英雄再来 第十九話 新しい国3

期待はあった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「フォウルはどうだい?」
ツヲはフォウルにも話を振った。

「ワタシは…。」
フォウルは少し俯いて言った。
「正直、もう人間には期待したくない。ツヲ兄ちゃん、それにアール。ワタシ達が作った国の結末は覚えてる?」

フォウルにそう言われてアールとツヲの顔から明るさが消えた。
「はい…。」
「…もちろん。」


――――――――――――――――――

真ん中の土地の巨大都市に人々が集まり始めてから時間が急に早くなった。次々に人の数は増え、街は活気付いて、都市は更に大きくなった。増築が何度も行われ、どんどんと広く、大きくなっていった。他の場所に出来た村や町とも交流が出来て、人や物の交流が盛んに行われるようになった。
その間、オネ達は人々から神のように崇められていた。巨大都市を作ったこと、人々を迎え入れた心の広さ、強力な魔法を使えるという事実。それらのことから六人は畏敬と尊敬と感謝の対象として祭り上げられていた。

真ん中の土地の巨大都市は平和を謳歌していた。チュルーリが目覚めるまでは。

ある日、眠っていたチュルーリが目覚めた。目覚めたチュルーリは自分が破壊したはずの『国』が元通りになっていることに驚いた。同時に自分自身が極度の飢餓状態であることにも気が付いた。冬眠することで魔力の温存は出来たが、回復には繋がらなかった。魔力を回復するためには人間を喰う以外に方法はない。チュルーリが目覚めたのは、このまま眠っていては死んでしまうという生存本能からの目覚めであった。
チュルーリは都市に住んでいた人間を喰らった。また、自分に向かって来た者を全て殺した。その騒乱はすぐにオネ達の知るところとなった。そして、母親と子ども達は戦うことになった。
どれだけの時間戦い、どれだけの魔法が使われたのか見当もつかないぐらい辺りが滅茶苦茶に壊れ、人々が散り散りバラバラに逃げた後も長きに渡り繰り広げられた死闘の末に、チュルーリは六人によって真ん中の土地の黒い台座に封印された。
その時に、チュルーリの魔力は四分割されて勾玉となった。後の春、夏、秋、冬の勾玉である。オネ達はチュルーリを封印する代償として、自らもチュルーリの体内に封印されて、チュルーリが二度と目覚めないための要石となった。この時、ゼロだけは封印の仕上げをしたので黒い台座そのものに封印されることになった。

――――――――――――――――――



「ワタシ達は世界からいなくなることを承知で、お母ちゃんと共に封印される道を選んだ。それは、人間に期待したから。後のことを託せると思ったから。あの国での人間の様子を見ていて、かつてお母ちゃんが語った二つの国の争いや英雄ハイジマバイカの心配したようなことにはならないと思ったから。この世界を任せられると思ったから。…でも、駄目だった。」

その時のフォウルの目はドロリと濁っていて、黒水晶のような冷たさが宿っていた。

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この記事へのコメント

2015年10月14日 22:50
ここでもチュルーリ。どうしようもなくチュルーリ。しかしチュルーリは「食べているだけ」という。
もはやチュルーリの位置づけは、自然災害と呼んだ方がいいのかもしれません。平和な社会は、他国からの侵略に備えることはなくとも、自然災害に備える手立ては必要なんですね。

山田「なるほどな。軍備強化を唱えるのは間違っていても、無防備であることは正しくない。」
神邪「自然災害ですか・・。しかし災害が人の形をしていれば、どうなるんでしょうね。僕も闇のゲームで人の魂を食らって生きている存在ですが、存在自体が平和を脅かすとなると、もはや僕に平和を唱える資格があるのかどうか。」
佐久間「以前に神邪が言った通りだ。神邪が苦しみ耐えねばならない世界は、神邪にとって平和ではない。チュルーリが飢え乾いている状態は、まずチュルーリにとって平和でなかった。」
山田「うーむ・・。何らかの対策は打てなかったものか。」
神邪「僕の場合は簡単なんですけどね。みんなが僕に優しくあればいい。ただそれだけで解決する問題なんですが。」
八武「チュルーリもミッドと共にあるときは、人を食らわなくなっていた。食欲より優先したいものはある。」
維澄「教育者が教育されねばならないように、指導者が教育されねばならなかったね。チュルーリの子たちは理想に近い指導者たれていたけれど、それを継げるだけの人間が育っていなかった。肉体構造の違いからも、同じだけのバイタリティは持てなかっただろうし、フォウルの言葉は重いね。」
2015年10月15日 10:50
火剣「毒と薬は紙一重か」
ゴリーレッド「毒を薬に変えることもできるのが人間の英知」
コング「アールの力説に賛同するフェミニンツヲ」
ゴリーレッド「飛鳥花も賛同か」
火剣「今までは死ぬか生きるかの戦争だった。国作りは張り合いのある仕事だし、自分が役に立つ喜びは格別なものだ」
コング「人間かっと後頭部をはたいたら怒るかな?」
ゴリーレッド「溶かされる」
火剣「フォウルは違う意見か」
コング「チュルーリは確かに凄かった。本物のモンスターだ」
ゴリーレッド「結局最後は心か」
コング「ルックスも大事だ」
ゴリーレッド「そういう話ではない」
火剣「人間には期待しないか」
コング「1から創れば良いのだ理想郷を。みんなが裸で裸足でいられる世の中を」
ゴリーレッド「それはもちろん比喩だな?」
コング「秘湯はもちろん媚薬入り」
ゴリーレッド「バックドロップ!」
コング「ごおおお!」

2015年10月18日 13:35
>アッキーさん
チュルーリは何度、時を超えて我々の前に立ちはだかってくるのか。台風や地震が何度も来るように、チュルーリの影響があちらこちらに現れる。大きな地震の後に大津波が来るように、一回だけでは終わらない。人の形をしていても、その内実は光大神霊。梅花がやったことは自然の力そのものを人の形に押し込めたということなのかもしれません。
チュルーリの恐ろしさは人々によって口伝でも、文献でも伝えられました。カトレーアの時代には、魔物が封印されているので手出しをしてはいけないということが全ての魔法使いの暗黙の了解になっていたほど。その禁忌を破って勾玉に手を出したセンテル国王達は自然災害に飲み込まれてしまった。
どれだけ語り継いでも、何百年先まで守られるか分からない。何千年先まで伝わるか分からない。その戒めを忘れたり蔑ろにしてしまった時、チュルーリは何度でも現れるのかもしれません。
元を正せば無理やり人型になったチュルーリはこの世界で「命」を保つために膨大な魔力が必要でした。梅花の死後、次第に魔力が枯渇し始めたチュルーリが取った行動が人喰いによる魔力回復でした。もし、魔力が切れればチュルーリは精霊界に還るだけ。この世界では死ぬ訳ですが、それは肉体の死のみで、魂、精神は精霊界で「生き」続ける。
もし、チュルーリが自ら精霊界に還る気持ちになっていたか、一時のように人を喰らわずに生きることが出来ていれば共存は出来たかもしれません。しかし、チュルーリが何故人を喰わなくなっていたのか、その謎を解ける者は果たしているのか。
結局、自然災害と化したチュルーリを止めるために今までの指導者であったオネ達が全員、一斉にいなくなった。このような事態をオネ達は想定していなかったし、そもそも半精霊、半不老不死であるので、後継者を育てる必要性もなかった。そのことも、後の悲劇に繋がったのかもしれません。
2015年10月18日 13:35
>火剣獣三郎さん
今ある薬の中にも用法、容量を間違えれば死に至るものはたくさんありますので、本当に紙一重だと思います。元は毒、から作られた薬もたくさんありますし。薬は人間の英知の結晶ですね。私もよくお世話になっています。
アールの平和への願いにまずは賛同者二人。今までの命の取り合いが終わり、これから何かを初めて行くにあたって、実にやりがいのある仕事が舞い込んできました。自分の力が必要とされることは、人間的に何よりも嬉しいことでしょうから。
ところが、フォウルは国作りに反対の様子。今までの失敗から人間に期待をしてもいいものかという躊躇が生まれています。今はもうチュルーリはいませんが、それでも躊躇してしまう。心の中では一から理想郷を作りたいという気持ちもあるのですが、今回の大陸全面戦争においてムーンストーンが非道な方法で殺さえれているのを近くで見ていただけに、人間に対する不信感も一層強くなってしまった。
果たして、フォウルを説得出来るのか。出来なければ、理想郷作りは何歩も後退してしまうでしょう。

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