英雄再来 第十四話 エクス4

『勝利』を掴んだ…!

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

エクスの放った光子力放射は至近距離からペリドットに当たった。それはペリドットの腹部を貫通し、致命傷とはいかなくても重傷を負わすことが出来た。ただし、エクスが光子力放射をペリドットに向けた瞬間、ペリドットは激しい頭痛に襲われながらも回避行動に出ていた。結果、エクスの放った光子力放射はペリドットの心臓を貫かず腹部を貫いたのだった。
『ああああああ!!ああああああ!!!』
吹き飛んだペリドットは腹部を抱えながら地面をのたうち回る。エクスはすぐに止めを刺そうとペリドットのところに向かっていた。
(逃すか!)
エクスは追いかけながら王道具『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』から長剣を取り出していた。光子力放射は再充填まで時間が掛かる。至近距離での爆薬は自分も巻き込まれる。ここで兵器ではなく武器を選択したのは当然の判断だった。

『アー!ウー!』
だが、エクスがペリドットに向かうよりも早く風精霊(シルフィード)が背後から襲いかかってきた。その巨大な両手を広げて、まるで抱擁でもするかのような風精霊(シルフィード)。しかし、エクスはそれが凶悪な攻撃であることを知っていた。幾度となく魔法使いと戦ってきたエクスは風精霊(シルフィード)が風魔法の塊のような存在であることを知っていた。それに触れれば風の刃でズタボロにされることを知っていた。

「ちいっ!」
エクスは即座に剣を捨て、風精霊(シルフィード)の両手首を掴んで風の抱擁を防いだ。エクスの両腕王道具『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』は風精霊(シルフィード)すらも掴めるのだ。

『キャハ!』
次の瞬間、エクスは空を舞っていた。人間の力とは思えない程の強い力で空高く放り投げられたのだ。
(精霊は、召喚した魔法使いの力に比例して強くなる。あの風精霊(シルフィード)、今まで会ったどの精霊よりも強い…!)
風精霊(シルフィード)はそのまま巨大な手を広げてエクスが落ちてくるのを待ち構えていた。真上に放り投げられたエクスはどうあがいても真下に落ちるしかない。風の魔法使いと違ってエクスは空を飛べる訳ではない。人間が空中に放り投げられて出来ることなど、何もない。

本来なら。





(良かった。そろそろ『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』の動力が切れるところだった。ここに来て最大攻撃を放てる機会が訪れるとはな…。)
後は落ちるしかない高さまで来た時、エクスは両腕を地面の風精霊(シルフィード)とペリドットに向けて構えていた。
(『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』よ、動力を全て使っていい。残らず吐き出せ!!!)
風精霊(シルフィード)は歯車が回り、鎖が引き上げられるような音を聞いた。次の瞬間、エクスの両手からおびたたしい土砂が吹き出した。

『!!?!!!』
『アー!?ウー!?』


とてつもない量の土砂だった。それは今までのマチネの集大成と言っても過言ではない代物だった。マチネの大部分を支える金属。特に鉄製品の量は尋常ではない量だった。建物を見ても外壁から内部まで鉄が多く使われているし、武器から兵器に至るまで鉄が使われていないものはないと言っていい。鉄は鉄鉱石から作られ、鉄鉱石は地中から掘り出すしかない。
マチネは結成当時、魔法使いに見つかってはいけないということで大陸中央近くの山岳部の見つかりにくいところに拠点を構え、そこから山の内部と地下を掘り進める形で秘密裏に発展を始めた。木々を伐採すれば魔法使いに不審に思われる可能性が高かったので資源の調達は自然と地下鉱物になっていた。そして、地下資源採掘時に出た大量の土砂もまた、地上に出してしまえば魔法使いに不審に思われて発見される元となる。全ての土砂は溜め込まれていたが次第に限界に近付く。運び出して遠くに捨てようにも、その現場を魔法使いに発見される訳にはいけなかった。それを解決したのが王道具『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』だった。

『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』は『取り出す』能力を有する王道具である。物を『取り出す』ためには、当然その物を『しまう』必要がある。『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』は大量の物をしまえる圧縮空間の入口でもあった。その原理はマチネの技術力でも解明はされていないが、それは王道具全般にいえることである。マチネにとって重要だったのは何故王道具にそのような力があるのかではなく、その力を使って何が出来るか、であった。何代もの『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』の所有者が溜め込んだ大量の土砂。その一部をエクスは解き放った。土砂はあっと言う間に風精霊(シルフィード)とペリドットを飲み込み、その一帯は広大な丘陵地帯へと変貌させた。


全てを飲み込んだ丘の上にエクスは着地した。
「はあっ!はあっ!はあっ!」
両手を下につけて、すぐには立ち上がれない程に疲弊していたエクスだが、その内心は喜びに満ちていた。
(勝った…!勝った…!勝った!!王道具の動力は使い切ったけれども、風の大魔法使いペリドットをやった…!!陛下のところに戻れば王道具『浸蝕統一(ジェゼナ・グルード)』ですぐに動力が最大まで回復する!万全の体勢で戦える!残る敵は一体のみ!隊長が戦っている――――――!)

その時、轟音と共に空が燃えた。マチネの方角からとてつもない大きさの火柱が上がった。

エクスはそれを見て青ざめた。ペリドットを倒した喜びが一瞬で吹き飛んだ。

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この記事へのコメント

2015年06月30日 10:48
火剣「トドメを刺す時に躊躇してはいけない」
コング「悪党はすぐに命乞いする。優しいヒロインは躊躇してしまう。その一瞬の油断に反撃され、次の場面は磔」
ゴリーレッド「土砂に埋まりたいか?」
コング「待て」
火剣「シルフィードにも差があるのか」
コング「空高く舞い上がったエクスピンチ! 下で構えるシルフィード。かわいそうだから命まで取るのはよそうよ」
ゴリーレッド「その笑顔は何だ?」
火剣「風の刃でズタボロか」
コング「ヒロインが服をあちこち切られ、肌を露出し、血が滲む・・・これ結構好きかも」
ゴリーレッド「ヘンタイの意見は聞いていない」
火剣「ゼウス・エクス・マチネ。凄い能力だな」
コング「コピー一つでフォルダに移動できるPCのような手だ」
ゴリーレッド「これでペリドットをやったか」
火剣「しかし・・・」
コング「ぐふふふ。ペリドットが最強の敵と思ったら、もっと凄いのがいたりするんですねえ」
ゴリーレッド「嬉しそうだな」
コング「エクスとソルディエルの、『嘘、どうしよう?』と女の子らしく唇を噛むシーンを見るまでは、魔法使いを応援するね」
ゴリーレッド「ね、じゃない」


2015年06月30日 22:36
なるほど! それが本来の使い方で、そして最大の武器でもあったわけですか・・・。
大量の廃棄物が出た場合、それを利用することを考えるのが賢い生き方。まさにマチネの発展にとって、なくてはならない王道具でした。
これでペリドットは死んだ・・・?

佐久間「だが、オネにとっては前座戦に過ぎなかったのだ。」
山田「嫌気が差してくる状況だな・・・。これまで罪の無い者を殺してきた報いだとでもいうのか・・・? だとしたら罪とは何だ・・・。話し合っていれば解決したのか・・・? わからない・・・。」
佐久間「まあ落ち着け。オネが何とかしてくれる。」
山田「それしかないのか?」
佐久間「個々の人間には賢者も少なくないのだろうが、総体としての人類は、愚かな選択をし過ぎた。逆に、オネたちがいなかったら、その方が絶望だと思わないか?」
山田「うーむ・・・。」
2015年07月05日 11:08
>火剣獣三郎さん
止めを刺そうとした時に邪魔が入るのは小説、漫画、ドラマでは最早お約束なのかもしれません。それでなくても、命を消すという行為ですから、心あるなら微かに迷いが生じることも。
精霊も魔法の一種なので使い手によって強さが違います。同じ正拳突きでも、子どもと巨漢では威力が違うようなものでしょうか。シルフィードの猛攻でついにエクスもズタボロに…!?と思いきや、王道具ゼウス・エクス・マチネの強いこと強いこと。必要のない時は、圧縮フォルダに入れておいて、必要な時に解凍して大量に外に出してこれる、まさにパソコンのデータのようですね。
激闘の末に、ついにペリドットを…!しかし…!そうです、このペリドットがラスボスではないというのがマチネにとって最大の…。ペリドットはあくまで魔法使い。それは人間であるということ。しかし、彼女は人間の範疇を超えたもっと凄い何か。ソルディエルとエクスであってもオネの前には無力なのか…?
2015年07月05日 11:08
>アッキーさん
武器や兵器を大量展開する戦術は、マチネ発展後に使えるようになったものです。では、それ以前のエクスが弱かったり、王道具『ゼウス・エクス・マチネ』があまり役に立っていなかったかというとそうではないのです。実は『ゼウス・エクス・マチネ』はしまえる物の量には制限がありません。あるかもしれませんが、マチネ建国以来、未だに限界まで物を詰め込めたことはありません。以前、ニュースで廃棄物になる木屑を火力発電の燃料にしたら、処分代が浮いた上に電気を売ることが出来たというのを見ました。蟻塚のように廃棄物を利用することは一石二鳥の働きがありますね。
ついにペリドットは沈んだか…?しかし、トンデモ魔法使いがもう一人いた…!現在、オネはソルディエルと戦っていますが、その決着は…。
結局、ペリドットはなぜこんな目に遭わないといけなかったのか。この事態を回避する手段はあったのか。話し合いが出来ればよかったのか。報いというにはあまりにも無残…。この殺伐とした世界に対し、オネは何をしてくれるのか、どんな答えを出すのか。

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