英雄再来 第十八話 再会2

壁の先で待つ者。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

ツヲ、フォウル、飛鳥花の三人は林を抜けてマチネの巨大防壁の近くまでやって来た。

「改めて見るととんでもないデカさだな。これを作るためにどんだけ土を運んだんだか…。」
飛鳥花は首を思いっきり反らして上を見た。真近くから見るマチネの巨大防壁は天まで届いているような錯覚まで起こさせるぐらいの大きさだった。

「変だなあ…。」
ツヲは首を傾げた。

「ん?」

「いや、苦労して作った割には警備兵がいないと思ってね…。」

「うん。簡単にここまで来れたし、警戒したけど特に敵は出なかった。」
フォウルはそう言いながら軽く周囲を見回した。

「そうだな。これじゃ、乗り越えるか壊して終わりだ。まあ、それも結構骨が折れると思うが…。」

「というか人の声とか気配とかが感じられないのが気になるなあ。それと、この壁の向こうがよく視えないんだ。水分が極端に少ないというか…。まさか…。」
(まさか…ね…。いや…。多分…。)

「とにかく行ってみよ。土神霊(グノメ)。」
フォウルが呪文を唱えると、土が集まり大きな手になった。
「皆、乗って。」

「おう。」
飛鳥花も土の手に乗り、ツヲを引っ張り上げた。
「ありがとう。」

三人ともが乗ると、土神霊(グノメ)は壁に吸い付くようにくっついて、そのままゆっくり壁の上へと動き始めた。


「おお…。」
土神霊(グノメ)がドンドン上がっていく。それに従って、遠くの景色がドンドン広がって見えてくる。飛鳥花は感嘆の溜息を漏らした。長い間、地下牢に入れられていた飛鳥花にとって外で見るものは全て新鮮だったが、こうして高いところから今まで旅して来た場所を見るのは更に新鮮だった。
(あれが今まで歩いてきた道…。その向こうのあの辺りが多分土の国…。向こうに行けばきっとツヲと戦った沼地…。そして、あそこがあたいが閉じ込められていた村は多分あっちの方にずっと行った辺り…。)
飛鳥花にとって村は長きに渡って自分自身を閉じ込めてきた場所。理不尽に泣き、村人を憎み、自分の魔法の才能を恨んだ場所。しかし、今の飛鳥花は、そこを酷く小さく感じた。飛鳥花自身も驚くぐらい、ちっぽけで、そこに対する感情が余り湧いてこなかった。

(…大切なのは過去じゃねえ。今だ。今、あたいには共に歩んでくれる奴らがいる。あたいを認め、あたいを好きだって言ってくれる奴らがいる。あたいも、こいつらが好きだ。)
飛鳥花はツヲの手をギュッと握った。

「もうじき、一番上だな。」
「うん、油断せずに行こう。」
「そうね。」

ガコン。

壁の最上部に到達したので土神霊(グノメ)は止まった。そこから壁の内側を見ればマチネのほぼ全てが見渡せた。

「――――――!」
「――――――!」

その光景を見て、フォウルも飛鳥花も声を失った。

「二人共、何が見える?水分が少ないせいか僕には何も視えないんだけれど…。」

「…何もない。ツヲ兄ちゃん、何もないよ…!!」

「え?」

「人も、家も、何もかもだ…。ここは本当にマチネなのか…?」

「こんなの…酷い…。何なの、これ…。」


マチネの巨大壁から広がる光景は壮絶だった。元々の光景を知っていない者でさえ、この場所で途轍もないことが起こったのだと理解出来るほどだった。マチネの巨大な重工業施設から一般の建物までの大体が焼失して全壊。残っているところでも半壊していて、それがかろうじてこの地に巨大な国があったことを示していた。壁の方を見ると右奥、マチネの中心から一時の方角と二時の方角に巨大な穴が空いていた。その周囲は完全に何もなく、ただ何かが溶けたような後と、何かが通って削り取られたような跡がある。中央には巨大な穴が空いていて、その周囲にかろうじて何か巨大な施設があったということを想像させるような壁が残っている程度だった。穴の深さは果てしなく、どこまで続いているのかは分からなかった。それ以外の場所も溶けて土だけになっているような場所や何か高熱のものが通って出来たような不自然な道など、壮絶な戦いの痕跡が至るところにあった。










「おや?侵入者か?」
呆然としている三人の耳に小さな女の子の声が聞こえた。次の瞬間、殺意に近いぐらいの闘気を感じると共に炎の塊が飛んで来た。

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この記事へのコメント

2015年08月20日 01:16
ある意味これが、ほのぼの回なのか・・・?
状況はシリアスなはずなのですが、どうしても変な笑いが抑えられませんねー。
そしてオネwwwいきなり攻撃www
・・・と、ちょっと待てよ、あれから脱出できたのでしょうか?

佐久間「流石はマチネ、3人乗っても大丈夫!」
山田「それって凄いようには聞こえないというか、肝心の中身が全然だいじょばないんだが・・・。」
八武「意気込んでやってきたときには、もう全てが終わっていた。こんなとき、笑えばいいと思うよ。」
維澄「本当に全てが終わったかどうかは、まだわからないけどね。」
神邪「大博士の言葉が気になりますね。」
2015年08月20日 11:12
コング「ツヲ紳士は見えないって、女の裸も見えないのか」
火剣「感じることはできるだろうが」
ゴリーレッド「魔法使いも万能ではない」
コング「毒姫・飛鳥花。ツヲ紳士は人生の恩人というわけか」
火剣「3人ともマチネを滅ぼす気で来たのか」
ゴリーレッド「マチネの技術力の高さを象徴するような巨大な壁か。マチネをクズとバカにしていたら余計驚く」
火剣「ソルディエルやエクスがいるマチネ。クズではないとは、なかなか思えないだろう」
コング「東京スカイツリーは遠くから見ても普通だが、真下から見上げると、確かに天まで届いているように見える」
ゴリーレッド「警備兵がいないのはあり得ない」
コング「♪なんにもない、なんにもない、まったくなんにもない」
火剣「ムーミンか」
コング「過去は忘れて、現在と未来だけを見てると人間は明るくなれる」
火剣「消し去りたい過去ほど忘れられないこともある」
ゴリーレッド「アールより先にオネと再会してしまったか」
コング「敵か味方か確認する前に攻撃ってどうなんだ?」
火剣「オネは闘争本能の塊か」


2015年08月20日 20:18
>アッキーさん
ほのぼの回かどうかは分かりませんが、人は死んでいないし、のほほん(?)と会話が続いているので、ほのぼの回なのかも…?ただ、マチネの惨状は無残を通り越して、壁以外の大部分が壊れるか焼失するかしています。流石の三人も呆然、唖然。そして、オネの奇襲。本当に何をやっているんだ、この人は。しれっと、ここに出てきている辺り、脱出出来たようです。詳細は現在のところ不明。
マチネの巨大防壁は超ド級魔法使い三人が乗っても大丈夫、ただし警備の者はいません。警備どころかほぼ廃墟に近いぐらい誰もいない。もう笑うしかない状況かも。
マチネは完全に死んでしまったのか。大博士が残した言葉にはまだ何か隠されているのか、それとも流石の大博士もここまでの状況は読めていなかったのか。
2015年08月20日 20:19
>火剣獣三郎さん
ツヲさんはある日を境に視力を失ってしまいました。魔法を使えば遠くのものまで視えるのですが、それもさほど積極的に使っているという訳ではなさそう。感じ取ることで代替しています。他から見れば魔法は万能に思えるけれど、使っている本人だけが魔法の限界を知っています。
さて、毒姫の飛鳥花はすっかりツヲさんチームの一員。三人でマチネを滅しに来ましたが、もう滅んでいました。
思えば、ツヲさん達はエクスやソルディエル、ジェゼナとは会っていない。彼らがマチネと認識しているのは、水の国に毒砲弾を打ち込んだ者達や村で食料を強奪しながら村人を殺した者達ばかり。ツヲさん達がソルディエルと出会っていれば印象は全然違っていたかもしれません。
さて、ついに到着したマチネですが、警備兵もいなければそもそもの国そのものがなくなっていた。どうしてこうなったのかを考える間もなくオネの急襲。誰かを見つければ取り敢えず攻撃しておこうぐらいの感覚で炎を投げてきました。挨拶するぐらいの気軽さで炎を投げてこられたら、相手はたまったものではありませんね。

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