英雄再来 第十六話 アール3

反撃開始。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「がはっ!!!」
オネのかかと落としで空中から一気に地面に叩き付けられたアールは、攻撃の衝撃で胃の中の物がひっくり返りそうになった。地面への落下の衝撃は風精霊(シルフィード)が和らげてくれたが、かかと落としの直接的な痛みが尋常ではなかった。

風精霊は自分の主が攻撃されたとあって黙ってはいない。すぐにオネに向かって風の刃を放つ。
「炎(ブラーゼ)。」
オネは風の刃を炎で相殺すると同時に風精霊の横に移動していた。速さが自慢の風精霊がオネの左手に捕まった。
「炎(ブラーゼ)!」
単発魔法一発で風精霊は消滅した。オネの炎は強力過ぎた。

(速っ…!!)
アールが次の行動に移るよりもオネの攻撃の方が速かった。
(嘘っ…!)

次の瞬間に、アールはオネの攻撃で空中に高く蹴り上げられていた。
「ひっ…!!」
アールは全身に痛みが走る中で、両手で頭を守った。次の瞬間、頭に鉄の塊でもぶつけられたような激しい衝撃が襲ってきた。後から跳び上がったオネのかかと落としが再びアールを襲ったのだ。

身体能力からして既に桁違いの差が存在していることを、この僅かな時間でアールは嫌というほど思い知った。オネとツヲの戦いを見ている限りでは分からなかった自分との圧倒的な差。再び地面に叩き付けられたアールはその差を噛み締める時間もなかった。上空から粘土のような炎が何発も何発も雨のように落ちてきていたのだから。

「きゃあああああああ!!!」

爆発音と共に火柱が上がる。何度も何度も爆発し、何度も何度も火柱が上がり、その一帯は地面すらも粉々になった。爆煙が晴れた時、アールは地面に倒れ、意識を失いかけていた。そのアールの頭をオネは掴んで持ち上げた。

「おいおい、寝るにはまだ早いだろお…!」
オネの身長は小学生程度、一方のアールの身長は大人と同じ。子どもが大人を掴んで投げ飛ばしているかのような異様な光景だった。

「まだ、あるんだろう?」
上空に放り投げられ、落ちてくるアールに向かってオネは拳を作った。オネの周囲にある粘土のような炎が拳に集まり巨大な腕を作り出す。その巨大な拳でオネは落ちてきたアールを思いっきり殴り飛ばした。アールはまるで野球の球のように飛ばされた。

「私に戦いを挑んだんだ!まだ頑張れるだろ!?もっとだ!もっと私を楽しませろ!立ち上がれ!攻撃してこい!炎大神霊(ジャグルドーマ)を倒すなんて大したものじゃないか!いつの間にここまで成長したのか!ワクワクする!血湧き肉踊るとはこのことだ!もっとだ!もっと、もっと、もっと!!」
オネは興奮しながら、殴り飛ばしたアールが落ちた方へと走っていく。


「おっ!」

アールが立っていた。体中ズタボロで、口から血を流して、呼吸が荒くて足元がおぼつかない状態だが、その場に立っていてまだ戦う意志があるように見えた。

「かかかっ!」
オネはそんなアールを見るなり殴りかかった。



一方のアールは目の焦点がぼやけながら、夢心地のような気分で立っていた。
(ああ…。オ姉様が向かってくる…。避けなきゃ…。でも、速過ぎる…。ワタシとオ姉様にはここまでの差があったんだ…。でも…。負けたくない…。守りたい…。守りたいんだ…。皆がいたマチネを…。せめて隊長だけでも…。隊長は結界の中にいるから多少のことは大丈夫だけれど、オ姉様が本気で壊しにかかったらあっと言う間に壊される…。どうしたら守れる…?どうしたら、勝てる…?)



立っているのがやっとの状態のアールにオネの渾身の一撃が放たれる。

(ああ…確か…。)

それをアールは紙一重で交わし、無防備になったオネの後頭部に肘打ちを食らわせた。

「がっ…!」
オネはそのまま勢い余ってブッ飛んだ。

(ツヲ兄様は、こんな感じで交わしてた…。)

アールの瞳は真っ白に変化していた。

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この記事へのコメント

2015年08月05日 23:18
やはり力の差は歴然としている・・・これはもう駄目かと思いきや、学習の成果?
ゼロは、全ての属性を備えているはずですが、それだけではなく格闘も学んでいたか。

佐久間「お・・・?」
山田「反撃か・・・いや・・・」
八武「まだわからないねぃ。」
佐久間「オネが一発もらうとはなァ。」
維澄「やはりモチベーションの違いは集中力に反映するね。」
神邪「真っ白な目・・・これはツヲさんも・・・」
山田「もういっぱいいっぱいだと思いきや、本当にまだ先があるとはな。」
佐久間「オネは常に正しい。」
山田「それは違うが。」
佐久間「ホームランも爆笑した。」
山田「不謹慎だ。」
佐久間「何を言う。戦いを楽しもうではないか! 戦って、戦って、タタカッテエ!!」
山田「誰だよお前は!」
2015年08月06日 09:49
>アッキーさん
力の差は歴然としている中でアールは細々とですが希望を繋いでいきます。常に全力で、自分の全てを出し切る。アールは追い詰められて力を発揮するタイプのようですね。その発揮される力は今までの努力の集大成。全属性が使えても、それぞれの属性では兄姉の方がエキスパート。ならばアールの強みはというと手数が多いことでしょうか。ここにきてカウンターの要領でオネに一発当てました。ここから反撃なるか。
そして、アールの瞳が白くなる時、何が起こるのかというと…。オネの圧勝かと思いきや、まだ戦いは続きそうです。戦いの果てに勝つのはどちらか。

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