英雄再来 第十六話 アール2

守らなくちゃ、いけないんだ。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「はあ…!!はあ…!!」
五体の精霊召喚、大・破動弾、極大・破動弾、更には必殺技の破動砲を連続で放ったことでアールは魔力的にも体力的にも一気に疲弊した。母親であるチュルーリの力を受け継いでいるため魔力が切れて死ぬようなことはないがオネやツヲと違って体は基本的に人間寄りであり、当然のことながら体力の限界が存在する。

「どうにか…。」
破動砲でオネをマチネの外まで吹き飛ばしたが、その後どうなったのかを確認するためにアールは息が上がっているのに構わず無理やり頭を起こした。そのアールの眼に飛び込んできたのは遠くで自分の破動砲が粉砕される光景だった。
(嘘…!あれは炎大神霊(ジャグルドーマ)…!まずい…!!)
アールは次にオネがどんな攻撃で来るのか予測出来た。昔、オネとツヲの戦いを散々見てきたアールは、炎大神霊(ジャグルドーマ)の力を知っていた。

「風精霊(シルフィード)!ワタシを運んで!!」
新たに召喚された風精霊は、アールを抱えて空へと舞い上がった。上空へと舞い上がったアールの眼下には、オネによって焼き尽くされたマチネが広がっていた。しかし、全てが焼き尽くされた訳ではなく、周囲の巨大壁は大体が健在で、一部崩壊している部分から先程アールがいたところまでが主に焦土となっていた。他にも上空からでも分かるほどの戦いの痕跡があちこちにあった。まるで道のように溶けて建物がなくなっている部分は本気状態のオネが通った場所。マチネの中枢区画は強力な遠距離攻撃を受けたようで完全に大破していた。
(オ姉様が本気を出した跡があるってことは、隊長は本気のオ姉様とやりやったんだ…。隊長…!)

アールはハチマキをもう一度きつく締め、マチネの壊れた壁の向こうの巨大な炎大神霊(ジャグルドーマ)を睨んだ。炎大神霊(ジャグルドーマ)は両手を自分の前に持ってきて何か球体がそこにあるような構えを取った。そして、そこに光の球体が出現した。
(来るっ!)

『フッ!!』
炎大神霊(ジャグルドーマ)がその球体を吹くと、マチネという国一つを焼きかねない炎の大津波がうねりを上げて飛び出してきた。

同時にアールは両手を構えて呪文を唱えた。
(使い切れ…!体力の最後の最後まで使い切れ…!この一撃で炎大神霊ごと貫いてオ姉様を地平の彼方まで吹き飛ばすんだ!!)

「星々の輝きよ!我が眼前に集いて列陣を成し、森羅万象を貫く光となれ!!破動砲!!!」

全てを貫く光の砲撃と全てを焼き尽くす炎の大津波が真っ向から激突した。

「うあああああああああああ!!!!!」

(貫け!!!!!)

「はあああああああああ!!!!!」

(全てを貫け!!!!!)

「あああああああああ!!!!!」

(出来るはずだ!ワタシなら出来る!!いや、やらなければならない!!!)

「いっけえええええええええ!!!!」

アールの気迫と一念が破動砲の威力を更に上げ、炎の大津波を押し返していく。

「ワタシが守るんだあああああ!!!!」








そして、ついに破動砲は炎の大津波を押し切り、炎大神霊(ジャグルドーマ)を貫いた。
『グオオオオオオオ…!!』
貫かれた炎大神霊(ジャグルドーマ)は叫び声を上げながら霧散していった。










「やっ…た…。」
アールが安堵の声を漏らした時、太陽の光が何かで遮られた。
「あ…?」
逆光の中に立っていたのは宙に浮かぶオネだった。

体の白熱は一旦収まっていたが、周囲には粘土のように形を変える奇っ怪な炎あり、それが巨大な羽根代わりになって空中に浮かんでいた。

「やるじゃん…!」
ニカッと笑って、オネは足を振り上げた。次の瞬間、目にも止まらない速さでオネのかかと落としが炸裂した。その勢いでアールは風精霊ごと地面に叩き付けられた。

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この記事へのコメント

2015年08月04日 19:40
ゴリーレッド「実力はオネが上だろうけど、唯一の勝機は、アールのほうが絶対に勝つしかないということ。自分の負けは即、大恩あるマチネの崩壊」
火剣「でもオネは本気を出せる相手に嬉しそうだ。まさに水を得た、いや、火を得た火の鳥」
コング「火の鳥といえば、若い半裸の母は、息子たちが変な気を起こさないように細心の注意を払って」
ゴリーレッド「火とダンスしたいか?」
コング「待て」
火剣「破動砲と炎大神霊」
コング「アールの体は人間よりなのか? ぐひひひ」
ゴリーレッド「貴様」
火剣「まさかのかかと落としという直接的な肉弾戦」
ゴリーレッド「そうなると断然アールが不利だ」
コング「行けオネ! 逆エビ固めで『参ったか?』キャメルクラッチで『降参するなら命までは取らないよどうする?』」
ゴリーレッド「脅迫マニアか」
火剣「オネはバトルを楽しんでいる」
ゴリーレッド「アールは肉弾戦はどうなんだ?」
コング「オネの威圧感に気圧されるさ、うひひひ」
2015年08月04日 22:35
やはり完全召喚ではないジャグルドーマ、何とか倒しましたが・・・。
>「やっ…た…。」
>「やるじゃん…!」
もちろん当然の流れですよね!

山田「ジャグルドーマさえも、オネにとっては大技の1つに過ぎないのか・・・。本気であっても、まだ全力ではない。」
佐久間「しかし思ったより動けてるな。ゼロも流石と言うべきか。」
八武「恐怖に怯え震えていた小鹿ちゃんが、今やいっぱしの虎だ。」
維澄「それでもオネには敵わないか。ベースからして違うからね。」
神邪「では、人の体を捨てる方向で?」
佐久間「孫悟空も死んでたときの方が超サイヤ人3の変身で消耗しなかったしな。」
山田「しかし、それではジェゼナの考え方に反することになる。それで勝てたとして、ゼロ自身がどうなるかは・・・。」
維澄「肉体が人ならざるものになれば、意識も人でなしになるかもしれないね。」
佐久間「まあ、まず勝つのが無理なんだが。」
山田「善戦してると言ってなかったか?」
佐久間「言ったけど、オネからすれば、小学生の子供がテストで良い点を取った親の気分に過ぎない。」
山田「何てわかりやすい喩え。わかりやすく絶望させられる。」
佐久間「でもまあ確かに、ゴリーレッドの言う通り、オネにはゼロほどには勝利を渇望する理由が無いんだなァ。」
神邪「この状況がひっくり返るとすれば、そのあたりがポイントになってきますか。」
佐久間「うーん、案外ツヲたちが来て有耶無耶になる気もする。」
2015年08月05日 10:00
>火剣獣三郎さん
実力では差があっても、戦いにおいてそれが全てではなく、気持ちの持ちようで勝敗が変わることもあります。今のアールのモチベーションの高さはオネより低いことはないでしょう。この必死さがオネを倒すための鍵の一つか。一方のオネは、そうして必死でかかってくるアールだからこそ、出し惜しみなく本気を出してくる。炎大神霊(ジャグルドーマ)召喚に使ったエネルギーもいずれ回復するでしょう。この化け物「火の鳥」をどう攻略すればいいのか。
そして、魔法大戦の次は直接的な肉弾戦。オネの大好きな戦い方ですね。ただでさえ馬鹿力なオネがプロレス技まで使えたらもう鬼に金棒、勝ち目がないか…?使えるかどうかは分かりませんが。大概の魔法使いは肉弾戦を苦手としていますが、アールはどうか。
2015年08月05日 10:01
>アッキーさん
普通、大神霊を召喚出来るとなれば最早それは秘奥義。打ち破れば勝ちが見えてくるはずなのにオネにとっては大技の一つに過ぎません、こりゃ酷い。炎大神霊を倒すよりもよっぽど難しいオネが直接向かってきました。アールはもういっぱいいっぱいだけれどもオネにはまだ余裕が感じられますね。それでも守りたいという強い想いがアールを強くする。ベースはアールもオネも半精霊、半人間なのですが、オネはチュルーリとの戦いで人間の肉体を失いました。それを補うように精霊部分の傾向が強くなりました。性格はそんなに変わっていないとは思いますが、精霊寄りになったことでより意識は人と離れてしまったか。
魔物を倒すために自らも魔物とならなければならない、というのは大博士の方の考え方ですね。ただ、ジェゼナは人の体を失って王道具に変わっても人の意志を貫き続けた。肉体面では人とは違うものになったけれども、だからこそジェゼナは精神面を大切にしたかったのかもしれません。アールも人の体を失っても人の意志を失わなければ…。
さて、死力を尽くしているけれども、オネからすればアールはまだまだ子どもということなのか。姉として妹の成長を微笑ましく見ているのなら花を持たせてくれてもいいのですが、果たして…。そして、ツヲさんはまだか。

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