英雄再来 第十九話 新しい国4

人間を信じることは出来るのか。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

フォウルは濁った目をアールとツヲに向けて、喋り始めた。

「封印されていても少しだけ外のことは分かる。最初はよかった。人間達は再び真ん中の土地に集まり、助け合って国を作り直し、今までと同じ平和な国を取り戻そうとしていた。でも、ワタシ達がいなくなった後、方針を示す者がいなくなった。
だから、仲間の中で魔法が使える者を王として国の方針を決めてもらう者に祭り上げる制度を作った。最初は、王とそれ以外の人間の間に差はなかった。しかし、何十年、何百年という年月の間に、王は最も強い魔法使いがなる職業となった。そして、王はそれ以外の人間を見下し、こき使う存在へと変貌した。それはお母ちゃんが言っていた二つの国と同じ姿だった…。」



――――――――――――――――――

オネ達六人がいなくなってからの数百年の間に真ん中の国の中だけでも色々なことがあった。同じ国の者同士でも意見が合わず対立し、果ては殺し合いに発展することもあった。
真ん中の国から離れていく人々も現れた。何百、何千もの人々が再び流浪の民となって世界のどこかに安寧の地を求めて旅立った。その時にチュルーリの魔力を四分割した四つの勾玉も持ち出された。
年月が過ぎ、その時の国の王は真ん中の国の土地だけではなく、他の場所も支配したいと思った。真ん中の国は各地の国に戦を仕掛け、また各地の国も隙あらば豊かな真ん中の土地を奪おうと戦を仕掛けて来た。そんなことがまた何百年も続いた。
ある時、真ん中の国はセンテルという国だった。その国王は妻を溺愛していた。その妻の名はアリスといい、おっとりした性格で戦などを好まなかった。そのためセンテル国王は歴代の王の中では内政に力を入れて、軍備も専ら防衛軍備の方面を整えるばかりで積極的に他の国に攻めようとはせず、人々からは賢王との呼び声もあった。
アリスとの間に二人の子どももいて、その二人共が将来有望な魔法使いであった。センテルの将来は明るいもののように見えていた。
しかし、アリスが三人目の子どもを産む時に死んでしまったことから歯車が狂い始めた。国王はアリスを魔法で蘇らせようとして、人が変わったかのように魔法研究に没頭した。その過程でいくつもの禁忌に手を染め、死者蘇生の魔法の研究も行った。
その結果、センテル国王は死者蘇生の秘術を知る魔法使いである【英雄の子孫】チュルーリの存在に辿り着き、その封印を解くために四つの勾玉を得るために大陸四方向の各国に対して戦の準備を始めた。それは大陸全土を巻き込んだ戦へと発展した。

――――――――――――――――――



「人間は結局、お互いに争い、殺しあった挙句、ワタシ達が死力を尽くして封印したお母ちゃんを無理やり起こして、再び世界を破滅へと進めようとした。結局、人間は何も学ばなかった。託したものを受け取った人間はいたことは認めるけれど、その次の人間がそれを受け取らなかった…。」

フォウルはガリリと岩を噛み千切ったような歯軋りをした。

「正直、お母ちゃんを好き好んで封印した訳じゃない…。封印することが人間にとっても、お母ちゃんにとっても最良の選択だと思ったから。でも、人間はその思いを子々孫々までは伝えられなかった。蘇ったお母ちゃんは殺され…!そして、ワタシ達は宝玉という半封印状態の形でこの世界に戻ってきた…。
その後、少しの間…カトレーアが生きている間はマシだったと思う。大陸全土を巻き込んだ戦と世界の破滅の危機から、人間は平和の大切さを学んだ。その筆頭にいたカトレーアは平和を呼びかけ、国を作った。家族同士で殺し合うことになってしまった過去を振り返り、二度とそのようなことが起こらないような国を、世界を作ると誓っていた…。でも、問題はカトレーアが死んでしばらくしてから。」

フォウルの目は薄暗い光を放っていた。

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この記事へのコメント

2015年10月18日 20:00
ゴリーレッド「悲しき権力の魔性。最初は純粋に『国を治める』という発想が、段々と自分が偉くなったと勘違いし、『支配する』に変わっていく。これは誰もが命の中に持っている『権力の魔性』という怪物が暴れ出るんだ」
火剣「民を愛していたのが、民を支配し、さらに他国をも支配したい願望に負ける」
コング「好きな女の身も心も支配したいという支配欲はどうにも止められない」
ゴリーレッド「話をそらすな」
コング「そらしてない。まあ、相手が仰け反るほど愛することは大事だが」
ゴリーレッド「延髄斬り!」
コング「NO!」
火剣「センテルは民や国よりアリスに夢中になってしまった。国王としては失格だ」
ゴリーレッド「溺愛の末戦争か。厳しくいえば指導者の器ではなかったか」
コング「厳しい!」
火剣「カトレーアが生きていた時は良かったが、没後ダメになる。継続の難しさだ」
ゴリーレッド「指導者は自分が健在のうちに次の後継者をつくらないといけない」
火剣「目の黒いうちに磐石な継続の基盤をつくるのか」
コング「アリス以上の美女を連れてくる腹心がいなかった」
ゴリーレッド「そういう問題ではない」
2015年10月18日 23:23
語られる「Engagement Ring」の頃。焦点部分の詳細は物語で読んできましたが、フォウルのは前後も含めて語られる、“歴史”という感じがします。あらためて、カトレーアも“歴史上の人物”になったんだなァと。
カトレーアの死後、どうなっていったのか。その経緯には注目ですね。

佐久間「甘いもの好きのカトレーアが、歴史ではシリアスな指導者か。」
山田「言わないでおいてあげて。」
佐久間「いや、そういうコミカルな一面も語られていたら、また違ったかもしれないと思うとな。」
山田「ああ・・・。偉大すぎると、偶像崇拝とか、そういう方向に行くわけか。」
佐久間「まあ、凄惨な経験をしてきたカトレーアとしては、シリアスな指導者にならざるを得なかったとも言えるが。」
山田「うーむ。」
佐久間「堅物ではなかったと思うけどね。」
山田「それはそうだろうな。カトレーアが生きていた間は、まだしも安泰だったわけだし。」
佐久間「カトレーアは、後継者を育てることは出来たかもしれない。後継者を育てられる指導者はいる。だが、後継者を育てられる後継者を育てられる指導者は、なかなかいない。」
山田「そういうことなのか。」
佐久間「次回を待とう。」
2015年10月20日 20:55
>火剣獣三郎さん
歴代、様々な者が真ん中の国の王となりましたが、過ぎたる力はその身を侵食するようです。最初は良くても後々、先代より苦労せずに王となった者は、自分が偉いのだと勘違いして大切なことを見落としてしまう。それが何代も続き、ついには傲慢な王ばかりが支配する時代へと突入しました。そして、再び互いの土地を巡り戦が始まってしまった…。支配したいという欲望はどんどん膨れ上がり、誰も止められなかった。
センテル国王も一時は賢王と呼ばれることもありましたが、それは民のためのではなくアリスのためでした。優しいアリスの意見を聞いている間は戦に傾くことはなかったのですが、アリスの死後は逆に…。
アリスはこの頃の王や貴族の中では特に珍しく『十分』という思想を持っていました。人が生きていくためには、これだけあれば『十分』であることを知っていた彼女は、必要以上に贅沢することもなく、必要以上に求めることもなかった。なので、戦までして他人の領土や物を奪うことに反対していました。また、彼女は本当の意味でセンテル国王を愛していました。センテル国王が王であってもなくても、それこそただの鍛冶屋であってもパン屋であっても靴磨き職人であっても妻となっていたでしょう。しかし、それ以外の近くの女性といえば、センテル国王が王であるから近寄ってくるのであって、彼が王でなければ多くは付き合ってすらいなかったでしょう。
2015年10月20日 20:55
センテル国王はアリスに愛されていました。その与えられた愛を、彼女に十分に与え返す前に彼女に死なれてしまった。アリスを蘇らせようとしたのはセンテル国王の歪んだ愛の形だった。しかし、やはりそれは王としてはやってはいけなかった。
また、カトレーアの方も彼女が目を光らせている間はよかったし、人々もチュルーリの恐怖を見せつけられて危機感を覚えていた。また長きに渡る戦によって厭戦のムードがあったのもカトレーアの唱える平和な世界の実現を後押ししました。しかし、それを次の世代、更に次の世代、その更に次の世代へと全ての人々に色濃く伝えることが出来なかった。継続の難しさ、それは人間の寿命と表裏一体の問題なのかもしれません。
2015年10月20日 20:55
>アッキーさん
「Engagement ring」を後の世界から語るとこんな感じ。その物語の中にいた時とはまた別の趣がありますね。あの頃の登場人物も今や全員が歴史上の人物となりました。少女の後のカトレーアの活躍とその死後のこともフォウルが語る予定です。
かつては夢見る少女だったカトレーアですが、家族同士で殺し合うという経験から色々と変化し、大魔法使いへと成長しました。いつまでも少女のままではいられない。いつかは大人になる。その時にどんな大人に成長するのかはどんな幼少期、少年少女時代を過ごすかによって変わってくるでしょう。ちなみに、甘いもの好きは往年になっても変わらなかったそうですよ。カトレーアのそういった一面は、ハデスは喋りそうにありませんが、筒姫辺りは結構喋ったかも?それでも、功績が偉大過ぎて後年に偶像崇拝的な行き過ぎた尊敬に繋がることは確実かもしれません。
とにかく、家族同士が殺し合うなどという悲劇が二度と起こらないような平和な世界を築くためにカトレーアはシリアスな指導者へと変わりました。その目の黒い内はまだ世界に平和が訪れていましたが、それも数十年、数百年先になるとどうなっていくのか。後継者を育てること自体簡単ではありませんが、その更なる未来を見据えた後継者作りが出来るかどうか。それが百年、千年先まで通じる世界作りに必要なことなのかもしれません。

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