英雄再来 第十八話 再会8

絆とは。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

生き別れの兄、姉と妹との感動の再会だが、ツヲの手を握っていた飛鳥花は非常にバツの悪い思いをしていた。後ろの方で見ているならともかく部外者の自分が感動の再会の最前線にいるのは非常に気まずかった。その時、飛鳥花は少し遠くに座っているオネが手招きしているのが見えたので、そっとツヲの手を離した。



「ま、肉食え、肉。腹減ったろ。」
オネは小声でそう言いながら焼けていい匂いの漂うデカイ骨付き肉を差し出した。

「あんがと…。」
飛鳥花は肉を受け取りながら、そこにあった石の椅子に座り肉を頬張った。
「旨え…。これ何の肉?」

「美味い肉だ。かかかっ。」

「…ふ~ん。」

飛鳥花は似たような台詞をツヲからも聞いたような覚えがあった
(やっぱり兄弟って似るもんだな…。)


肉を頬張りながら飛鳥花はアールの方を見た。
(あれがツヲの末の妹か…。)
遠くからでも強調されるアールの胸やスラリとした体付きによって飛鳥花の目線には羨望と嫉妬の感情が少し混じり込んでいた。
(フォウルはつるぺったん…。こっちのオネは幼児体型…。この二人と比べれば、あたいは胸が一番大きいけど…。ツヲの奴はやっぱりデカイ方が好きなのか…?…。…人の感動の再会の時にあたいは何を考えてるんだか…。)

ボーっと三人を眺めている飛鳥花にオネは小声で耳打ちした。
「安心しろ。愚弟は巨乳も貧乳も美乳も好きだ。」

「ば、ばっきゃろう…!そんなんじゃねえ!ていうか、人の心を読むんじゃねえ!」
飛鳥花は声の大きさを押さえつつも慌てふためいた。
「考えが顔に出過ぎだ…。分かりやすい奴だな。」
オネはクックと笑い、飛鳥花は顔を真っ赤にしてソッポを向いた。

(チェッ…、どうにもコイツの方が一枚上手なのかね…。)










「ツ、ツヲ兄様!?それに、フォウル姉様まで…!!」
全く予期していなかった来訪者に対し、アールは驚きを隠せなかった。

「やあ、久しぶりだね、ゼロ。」
そんなアールに対してツヲは優しく笑いかける。

「大丈夫…?少し痩せた…?」
フォウルはアールの顔を心配そうに見つめた。

「あ…。ああ…、うう…。」
アールは戸惑い、顔を歪ませ、歯を食い縛り、そして瞳を閉じて大粒の涙を溢した。
「ごめんなさい…。」
アールは微かに二人と距離を取り、言葉に拒絶の意志を滲ませた。その態度は逆にツヲとフォウルを戸惑わせ、同時に心配して近付こうとする二人の行動すらも制限した。

「ワタシには、もう二人を兄、姉と呼ぶ資格はありません…。ワタシはもう妹のゼロではないのですから…!ワタシはアール…。マチネ特務隊のアールです…!オ姉様と対立した時、ワタシは妹としての立場ではなく、自分を受け入れてくれたマチネの人々への恩に報いる立場を選びました…。家族との絆を断ち切ってでも、守りたい人がいましたから…。その選択を後悔はしていません…。でも、その選択でワタシは越えてはいけない一線を越えました…!もう、二度と…!二度と家族に顔向け出来ないって!覚悟は決めています!もう、あの日々と同じ時間を過ごすことは出来ないと、もう受け入れられはしないと分かっています!それがワタシの選んだ道なのですから…!ワタシは大切な絆を犠牲にしても守り…!」
ついにアールは言葉を完全に紡げなくなり、ただただ涙を流していた。

ポフン。

その時、泣きじゃくるアールの頭にツヲはゆっくり手を置いて、ポンポンと優しく叩いた。
「ゼロは、変わってないよ。」

「え…?」

トン。

フォウルはツヲの言葉でキョトンとするアールの肩を頭で小突いた。
「絆は絶対に切れない。ゼロがアールになっても切れはしないし、アールになって絆を切ったつもりでも、わたし達は繋いでる。だから、わたし達はずっと家族。」

「そうだよ。ゼロは僕の妹だよ。そこは何も変わらないし、今も変わってない。ゼロは昔から真面目で、それがゼロの良いところだ。でも少し思い詰め過ぎちゃうところがあったね。今でもそう。守りたい人が出来たからといってどうして僕達の絆が切れるんだい?むしろ僕達の家族が一人増えるってことじゃないか。僕は歓迎するね。それとも、オ姉さんと戦ったから?それは気にしなくていいよ。絆で繋がった姉妹でも時には喧嘩もするさ。僕とオ姉さんなんか、しょっちゅう争ってるけど絆は全然切れていないよ。というか、オ姉さんと戦ったゼロの勇気に拍手を送りたいね。さっき久々にオ姉さんと戦ったけれど、また強くなってたよ。もう僕から見ても天才なのか怪物なのか見分けがつかないくらいだったよ。」

「ぐ~て~い~。後で壁の外な。」
甘ったるくも寒気を感じる声が遠くから飛んできた。
「しまった…。」
ツヲは頭をポリポリと掻いた。

「まあいいや。とにかく、ゼロはそんなオ姉さんに立ち向かっても自分の意志を貫こうしたんじゃないか。これはゼロの大きな成長だよ。確かに僕はゼロに危ないことをして欲しくないとは思っている。けれども、それはゼロに傷付いて欲しくないからだ。自分の言いたいことを言えずに心の中で傷付くなら、戦うことも時には必要かもしれない。その方が自分にとって誇りになる傷付き方な時もある。どの道を選んでも傷付くのなら後悔しない道を選んで傷付けばいい。後で振り返った時に誇りに思える道を選べばいい。ゼロは何も悪くないし、謝る必要もない。大切なものは全部手にしていいんだ。僕達もついている。何かを犠牲にする必要なんてないよ。もっとワガママに、守りたい人も家族の絆も全部欲しがっていいんだよ。そもそもオ姉さんを見てごらん?ワガママの塊みたいなものじゃないか。ゼロはもっと自由に生きて行っていいんだよ。」

「ぐ~て~い~?今から第二回戦、殺るか?」
ツヲの背後にはオネが立っていた。
「しまった…。また口が滑った…。」
そのままツヲは首根っこをオネに掴まれてズルズルと引っ張られて行った。



「ツヲ兄様、全然変わってない…。」
アールはまだ目に涙が浮かんではいたが、少し微笑みを取り戻していた。

「うん、ツヲ兄ちゃんは本当に変わらない。相変わらず、馬鹿なツヲ兄ちゃん…。」
フォウルもまた引きずられていくツヲを優しい瞳で見つめていた。





(何かを得るためには何かを犠牲にしないといけない、なんていう決まりはどこにもない。僕は無知で、オ姉さんは不器用だったから強さと大切を引き換えてしまった…。だからこそ妹達や飛鳥花ちゃんにはそんな思いは絶対にさせちゃいけないんだ…。)

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この記事へのコメント

2015年08月29日 22:14
緊迫感はありますが、微笑ましい・・・。
ようやく我々のよく知るツヲさんに近付いてきたような。

山田「家族っていいな♪絆っていいな♪家族って、こんなに温かい♪」
佐久間「珍しくテンション高いな。」
山田「こういうシーンが好きなんだ。別に普段も低くないが。」
維澄「ぎくしゃくしてたけど、段々わだまわりが解けていくね。」
八武「となると、そろそろ気になるソルディエル。」
神邪「そうでした。どこかで隙を窺っているのでしょうか?」
維澄「ソルディエルが出てきたら、また飛鳥花のコンプレックスが刺激されそう。」
佐久間「お前はブレないな。」
八武「私も大好きデース!」
山田「どこのペガサスか。」
八武「しかし私は脚派だけどねぃ。はぁ~、すりすり。」
山田「燃えろ。」
八武「萌えている!」
2015年08月29日 23:59
コング「ついにアールと飛鳥花の遭遇!」
火剣「羨望と嫉妬の感情? ヤバイな」
コング「ヤバくない。もっとその感情よ燃えろ、団扇あおごうか」
ゴリーレッド「オネは読心術もできるのか」
火剣「顔の表情を読んだのか。そういえば観察眼は凄い」
コング「胸だけの話をする気はない。美脚美ボディ美乳と三拍子揃ってパーフェクトボディ」
ゴリーレッド「家族との絆を断ち切ってまで」
コング「待て。まだ美乳の話は終わってない」
ゴリーレッド「守りたい人か」
火剣「さすがツヲ兄。話のわかる男」
ゴリーレッド「そんなことで絆は切れない。しかしワガママの塊はまずった」
コング「ぐ~て~い~」
火剣「やるかが、殺るかの漢字になってる」
コング「で、トリプルSの四原則では、貧乳という言葉はNGワード」
火剣「何と紳士な」
コング「①ヒロインを殺さない②女体を傷つけない③18歳未満は犯さない④裸にしたら褒め言葉以外は禁止」
火剣「素晴らしい」
ゴリーレッド「素晴らしくない。始めから犯罪を肯定しているところがダメだ」
火剣「オネと比べたらアイスクリームのように甘い」
ゴリーレッド「比べる相手を間違えている」
コング「おっと、メインは飛鳥花の同行だ。ツヲ博士は連行されたから、今こそ飛鳥花とアールの会話が始まるか」
2015年08月30日 18:43
>アッキーさん
チュルーリ一家のわだかまりが温かさに包まれ少しずつ溶けて、最終的にはひとつになる。この温かさが家族の一つの理想形なのかもしれません。どれだけ絆を断ち切ろうとしても決して離れることはないし、どんな困難が降りかかってきても途切れはしない。それが家族の絆なのかもしれません。アールに向くこの時のツヲさんこそが彼の自然体なのかも。
さて、家族離散の危機は去ったようですが、ソルディエルはどうしているのか。あの時、アールが魔法で助けた訳ですから当然生き残っています。いずれは顔を出すはず。その時にどんな化学反応が起こるのやら。飛鳥花との絡みだけでなく、他の面々ともどんな感じになるのか。もし、ツヲさんがソルディエルに少しでも気があるような態度を取ったら、その時は毒姫飛鳥花の猛毒が火を噴くのかも。
2015年08月30日 18:44
>火剣獣三郎さん
ついに問題の二人の顔合わせ。ただし、感動の再会シーンなので飛鳥花は見ているだけ。しかし、その視線の中には色々な感情が…。アールの体付きは多くの女性が羨ましく思うぐらい豊満で発育がいいのです。飛鳥花は閉じ込められていた反動か、独占欲が強いのでツヲさんの心を揺らそうとする存在を快くは思わない…。ただ、意外と常識や恥じらいなども持っているのでツヲさんの前とかでは突拍子なことはしない、はず…。でも、何かのきっかけで嫉妬の炎が爆発するかも。現在は小さな火種状態か。一応、オネが茶化した(?)ことで火を消したことになったかも。
アールはオネとの絆を断ち切る覚悟で戦いに臨みました。真面目さ故に、その断ち切ったということをツヲやフォウルにも適応して涙を流す。しかし、ツヲ&フォウルの温かい言葉。家族の絆はそんなことでは断ち切れません。ツヲさんの紳士っぷりが遺憾なく発揮されました。しかし、同時に口が滑ってしまい…。
貧乳というのはやはり言葉が悪いですね。胸が小さくても「貧しい」というのは今の感覚で言えば違うという気がします。障害者の「害」というのは「害悪」に通じるから止めてくれということで、障がい者と表記するところが増えているのと似ているかもしれません。
トリプルSの四原則はツヲさんも順守していそう。ただ、オネとの戦いで②に抵触したかも?
さて、アールが気になる飛鳥花はどう出るのか。普通にお話パターンか、それとも火種が大火に…?

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