英雄再来 第十五話 ゼロ1

ごめんなさい、隊長。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「マチネまで最速で運んで!風精霊(シルフィード)!!」

ゼロが呪文を唱えると周囲に風が渦巻き、飛行機のような形となってゼロを包んだ。そして、ゼロはマチネに向かって一気に加速した。

するとすぐに見えてきたのはマチネの上空に浮かぶ巨大な炎。ゼロは加速しながら呪文を唱える。

「マチネに降りかかる大火を消し止めて!水精霊(アクアリウス)!!」

召喚された水精霊は一瞬で巨大な水球となり炎を飲み込んだ。炎の力の強さ故に水精霊はひと雫も残らずに消えたが、炎も完全に消えた。

そして、ゼロは消した炎の下に一つの人影を発見した。その人影は後ろ姿で上を向いていて誰かは分からなかったが、その近くに倒れているソルディエルの変わり果てた姿を発見した。ゼロは迷わずそこに向かった。そして地面に着地するつもりだった。しかし、加速が付き過ぎて自身を全く制御出来ず、速さを落とすことも方向転換すらも不可能だった。

「きゃぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!」

叫びながら超高速で飛んで来たゼロにぶつかられてその人影は吹き飛んだ。その吹き飛びようは半端ではなかった。一体、何がどれだけ恐ろしい速さでぶつかればここまでの威力が出るのだろうか。人影は溶けて何もなくなった空中を飛び続け、その先にある燃え尽きた家々や建物を貫通し、マチネの巨大壁にぶつかって、そこに大きなヒビを入れてようやく止まった。

一方、人影にぶつかったゼロも相当だった。ぶつかった拍子に地面に叩きつけられ、回転しながら辺りをずっこけるようにして地面を削りまくり、最後にはドロドロに溶けた元瓦礫に突っ込んで埋まって止まった。

ソルディエルは何が起こったのか分からなかった。目は火傷で見えないし、音だけ聞いても何かが壊れる音だけが響き渡るので状況が飲み込めない。ただ一つだけ分かるのはオネに対して何者かが戦いを挑んだことだった。ソルディエルはとにかく状況を把握しようと耳に神経を集中させた。

辺りの音が止んだ後、少しして誰かがこちらに歩いてくる音が聞こえた。

(誰だ…?魔法使い…か?それとも、エクス…!?)


「隊長ぅうう…。」
ソルディエルは自分の耳を疑った。それは本来なら最前線に出るにはまだ早い、新人の彼女の声だった。
「ごめんなざいぃぃいい…!」
泣きじゃくりながら謝るその声は、間違いなく彼女の声だった。

「アール…!アールなのか…!?」

「は、はひ…ぃ…。」

ソルディエルがその時に、一番に感じたことは安堵だった。
「生きていてくれたんだな、アール…!」
この戦いで何度も死に瀕したソルディエルにとって、生きて特務隊の部下と再会出来ることは何にも代え難い喜びだった。どうしてアールがこの場にいるのか。オネがどうなったのか。そんなことよりもただ部下と再会出来たことが何よりも喜ばしいことだった。

「隊長…。エクス副隊長からの伝言です…。」
「!」
ソルディエルは耳を澄ました。ゼロの口から出た言葉の数々はソルディエルの心をえぐった。

「風の国に避難途中だった住民は一人残らず殺されました…。現在、生き残っているのは特務隊の班長六人と副隊長のみです…。そして、風の国からやって来た魔法使いは特務隊の副班長、班長で退治すると…。命に代えても、必ずと…。」

ゼロの言葉は途中から泣き声とかすれ声の混合に変わっていた。

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この記事へのコメント

2015年07月29日 23:51
間に合った、アール! いや、間に合ったのでしょうか・・・?
何しろオネの強さはデタラメなので、戦いとなれば全く勝てる気がしません。

佐久間「だが、戦うことによって満足させれば、あるいは・・」
山田「それだな。」
八武「しかし盛大な貫通式だ。」
山田「その言い方やめい!」
八武「いや、頑丈だと思って。」
山田「まるで佐久間。」
佐久間「私の柔肌は針仕事をするだけで傷ついてしまう。」
山田「キャラおかしいぞ。」
神邪「ようやく姉妹の再会ですか・・・。いずれツヲさんも来るはずですし、びっくりするでしょうね。」
維澄「ツヲ一行は、マチネを滅ぼそうと考えているわけだけど、既に滅んでいたと知ったら、喜ぶより呆気に取られるか。」
2015年07月30日 09:20
>アッキーさん
ようやくこの場面に戻ってきました、アールとソルディエルの再会。とにもかくにも間に合った、と思いたいです。炎が放たれる前に消し止めることは出来た訳ですし。どうにか戦わずしてオネをどうにか(?)出来ればいいのですが…。むしろ逆に戦って納得させることが出来れば…。既にマチネは至るところが焼けたり溶けたりしているし、人もいないから暴れたい放題?
オネはひたすら頑丈。オネに限らずチュルーリ一家は人間と比べると驚く程に頑丈です。基本不死だし。これで感動の姉妹の再会になるのかどうか…。ツヲさん一行はマチネを滅ぼすことで気持ちに決着を付けようとしていいる側面があるから、既にマチネが崩壊していればきっと呆気に取られることでしょうね…。

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