英雄再来 第十八話 再会12

貴重な昼食。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

アールは一度建物の中に入って、肉切り包丁と皿を持って帰って来た。
「今、切り分けますね。」

そう言って建物の外にある物体に近付いていくアール。その時、飛鳥花はそこにあるのが巨大な生物の死体であることに気が付いた。
(そうか…。さっき、オネの奴がどこから骨付き肉を出してきたかと思ったら…。というか、さっきから焼けた肉のいい匂いが漂っていたのはこのせいだったか…。こんな巨大な生物がいるなんて、外はやっぱ広いなあ…。)

「本日の料理は竜の骨付き肉の丸焼きになります。」

アールの言葉を聞いて、飛鳥花は目を丸くした。
「竜…?それが、竜!?」
御伽噺の中でしか存在しないはずの伝説の生き物、竜。死体であっても、その実物が目の前にあるというのは大変な驚きであった。恐らく、どんな美食家であっても竜の肉を食べた者はいないだろう。
飛鳥花は、牢に閉じ込められる以前は普通の子どもとして周りも家族も接してくれていて、そんな僅かな幸せの時間の中で母親が読んでくれた竜の出てくる御伽噺のことを思い出していた。

「オ姉様がどこぞで仕留めてきたそうです。」

「…そういや、そんなこと言ってたような…。」
よくよく見ると、竜の体はそれなりに食べられていて骨だけになっているところも多かった。瞬間的に飛鳥花の脳裏にオネが竜を倒した後、肉を貪り食った姿が浮かんだ。
(う~ん、あいつなら竜にも勝っちまうだろうなあ…。会ってすぐだが何故だか確信してしまう…。)

「フォウルお姉様はお肉にいたしますか?それとも今日は土にしておきますか?」

「飛鳥花と同じ物が食べたいから、お肉をお願い。」

「かしこまりました。」
アールはニコッと笑ってお辞儀をし、慣れた手つきで骨付き肉をもう一つ切り落とした。その動きは熟練の侍女に近いものがあった。

(いい動き。ドジっ子だったゼロも成長したのね…。あ、今はアールか…。)
そんなアールの姿をフォウルは姉の目で見つめていた。妹の成長がまるで自分のことのように嬉しくて、フォウルは微笑んでいた。

「アールも、一緒に食べよう?」
「そうだぜ。食おうぜ。」

フォウルと飛鳥花の誘いに、アールは一瞬ビクッとしてから少し目を伏せた。
「も、申し訳ありません…。ワタシはさっき食べたばっかりなので…。」

「そうか…。」
飛鳥花は残念そうに呟いた。

「ワ、ワタシのことはいいので、たくさん食べてください。おかわりもたくさんありますし。焼きはしましたが、早く食べないと傷んでしまうので遠慮しないでくださいね。」
アールは少し作ったような笑顔を見せた。

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この記事へのコメント

2015年09月21日 17:38
火剣「竜の血は不死身や不老不死になると言われていた。そんな昔話があったな」
コング「♪ぼーやー、良い子だねんねしなっ」
ゴリーレッド「アールは何かを隠しているな」
コング「子どもじゃないんだ。秘密の二つや三つあってこそ大人だ」
ゴリーレッド「そういう話ではなくて」
火剣「様子がおかしい。食べることができないとか」
コング「アールの正体はドラゴン?」
ゴリーレッド「そういう話ではなくて」
火剣「それじゃホントにまんが日本昔ばなしのノリになってしまう」
コング「ダイエット中とか?」
ゴリーレッド「まじめに考えなさい」
火剣「魔法使いも病気はするのか」
ゴリーレッド「オネと関係あるか」
コング「食べたら泣かすと脅されてるとか」
火剣「そんなことは言わないだろうオネは」
ゴリーレッド「ビクッとするということは、よほどの理由だな」
2015年09月21日 22:42
何だか「サスケ」のワンシーンを思い出しましたが、あのときもグルメなシーンだと思ったものでした。
相変わらずアールは元気ないですが・・。

八武「私が元気にしてあげよう。」
山田「お前が出るまでもない。ツヲが何とかしてくれるはずだ。」
佐久間「干し肉も作ろうぜ。」
山田「それは良い。」
維澄「人の逞しさを感じるね。存在は人ではないけれども。」
神邪「このドラゴン、ジェゼナさんって説もありましたね。」
山田「あ・・」
佐久間「カニバリズムはグルメの付加価値でもある。」
山田「おい。」
2015年09月22日 00:15
>火剣獣三郎さん
御伽噺で登場する竜は人間とはかけ離れた存在ではありますが、時に敵対し、時に味方になる。確か、殺した竜の血を浴びて不死身の肉体を手に入れた勇者の話もありましたね。確か一箇所だけ血を浴びてないところがあって、そこが弱点になっていたような…。
さて、アールは何か隠している様子。火剣さん、大正解です。アールはとある事情により竜の肉を食べることが出来ないのです。アールの正体は精霊と人間のハーフなので人外と言われればそうかもしれませんが、オネが竜の肉を遠慮なく食べているので特に躊躇はないはず。年頃の女の子ではありますがダイエットはしていません。病気で食べられないのとは少し違うかもしれませんが、当たらずとも遠からず?オネは食べるなとは言わず、むしろドンドン食えと言うタイプ。さて、アールが食べられない理由とは?
2015年09月22日 00:15
>アッキーさん
ひょっとしてマンモスの肉を食べたシーンのことでしょうか。確かに今現在では食べられない超貴重な食材ですね。私なんか肉を食べれば元気も出てくるのですが、今のアールは中々元気ないですね…。こんな元気のないアールは見ていられないとばかりにツヲさんが何かしでかしてくれることを期待しておきましょう。
竜の肉の大半はオネが食べましたが、それでも余り気味。干し肉にして保存食にするのがベストか。しかし、この竜の元々は…?アールも気が付いていないようですが…。知らぬが仏か…。

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