英雄再来 第十五話 ゼロ3

お楽しみは、これからだ。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「あー。今のは効いたー。」
マチネの巨大壁にめり込んだオネは居眠りから起きるような口調でその場から飛び出すと一直線にマチネの中心部に向かった。

(誰だ?誰だ?誰が、私に攻撃を仕掛けた?私の炎(ブラーゼ)をかき消し、ここまで吹き飛ばせる奴…。そんな奴がまだこの世界にいたのか。炎(ブラーゼ)をああもあっさり消すためには魔法による対消滅しか有り得ない。つまり犯人は魔法使い。いるんじゃないか、マチネが殺しきれなかった魔法使いが…!準備運動で体は温まっている。ようやく本気で、全力で戦える!かかかっ!)

オネの速さは目にも止まらなかった。人間の移動出来る速さを遥かに超越し、矢のように、光のように一点を目指した。自分自身が吹き飛ばされた場所である。そして、一瞬でそこに認識した人影に向かって攻撃を放った。

「古代魔法、弩六腑鬼苦(どろっぷきっく)!」

「キャアアアアアア!!!」

その一撃は相手の頭に命中した。相手は大回転しながら地面に叩きつけられ、その地面にぶつかった反動でまた浮かび上がり、しかしまた地面に叩きつけられようやく止まった。

「かかかっ!私に勝負を挑もうとは随分な勇者じゃないか!私はオネ!太陽と真実の子!さあ、お前――――――!」

吹き飛んだ相手が上半身を起こしてこちらを向いた時、オネは自分の目を疑った。

「――――――ゼロ?」

「オ、姉様…?」

オネが自分の目を疑うのも無理はない。敵だと思って蹴り飛ばした相手が自分の末の妹だったのだから。

「…。」
一瞬、呆けたオネだったが、次の瞬間には笑顔に変わっていた。
「かかかっ!ゼロ!久しぶりだな!こうして会うのは何百年ぶりだろうか!いやあ、済まん済まん!てっきり敵かと思って攻撃してしまった!悪かった、許せ!しかし、元気そうで何よりだ!かかかっ!で、敵はどこだ?私をぶっ飛ばした奴はどこにいる?まさか、逃げた訳ではあるまい。でなければ攻撃など――――――。」
そこまで喋っていて、オネはゼロの表情が怯えきっているのに気が付いた。
「ん?どうした?」

「オ…オ姉様…!ご、ごめんなさい!オ姉様を吹き飛ばしたのは…ゼロ、です…。」

「は?」

「その、隊長が、炎(ブラーゼ)も、思って、敵だと、消して、襲われていて、敵に体当たりして…!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!オ姉様達がこっちに攻め込んで来ている可能性は考えてたけれど、ホントにオ姉様だとは思わなくて!というか早く駆け付けたかったからそんなこと考えてる余裕もなくて…!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃいい!!」

オネは振り返ると、そこには魔法陣に守られて眠ったように倒れているソルディエルの姿があった。

(ああ…。そうか、そうか…そういうことか…。要するにゼロは先に目覚めていて、マチネをもう手中に収めていて、タイチョーもゼロの大切な物だということか…。)

オネの体からの放熱が止まり、臨戦態勢だった殺気や気迫も消えた。白熱しかかったオネの体はみるみる内に元に戻っていった。

「オ姉様…ごめんな――――――!」
オネは倒れているゼロのところへ行き、未だに泣きじゃくり続けるゼロの頭を撫でた。
「なぜゼロが謝る必要がある?悪いのはどう考えても私じゃないか。ゼロは自分の大切な物を守ろうとした。ただそれだけだろ?」

「オ姉様、許していただけるのですか…?」

「許すも何も、私は妹が自力で得た物を横取りするような真似はせん。結果的に似たようなことになってしまったがな…。マチネに一番乗りしたのは私だと思っていたが、それが違っていたとは…。」
オネはバツが悪そうに頭を掻いた。

「オ姉様…。」
ゼロはオネが怒っていないかどうかを恐る恐る何度も見て確認し、ようやく涙を拭って立ち上がった。
「怒ってないんですね…。」

「とにかく済まんかった!許してくれ!」
オネは両手を合わせてゼロに謝った。

「オ姉様…。ゼロも悪かったんです。よもやオ姉様に全力体当たりをしてしまうなんて…。お互いがお互いですし、もう水に流しませんか…?」

「…そうだな、そうしようか…。いやあ、済まんな。最悪の再会になってしまったな…。」
オネは申し訳なさそうに愛想笑いを浮かべていた。

「ところで、ゼロ。愚弟や他の妹達には会ったか?」

「いえ…。ゼロも最初に出会ったのがオ姉様ですから…。」

ゼロの言葉を聞いて、オネは軽く溜息を吐いた。
「そうか…。まあ、しょうがないか。世界はそれなりに広いしな。それでも封印はあらかた壊された。復活してない奴もすぐに封印が解ける。弟妹達が揃うのも時間の問題だ。そしたらゼロ、ここに理想の国を作ろう。皆で幸せに生きようじゃないか。」

「は、はい…!」
電球が点いたようにゼロの表情が明るくなった。
(昔みたいに、また…。)

「じゃあ、そのために必要な物を集めてくるか。」

「必要なもの?」

「決まっている。国家を創るには『奴隷(こくみん)』が必要だろう?せっかくゼロがかき集めてくれたっていうのに私がほとんど殺してしまった。建物も大分と破壊してしまったしな。作り直すにしても、暇潰しにまた壊したり殺したりするにしても『奴隷(こくみん)』は必要不可欠だ。人間狩りをしてくる。かかかっ。」

オネのその言葉を聞いてゼロの表情が強ばった。

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この記事へのコメント

2015年07月31日 20:06
とんとん拍子に和解への道が開け・・・と思いきや、やっぱりオネは普段通りのオネだった!
ついに出た、麗しのセリフ・・・奴隷と書いて国民と読む!
やはりオネの思考は、どこかズレてるというか浮世離れしてるというか。憎みあう人間たちと、根本的に別種であると感じさせます。フィベを思い浮かべると、末っ子に行くほど人間らしさが増している・・・?

佐久間「出た、オネの名言!」
山田「妄言だろ。」
佐久間「世界によくある程度の素敵なお知らせだ。」
山田「どこが素敵だ。残念どころの話じゃない。」
維澄「理想の国にはキマシタワーを建てよう。」
佐久間「何か言ってるよこの人!」
維澄「ツヲはまだしも、大切な人を殺した人間を憎悪したけど、オネには憎悪すら無いのか・・。」
神邪「ゼロは人間を対等な仲間とし、フィベは救済対象とした。慈悲深いですが、フィベは対等ではない考え方なんですね。」
八武「ある意味ツヲは対等ではあったんだがねぃ。それだけに、悲しみと憎しみも深い。」
神邪「確かにツヲさんは人間らしい気がします。」
山田「しかしオネは酷い。どこから手をつければいいかわからない。」
佐久間「いや、前世の私よりか、だいぶ大人しいだろ?」
山田「お前は手遅れだ。」
佐久間「何だとコラ。」
八武「強者の理屈は、シンプルで明快な良さがある。人間同士で殺し合うのと、オネに飼われるのと、果たしてどちらが幸せだろうねぃ?」
山田「うーむ・・・。」
維澄「いっとう良いのは、人間たちが自らの手によって平和に暮らすことだけどね。」
山田「頑張れゼロ!」
2015年08月01日 10:38
>アッキーさん
このまま平和への道が開けて欲しかった…。しかし、オネはやっぱりオネでした。妹に向ける顔と、人間に向ける顔に多少の違いはあっても本質は変わっていないという罠。オネは精霊としての性質を性格的にも色濃く受け継いでいるため、人間の感覚をあまり理解出来ません。例えば、人間は服を着るけれども、ライオンはライオン自身が服を着る必要性を感じないように、種族として別種だから理解出来ないような感じ。チュルーリ一家はオネにチュルーリの色々が集中したためか、後の子ども達は人間の感覚に近いようです。
そして、ついにオネが何やら世迷言を言い始めました。捕まる人間側で考えるとたまったものではありません。オネは自分の封印を守っていたガーネットと戦えなくて残念だという気持ちがある一方で、ガーネットを倒したより強い存在と戦えると期待する気持ちがあります。結局は、強者と戦えればそれでいいという思考なのかもしれません。シンプル故に取り付く島がない?どこを切り口にしてオネを止めればいいのやら。このままではオネの支配する国が誕生してしまうのか。そこでは、生きるのではなく、生かされるというまさに人間が家畜のような国になる可能性も…。人が自らの意思をもって自分達で暮らしていける世界のためにゼロの出来ることは何か。

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