情な決断が出来そうだ。」
佐久間「エクス優勢は間違いない。ただ、必勝ではないと言いたいんだ。」
2015年06月21日 09:38
火剣「エクスは要注意人物か。凄いな」
ゴリーレッド「無敵の剣。それだけではない。ところで巨大な竜巻も風の刃も通じなかったのは?」
コング「エクスはもはや生身の肉体ではない。ほとんど魔法使いと同等だ。生身の体で戦うヒロインだからこそ、大ピンチシーンには興奮できるのに」
ゴリーレッド「コングが興奮するか否かはどうでもいい」
火剣「しかし風の刃でも平然としていたのは?」
ゴリーレッド「炎の雨が降る。皆忘れられない血で塗られた過去を背負っているのか。だから強い」
コング「光子力放射を放てる女。やはり魔法使いと同等と見るしかない」
ゴリーレッド「マチネはとんでもないな」
火剣「ベリドットが恐れている」
コング「エクスが『嘘、どうしよう?』と怯える表情になるところが見たかったのだが」
ゴリーレッド「そろそろ黙らないとスペシューム光線しか待っていない」
コング「言論の自由は憲法で保障されている。人がどう感じようが自由なはず」
火剣「エクス、どうする?」
2015年06月21日 13:51
>アッキーさん
第十話のオネ8http://92428657.at.webry.info/201412/article_1.htmlで出ていますがソルディエルが戦いのメインでした。エクスの王道具は大博士の強化王道具の一つでもあり、マチネの隠し切り札と言ってもいいかもしれません。最強の剣(エクス)と無敵の矛(ソルディエル)が矛盾しないのは、エクスがソルディエルの敵に回ることは絶対にないというところからきていて、純粋な強さで言えばエクスの方が強いと思われます。しかし、戦いには相性もあるし、運もあるので、一概にどちらが強いというのは言い切れないかもしれません。
ペリドットは未だに魔王としての力を使いこなせてはいません。セミが成虫になったばかりでは飛べないのと同じで、まだ馴染んではいない。ちぐはぐなんですね。しかし、この力をペリドットがものにした時には…。
現在、特務隊の班長達は離れているけれども、全員が戦える状態ではない。そこを強襲されれば…。その時、エクスはどんな判断をするのか。現在、流れはエクスに傾いていますが、果たして。
2015年06月21日 13:52
>火剣獣三郎さん
マチネがジュールズに対しておおっぴらに宣戦布告する以前から特攻隊は暗躍しており、ジュールズもそれに鈍感ではありませんでした。ただ、各地で何度も戦闘を繰り広げていたけれども、魔法使い側に生き残った者がいなかったのでその全容が中々明らかになりませんでした。しかし、ガーネットが特攻隊と戦って生き延びたことからジュールズ側にも特攻隊、そしてマチネの存在が明らかになりました。その時にはマチネは巨大な国家になっていて、特攻隊共々、ジュールズから警戒されるようになったのです。
エクスに風の刃が通じなかったのにはちゃんと理由があります。彼女の持つ王道具の能力の応用なのですが、詳しくは次の話の最後ぐらいに書きました。また、エクスも両腕が機械で、王道具の能力のために大魔法使いと同等かそれ以上の力を手にしています。凄惨な過去がエクスをここまで強くしたか。長い年月の果てに機械である王道具が純粋な魔法の力を上回ったのでしょう。ここからエクスはどう戦うのか。

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