英雄再来 第十四話 エクス10

魔法使いという化け物を退治する。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「アール…!お前、魔法が使えるの、か…?」

ゼロはハッとなって後ろを振り返った。そこには驚きの表情一色のマチネ特務隊副隊長エクスの顔があった。

ゼロはエクスも特務隊の班長達も全員を助けたくて無我夢中で後先考えずに飛び出して魔法を使った。今までなら魔法を使えばその後でどんな結果をもたらすのか考えていて魔法を使えることだけは隠し通そうとしていたゼロだったが、仲間の窮地に我を忘れ思わず使ってしまった。

ゼロは恐怖した。驚きの表情が魔法使いへの憎しみの表情に変わるまで数秒もかからないだろう。今まで自分に好意を向けていた目が、顔が、声が、自分を嫌悪し、憎悪し、拒絶するものに変わる。ゼロは出来れば目をつぶって逃げてしまいたかった。目をそらして逃げてしまいたかった。ゼロは恐怖で体が硬直し、一歩も動けなかった。





エクスが変貌する。瞳が刃物のように尖り、表情が別人のように変わり、一気にゼロに向かってきた。エクスは右手の手のひらを向けて迫ってくる。エクスの両腕は王道具で、それが向かう先は敵のみ。

「「「「魔法使いぃいぃいいいい!!!」」」」

ビイが右手の王道具『一撃必殺(ハチサシ)』を、オウが両腕の王道具『大聖砲管(キアノン)』を、ティイが左手の王道具『神酒鬼没(ソーマル)』を、ユウが右手の王道具『灼熱業火(ヤマヤキ)』を同時に構えた。一斉攻撃の構えだった。

ゼロは目をギュッと瞑った。
(これは罰。皆を騙した罰。魔法使いであることを隠した罰。マチネに最初に召喚された時に暴れて罪のない人々の命を奪った罰。皆に温かく迎え入れられる資格なんてないのに、それに甘えた罰。敵なのに味方のフリをした罰。攻撃されて当然。憎悪されて当然。拒絶されて当然。痛みを受けて当然。罰を受けて当然。人間でもないのに人間の輪の中に入っていた罰が下るんだ。ごめんなさい…。皆を騙してごめんなさい…。この場にいてごめんなさい…。魔法使いでごめんなさい…!人間じゃないのに人間に生まれてきてごめんなさい…!!)










エクスの手のひらがゼロを通り越した。

「――――――!!!」

刹那、ゼロの背後で爆発が起こる。

『ゴアアアアアアア!!!』

何かが爆発で吹き飛ばされた。エクスの両腕王道具『神すら操る人の糸(ゼウス・エクス・マチネ)』の砲撃と他の班長達からの集中放火は、全てゼロに襲いかかろうと飛びかかってきていたドス黒く変貌したペリドットに向けて放たれたものだった。

「まだ生きていたか…!!」

エクスは忌々しそうに呟いた。その呟きは憎悪に満ちていたがゼロに向けられてはいなかった。ゼロは左腕でエクスに抱き締められ、守られていた。他の班長達もゼロを守るように陣形を取っていた。
エクスが抱き締めていたゼロを素早く後ろにやると、そこにはアイが待機していて即座にゼロを連れて後方への避難を開始した。ほぼ同時にキュウは黒く蠢くペリドットに向かって持っていた手榴弾をありったけ投げ付けた。

「退避!!」

キュウの合図と共に特務隊は一斉に後方に下がった。直後、ペリドットは大爆発に包まれた。

『ギャゴオオオオオオ!!!アオオオオオオ!!!』

爆発音と爆煙が広がる奥から叫び声が聞こえてくる。それはペリドットが傷付いてはいるが同時に生存しているという証拠でもあった。










「何で…。何で…?どうして…。どうして助けてくれるの…?」
アイに連れられながらゼロは混乱していた。自分が何を呟いているのかも無意識なほどに。
「ごめんなさい…。ごめんなざいぃいい…!」
そして、無意識に涙を流しながら呟いていた。
「黙っていでごめんなざい…!魔法使えでごめんなざい…!出会っでじまっでごめんなざい…!」

「アール!」
ゼロはエクスに肩を掴まれ、同時に発せられた強い口調で我に返った。
「ひっ!はっ…!」

エクスはアールの目をジッと見つめてから言った。
「お前は新人。ここはアタシらの戦場だ。特務隊隊員アールに副隊長のエクスが命じる!今すぐマチネ本国に引き返し、隊長に現状報告しろ。風の国に避難途中だった者達は一体の魔法使いに皆殺しにされ、生き残っているのは特務隊の班長六人とアタシだけだと。そして、この魔法使いはアタシらで退治する。命に代えても必ず退治すると伝えてくれ。お前にしか出来ない仕事だ。やれるな、アール。」

「はひっ…!!」

ゼロはエクス達から離れると泣きながら一目散にマチネの方へと向かっていった。



小さくなるゼロの背中をチラリと見ながら、アイは当然の疑問をエクスに投げかけた。
「副隊長、アールはどうして魔法を…?」

「それはな。」
エクスは真面目な顔をして答えた。
「知らん。」

特務隊の全員がずっこけそうになった。

「何故、アールが魔法を使えるのかなんて知らん。アタシも今知ったぐらいだ。だが、特務隊に来る者は皆が皆、筋金入りの訳ありだ。そうだろ、お前ら。」

「確かに。」
「違いないです。」
班長の全員が苦笑いで返した。

「魔法が使えようが何しようがアールはアール。隊長が連れてきた特務隊の新人でアタシらの可愛い後輩だ。どんな事情があるかは、この戦いが終わってからゆっくり聞こうじゃないか。」

「そうですね。」
「そのためには生き残らないといけねーな。」
「ああ。」
特務隊全員が爆煙の向こう側にいるであろうペリドットに意識を集中させていた。

『ギャギュガギャギャギャアアアア!!!』
その爆煙の先からは何かが蠢き、苦しむような声が聞こえていた。





「そう言えば、まだアレをやってなかったな。」
エクスはポツリと呟いた。瞬間、班長達は姿勢を整えた。その姿勢を正す音を聞いてエクスは腹の底から叫んだ。
「てめえらー!アタシらは何だー!?」
それに対して班長達が声を揃えて一斉に答える。
「マチネ最強の特務隊です!!!」

「その通り!攻撃、援護、機動、回復!全てにおいて攻防揃った最強の部隊!そんなアタシらに不可能なことはー!?」

「ありません!有り得ません!!この世界のどこにも存在しません!!!」

「そのとーり!これよりアタシらは大魔法使いペリドットの討伐を行う!任務内容を頭に刻め!まずは攻撃!担当はアタシとユウ、オウ!とにかくありったけの爆薬と炎をペリドットが死ぬまでぶち込むぞ!次は援護!担当はビイ、ティイ、キュウ!援護射撃で隙を作り、援護射撃で隙を撃て!キュウは割り込みを任せたぞ!そして、回復!担当はアイ!各自、やばいと思ったらアイのところまで避難して治療だ!いいな!この魔法使いという化け物を退治して世界に平和を築こう!行くぞ!!」

「「「「「「はいっ!」」」」」」

エクスは班長六人と共に爆煙の向こうにいるペリドットに戦いを挑んだ。

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この記事へのコメント

2015年07月17日 17:15
火剣「アールとエクス」
コング「魔法使いいいいいい!」
ゴリーレッド「やはり」
コング「僕もすぐにわかった。だって、アール以外だって魔法使いと差がない攻撃を放っているのだから、この極限状態の戦場で、すぐにアールが魔法使いとは思わない」
火剣「でも同じ爆撃みたいな攻撃なのに、アールは魔法を使ったということはわかるのか」
ゴリーレッド「でも即アールが魔法使いとは結びつかない」
火剣「筋金入りの訳あり軍団だからな。魔法使いサリーのように、学校が大火事で、やむを得ず魔法を使ったが、普通の人間の中でやったら一発でバレる」
コング「普通の市民から見たらエクスはエスパーか魔女だと思うぞ」
火剣「幸いアールの魔法も驚くほどが目立たない」
ゴリーレッド「でもアールはどうして魔法を使ったという疑問の声が」
コング「戦いが終わってから、その体にゆっくり聞こうじゃないか、へへへ」
ゴリーレッド「体なんて言ってない」
2015年07月19日 03:13
まさか・・・と思いましたが、やはり標的はペリドットでしたか。アールに対する信頼の厚さが熱いです。
しかし、ペリドットを倒せば平和が到来するというテンションが、胸が痛いですが・・・。

佐久間「チュルーリはドSだからな。偽りの希望を与えておいて、それを毟るのが好きなんだ。大好きなんだ。」
山田「お前だ、お前。」
維澄「チュルーリの性格を最も色濃く受け継いでるのがオネだったね。」
佐久間「少なくともS的には。」
神邪「しかし、こうして仲間たちと絆を築けている。それだけは覆せません。たとえ破滅が待っていたとしても、この絆は本物です。」
八武「それに案外、未来は破滅ではないかもよ。」
佐久間「何だかんだでオネは冷静だからな。むしろツヲたちの方がキレたままだ。」
神邪「キレたままシラフになってる状態ですか。」
維澄「オネと言えば、ソルディエルはどうなったのか・・・。」
八武「まあその前にペリドットだ。侮ると痛い目に遭う相手なのはわかりきっているからねぃ。」
2015年07月19日 13:18
>火剣獣三郎さん
ついにゼロ(アール)が魔法使いだとバレて…!しかし、仲間との絆を何よりも重んじる特務隊の規律の前には魔法など意味を成さなかった。というか、王道具の性能が大概ですよね。エクスの王道具なんかはもう魔法使いから見ても魔法なぐらいのチート性能。ただし、全ては王道具と機械技術によるものなのです。新人のアールが王道具を使いこなせるはずがないし、爆薬と魔法弾は今まで魔法使いと戦ってきている特務隊の面々からすればその差は一目瞭然だと思われます。しかし、魔法が使えても何か特別な事情があるのだろうと、この件を保留。戦場という極限状態でなければ当然問い詰められていましたが…。
特務隊は王道具を身に付ける以前から訳ありな人々の集団です。魔法使いと戦おうとなると軍隊に入るのが普通なので、王道具を身に付け、個々人で魔法使いと戦う危険な道はワザワザ選びません。一般の軍隊では戦えない事情の人々ばかり。何だかんだで濃ゆい面々なので、アールの魔法も目立たない?それでも、ペリドットの魔法銃の一撃を消し去ったのは特務隊の中でも規格外。流石に疑問の声が湧き上がる。この戦いで特務隊の面々が生き残ればアールに答えを聞けるはずです。答えは生き延びた先にある。
2015年07月19日 13:19
>アッキーさん
アールが魔法使いだとバレて、特務隊の攻撃の標的に…!?と思いきや後ろから襲いかかってきたペリドットからアールを守るためでした。今現在、特務隊はペリドットに焦点を合わせているので、アールの謎の解明は後回しになりました。それにしてもゼロの必殺技、破動砲でもペリドットは死なず。そんなペリドットを倒せるのか。そして、倒せたとしても真の平和は訪れるのか…。
ペリドットを倒してもまだオネが残っています。この後、マチネに戻ったゼロはオネとソルディエルの二人と再会することになるはずですが、その時にはどんなドラマが繰り広げられるのか。ゼロが特務隊の人々と心が繋がったことは真実。例えどんな未来が待っていても、この絆は永遠となる。
一方、こちらに向かっているツヲ一行は、人間を滅ぼすという方針を打ち出して向かってきています。ツヲはアクアが殺されたことに関して、フォウルはムーンストーンが殺されたことに関して、飛鳥花は自分が毒姫と恐れられ閉じ込められたことに関して、それぞれに思うところがあります。
さて、いよいよ魔王との戦いも終盤戦に差し掛かったかも。

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