英雄再来 第十五話 ゼロ2

隊長、お許し下さい。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ソルディエルの心は嵐のようにめまぐるしく色々なことを考えていた。それらは全てマチネがどうすれば勝てるのかに繋がっていた。しかし、勝機が何一つ見えてこなかった。
マチネの中枢区画は先程戦った魔法使いの巨大な炎に飲まれた。それ以降、何の連絡も通信機には入っていないし援軍も援護射撃もない。それはジェゼナを始めとした中枢区画が完全に壊滅したことを示していた。
風の国に逃げたマチネの住民達もアールの報告で全滅させられたことを知った。勇敢に戦ったであろう巡視隊や特務隊の隊員のことを思うと涙がこみ上げてくるのを止められない。
そして、アールのみがここにいてエクスの伝言の最後を考えると、エクス達は敵わないと知りながら討ち死に覚悟で魔法使いに戦いを挑んだ。せめて新人だけは逃がそうとして、時間を稼ぐために。
戦える者はもう残っていない。何故なら生き残っている者が僅かに数名なのだから。それは誰が見ても勝ち目のない戦いであることを意味していた。

「アール、聞け。」

ソルディエルの頭の中には一つの疑問が残っていた。誰が先程自身と戦った魔法使いを退けたのか、ということだった。しかし、その疑問を解決する前にしなければいけないことがあった。

「ふぇ…?」

「報告ご苦労だった。これより最後の命令を下す。魔法使いが戻ってくる前に逃げろ。貴様だけでも生き延びて、魔法使いと戦った者達がいたことを後世に伝えてくれ…。」

今のソルディエルにとって誰が炎の魔法使いを退けたのかなどを知るよりも大切なことがあった。それはエクス達が命懸けで逃がした一つの命をどうにかして生き残らせること。既に自分の命の灯火が消えかかっていることは明らかだった。自分の命が消える前に、絶対にしなければならない仕事。特務隊の新人アールを生き延びさせること。それが隊長として最後にしなければいけない仕事だとソルディエルは感じていた。

「た、隊長を置いていけません!」

「ワタシはもうじき死ぬ…。もう目も見えないし、酷く眠い…。ワタシを置いて逃げろ…。」

「隊長!駄目です!」

「最後に貴様に会えてよかった…。安らかに死ねる…。」
(陛下…いや、ジェゼナ隊長…。エクス…さん…。ビィ、アイ、オウ、キュウ、ユウ、ティ、特務隊の皆…。ヴィーセ、ホペ、クリメ、シンさん、イルルさん、ボン、特攻隊の皆…。アウトマ、大博士…。誰も彼も、もうこの世界にはいない…。もし、死後の世界があるのなら、今から行きます…。魔法使いを殺せなかったから、謝りに行かなくては…。)

「隊長!たいちょー!!」

ゼロがどんなに呼びかけてもソルディエルに反応はなかった。心臓の音が徐々に小さくなっていく。

(このままじゃ隊長は本当に死んでしまう!!何とか…何とかしないと…!)
「ごめんなさい…!ごめんなさい!隊長!あなたを助けるにはこの方法しか思いつきません!!」
ゼロは両手を合わせて祈りの姿勢を取ると呪文を唱えた。

「禁忌の奥底!愚者の願望!死して屍!生きて血みどろ!幸せ願うは愚者の戯言!ダルク・アル・チュルーリ・カークル!」

呪文と共にソルディエルの周りに光る魔法陣が現れた。

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この記事へのコメント

2015年07月30日 14:36
コング「ソルディエルは無事?」
火剣「でもなさそうだ」
ゴリーレッド「人影とはもしかしなくても」
コング「すっ飛ばされて終わりとは思わないが」
火剣「これだけの大戦だ。(生きていたか!)という思いは強烈だろう」
ゴリーレッド「関東大震災のあとや8月15日のあと、再会した時、まず(無事だったか)という思いだろう」
火剣「まあ、戦闘中だから感慨にひたっている時間は数秒しかないが」
コング「そうか、ゼロはまだ6人が全滅したことを知らないのか」
ゴリーレッド「でもソルディエルは直感と状況判断で悟ってしまったのか。6人だけでなくエクスの名前も入っているということは・・・」
火剣「アールだって後世に伝えろと言われても、はいそうですかというわけにはいかない」
コング「恩人を助けるためには魔法を使うしかない」
ゴリーレッド「あとのことはあとで考えればいい」
火剣「魔法使いの中にはゼロみたいな人間もいるという証明はできるか」
コング「ソルディエルがそう思っても、マチネの上層部はどうか。きっと魔女というだけで、アールはh」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「があああ!」
火剣「h・・・磔か裸か」
ゴリーレッド「せっかく真面目な話で終わろうとしていたのに」
2015年07月30日 20:20
まさか、ソルディエル、まさか・・・と、アールなら何とかしてくれる!?

八武「ソルディエルだけでも助かってほしい。」
維澄「自らが語り部になるのが一番だ。」
佐久間「まあ、フッ飛ばされなければ、オネが同じことをしていただろう。」
山田「魂を売り渡すのが代償だろうが!」
佐久間「オネが戻ってくれば結局、同じことにならないか?」
山田「うーむ、それは・・」
神邪「実際どの程度の戦力差があるんでしょう。」
佐久間「ああ、そうか。封印される前と同じではないな。」
山田「それでもオネの方が圧倒的か。」
維澄「ソルディエルが復活したら、どうにかならない?」
佐久間「どうにもなるまい。たとえパワーアップしてようともな。」
神邪「そこまで力の差がありますか。」
佐久間「オネが、弟妹すべてを同時に相手にすることを考えなかったわけではあるまい。」
山田「あー・・・。それでも勝っちまうわけか・・・。」
佐久間「何しろチュルーリだからな。これくらい絶望的な推測をしておくのが丁度いい。」
山田「だが、ゼロだってチュルーリだ。それにオネだって、元祖チュルーリよりは劣るんだろう?」
佐久間「希望を持つと後が辛いぞ。」
山田「希望ではない。期待だ。」
2015年07月31日 10:25
>火剣獣三郎さん
どうにか生きているソルディエル。しかし、オネとの戦いで力のほとんどを使い果たし、このままでは衰弱死してしまいそうな状態です…。そして、ソルディエルの近くにいた人影はもしかしなくても、彼女ですね…。すっ飛ばされましたが絶対に戻ってきそう。
死線をくぐり抜けて死にかけの時にゼロと再会。隊長ソルディエルとしては生きていてくれて心底喜ばしいことでしょう。しかし、その一方で他の者達は…。ゼロはもちろんあの後のことは知りません。ソルディエルの方もあくまで推測。ただ、エクスがアールをこちらに寄越した理由を考えるとそれが一番しっくりくるという訳です。
ついにソルディエルの命の灯火が消えようと…。ゼロはソルディエルの言葉に従わず、逃げずに何とかしようと魔法を使いました。後先を考えないところがゼロの長所でもある。魔法使いの中にも人間がいること、魔法使いも人間であること、真に憎むべき魔法使いは極秘ひと握りであること、それを証明出来れば一番いいのですが…。
ゼロのこのような献身的な行動が多くの人の心を動かすかもしれません。
2015年07月31日 10:26
>アッキーさん
合流したのも束の間、オネとの戦闘で力を使い果たしたソルディエルはゆっくりと死に向かっていく。そんなソルディエルを助けるためにゼロは禁術を使うが、果たして成功するのか…。本来は、チュルーリがやったように魂と莫大な魔力が必要になります。周囲に人影はなく、オネが死体すら焼き尽くしてしまいました。簡易(?)死者蘇生で助かるのかどうか。助かって、自ら語り継ぐことは出来るのか。
さて、オネと弟妹達の実力差ですが根本は全員がチュルーリの性質を少しずつ受け継いでいるので、本来ならそこまで力の差は出ないはずでした。しかし、チュルーリの力を一番使いこなしているのがオネなので、現在はオネが一番強いです。性格的な問題なのか、精霊の感覚に近い方が精霊としての力を扱いやすいのかもしれません。
もし、弟妹達全員と戦えたら、戦闘大好きなオネとしては本望でしょう。ただ、ツヲさん以外はそもそもオネとの戦いを本能的に避けていますので実現は難しいかもしれません。
一つの希望は、オネはあくまでチュルーリの一部の力しか受け継いでいないし、母親チュルーリと戦えばオネは負けます。チュルーリに使えて、オネに使えない魔法もあります。ただ他の弟妹達と違って、チュルーリの教育を唯一まともに受けれたし、他よりも少しだけ長く生きている分だけ魔法の修練も弟妹達よりも多くの時間を得ていると思われます。果たしてその実力や如何に。

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