英雄再来 第十八話 再会13

懐かしさを噛み締めるように。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「いかがですか。フォウルお姉様。」
アールは竜の肉を切り分け、フォウルのない腕に代わって食事を口に運ぶ。
「うん、美味しい。」
フォウルは微笑んだ。

「でも…。」
「でも?」
フォウルの微笑みはそのまま苦笑いに変わった。
「今はもう、一人でも食べられるけど…。」

フォウルには両腕がない。腕がないということが日常生活を営むためにどれだけ不便かは想像するだけでも分かると思われる。物を掴むのも、扉を開けたり閉めたりするのも、食べ物を食べるのも、服を縫うのも、誰かと手を繋ぐのも、両手がなければ困難なことばかり。口や足でどうにか出来ることもあるが、手があればすぐに出来るようなことも口や足では時間がかかったりする。しかし、今現在フォウルは魔法で土を動かして練り上げ、腕と同じ機能を果たせる土の義手を作り出すことが出来るので特に介助が必要という訳ではない。

「いえ!ワタシがフォウルお姉様の両腕の代わりをするという約束に変わりはありません!」
フォウルは土の腕を使い始めた頃、細かい作業が出来ず、食事をひっくり返したり、服を着ようとして破いたり、扉を開けようとして壊してしまうなんてこともあった。その時に常にそばにいて介助していたのがアールだった。ちなみに最初に介助を申し出たツヲはフォウルが断っている。

「うん、まあ、そうねえ…。」
真面目であるが故に一部では頑固でもあるアールを見て、フォウルは苦笑いと共にどこか安心していた。久々の再会の時にゼロからアールへと名前すら変わっていたのには内心驚き戸惑っていたが、根底は自分のよく知るゼロであることを確かめられてホッとしていた。
また、その笑いには照れも含まれていた。飛鳥花の見ている前で妹に世話をされる自分というのは少し恥ずかしい気がしていた。ただ、元々人形にように感情が顔に出にくい性格なので、表面上は何でもないように取り繕っていた。

一方の飛鳥花は目の見えないツヲの手を引くのと同じように、腕のないフォウルにアールが介助することに何の違和感も覚えてないようで、特にフォウルの微かな表情の変化には気付いてはいなかった。



そんな時、ツヲが戻ってきた。少し後ろの方にオネの姿も見える。
「ツヲ兄ちゃん、お帰り。早かったね。」
フォウルはそう声をかけてから気が付いた。ツヲの表情が真剣味を帯びていて、早足になってこちらに来ていることに。
(また変なことを考えていそう…。)


「ゼロ。」

「ツヲ兄様。どうしました?」

次の瞬間、ツヲの口からとんでもない言葉が飛び出した。

「早速で済まないんだが服を脱いでくれ!」

「ええええええ!?」

次の瞬間、拳の形をした巨大なフォウルの土神霊がツヲを殴り飛ばした。
「グヘエエエエエエ!!」

「ツヲ兄ちゃん、頭に蛆でも湧いたの?」
フォウルは人形のような冷たいジト目でツヲを見下ろす。

「ち、違うんだ!」

ツヲが起き上がろうとした瞬間、机を越えての飛鳥花の飛び膝蹴りがツヲに炸裂した。
「グヘエエエエエエ!!」

「お、いい蹴りだ。弩六腑鬼苦(どろっぷきっく)を覚えるのも時間の問題だな。」
そんな光景を見ながらオネは後ろでカラカラと笑っている。

「ツヲおお!!てめえ、ふざけんなよ!こ、殺すぞ!」
飛鳥花は顔を真っ赤にしながら叫んだ。
て言うか裸が見たいなら、あたいにしとけよ…。お、お前さえあれなら、あたいはいつでも…。
って、実の妹の服を脱がそうったあ、どういう了見だあ!?

「そ、そうじゃないんだ!いや、まあ女性の裸に興味があるかないかで言えば興味津々だけど、それとこれとは別なんだ!」

「ああ!?」

飛鳥花がツヲの胸倉を掴んで引き上げた時、アールが叫んだ。

「わ、分かりました!ツヲ兄様!」
アールは自分の服に手をかけた。
「ツヲ兄様が言うのなら…。」

「ちょ!ちょっと!?」

戸惑いの声を上げるフォウルに構わずアールは服の留め具や紐を外していった。

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この記事へのコメント

2015年09月22日 20:52
コング「何ぬねのはひふへほそれにつけてもおやつはカール!」
ゴリーレッド「反応し過ぎだ」
コング「中秋の名月のおやつはアール」
ゴリーレッド「ドロップキック!」
コング「待てえええ!」
火剣「ツヲ兄は言う順番を間違えているか、あるいはわざとか」
ゴリーレッド「わざとだろう」
コング「アールの生まれたままの姿を見たいというファンは全国に星の数ほどいる」
火剣「食べられない理由と関係あるのか?」
ゴリーレッド「たぶん」
コング「特筆すべきはツヲ紳士がエンターティナーということだ。普通のシーンをいかにスリリングにエキサイティングにするかに心を砕く娯楽の天才」
ゴリーレッド「頭を砕いてあげようか」
コング「なぜそうなる」
火剣「まさかアールは本当に一糸まとわぬ姿になる気か」
ゴリーレッド「飛鳥花が許さない」
コング「飛鳥花も勘違いしてスッポンポンになろうとしてなかったか」
火剣「どうなる?」
コング「質問攻めでアールを丸裸にしよう」
ゴリーレッド「もちろん比喩だな」
コング「秘湯(秘薬入り湯)」
2015年09月22日 22:13
淡々としたシーンが続いている・・・と油断していれば、ツヲさんの爆弾発言!
アールは重傷を負っているのか、あるいは?

佐久間「重傷というより後遺症かな。」
山田「そうか、禁術を使ったせいで?」
八武「もしものときの為に、私も間近でスタンバイさせてもらおう。なに、恥ずかしがることはない。私は医者だ。」
神邪「ぶれない!」
維澄「人間性はブレてる気がする。」
佐久間「お前が言うか?」
維澄「私は常に私だよ。」
佐久間「・・・。」
八武「妹だろうと美女であれば、服を脱がしたくなる気持ちはわかる。だが、飛鳥花も美少女だ、わかるね?」
山田「だから、やましい気持ちではないと。」
佐久間「やましい気持ちもあるだろ。」
八武「やらしい気持ちもあるよ!」
2015年09月23日 23:21
>火剣獣三郎さん
まさかの急展開!次回、アールが脱ぐ!?ツヲさんは時々、周りが見えなくなっていることがありますね。普段なら順序よく説明出来ることも、過程をすっ飛ばしていきなり結論から入るから誤解されまくり。わざとなのか、癖なのか、天然なのか…。
アールが生まれた時の姿になれば竜の肉を食べられなかった理由も納得がいくと思います。そう、ツヲさんの目的はアールを健康チェック的ななにかです。決してアールの裸を見たいとか、アールを裸にして恥ずかしそうな顔を見て楽しもうとか、そんなことは一切考えていないはずだと思われる気がします。
思えばツヲさんは本当にエンターテインメントしていますね。サーカスで言えばピエロの役か。というか、平穏なシーンに嵐を巻き起こすトラブルメーカー?
裸になりそうなアールですが、飛鳥花やフォウルが止めるかと思われます。飛鳥花はちょっと混乱していて、危うく自分も脱ぎ出すところでした。というか、ジャンルがジャンルならここで全員が裸になってツヲさんが鼻血を出して倒れるサービス回的な感じになっていたかも。
とにもかくにもアールには色々と聞かなければならないこともあるでしょう。日常パートから会話フェイズへ…。
2015年09月23日 23:22
>アッキーさん
淡々としたシーンに平然と爆弾を投下する作者…もとい、ツヲさん。私という人間は平穏な日常シーンを書いていると、とっとと次の急展開に移行しなければいけないという気持ちが湧き上がるんだと思い知りました。
実はアールが食事を取らなかったことと関係しています。禁忌の代償は決して軽いものではありません。もちろん、人によってはその代償を払っても構わないと考える人もいるかもしれませんが…。
マチネは完全に焼き払われ、医者も病院も医療道具も薬も全て失われました。となると魔法による治療しか残っていないか。しかし、八武さんは常在!ブレることがブレないという場合、ブレているのかいないのか分からなくなる気がする、という言葉のパラドックスは脇に置いておいて、ツヲさんに下心は多分ありません。見えていないので。しかし、そう指摘されるとそっちの方面のことを考えてしまうのが人間というもの。ただ、やましい気持ちがあったらここまで堂々と「脱いでくれ」と言えたかどうか。これが紳士流なのかもしれません。

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