英雄再来 第二十話 オネの暇潰し2

オネの主張。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

壁の中にあった空洞へとオネは一歩踏み込んだ。それだけで視界は先ほどまで太陽の下の光溢れる世界から全てを拒むような薄暗い世界へと変わった。
壁の中の空洞には光を取り込むような窓がなかった。その存在を隠すために外部との接触を極力避けるための工夫だったのだろう。その代わり、オネが上を見ると、そこには蝋燭と燭台があった。

「炎(ブラーゼ)。」

オネは極々小さな炎を出して蝋燭に火を点けた。すると、少しだけ空洞の中が明るくなった。その蝋燭のほのかな明かりが照らし出したのは暗闇の中に眠っていた数々の本と本棚であった。

「書庫…?」
フォウルも中を覗き込んだ。

「のようだな…。」
オネは真実の眼を使って白くなった瞳をギョロリと動かし、全体を把握した。
「敵はいないな…。」
オネは軽くため息を吐いた。

「まあ、当然か。私が一歩足を踏み入れた段階で何も起こらなかったのだからな。…しかし、ここは火を欲しているな。」
肌で部屋の中の空気を感じればここが非常に乾燥していることが分かる。蝋燭が倒れれば即座に燃え広がりそうだった。

「止めて。」

「やらんよ。」
オネは二、三歩、部屋の中に踏み込んだ。
「私に歯向かう意思があるなら誰であっても、どんな状態であっても戦おう。例え一秒で終わる戦いだったとしても、だ。だが、ここには私へ戦いを挑む者の意思を感じられない。それじゃあ、戦ってもつまらないじゃないか。」


フォウルはため息を吐いた。
「もう、オ姉ちゃんを満足させられるような戦いが出来る人なんていないよ…。オ姉ちゃんより強い人なんて…。」

「いたさ。かかかっ。」

フォウルの脳裏には瞬間的に母親のチュルーリの姿が浮かんだ。兄姉妹六人がかりでやっと封印することが出来た自分の母親の顔。あの時の戦いは生き残ることに必死で、チュルーリがどんな表情をしていたのか、自分がどんな戦いをしたのか、それすらもほとんど思い出せないでいた。
「…お母ちゃんはもういない。今はオ姉ちゃんが一番でしょ。」

「いや、世界は広い。まだ、どこかに私より強い者がいるかもしれないし、これから出て来るかもしれん。それに例えば太陽が私に反逆する意思を持ったら、殺すのには骨が折れそうだ。まあ、かなり楽しめるだろうがな。かかかっ。」

「オ姉ちゃんなら本当に出来そう…。」

「かかかっ。それに、問題は勝ち負けじゃない。戦う意思だ。この前のタイチョーとの戦いも、アールとの戦いも私が勝ったが、満足する戦いだったぞ。」


「結局はオ姉ちゃんが勝つんでしょ?」

フォウルの問いにオネは不気味に笑った。
「当たり前だ。私は戦って戦って戦って勝って勝って勝ち続けたいんだ。死んだらそれ以上戦えないだろう?だから私は絶対に負けない。そのための強さ、そのための力を手に入れたんだ。これからも私は戦う。私に勝負を挑む者、私の前に立ちはだかる者、全てに勝って勝って勝ち続ける。そして、証明する。今の私は世界で一番強いんだと、この世界に示し続けてやる…!かかかっ!」

オネの笑い声が隠し部屋の中に響き渡った。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

2016年01月09日 20:34
コング「オネの力量は凄い。魔力というか」
ゴリーレッド「フォウルは心配している。好戦的な姉だから」
火剣「妙な違和感で焦ったが、空洞だったか。オネと戦う意志は感じられないと」
コング「隠し部屋か」
ゴリーレッド「敵はいない」
コング「太陽と戦うのも楽しみって、どんなに好戦的なんだ」
火剣「タイチョーか。ソルディエルもアールもオネには敵わない」
ゴリーレッド「ツヲ紳士も勝てない。やはりオネが最強無敵か」
コング「400戦無敗のヒクソンや、人類60億分の1の男・ヒョードルのような」
火剣「負けない戦士は勝つことしか考えていないという共通点があるな」
ゴリーレッド「さて空洞からは何も出て来ないか?」
2016年01月09日 21:33
オネ名言録に新たな言葉が刻まれる!
「ここは火を欲しているな。」
なんて危険な発言。ダンジョン探索には便利な属性だと思いきや、ダンジョンそのものを壊しかねない。そして、何も無かったということはツヲさんが犠牲に?

佐久間「さよなら、ツヲ。」
山田「まあどうせ死なないけどな。」
神邪「安定の信頼感!」
維澄「オネのセリフは、スラムキングを思い出すね。」
八武「ジャックを探しているのか。」
佐久間「前世では統治にシフトしたが、やはり闘争は面白い。」
神邪「じゃあ僕は逃走しますね。」
佐久間「そう言わずに。」
2016年01月10日 19:05
>火剣獣三郎さん
妹に心配ばかりかける好戦的過ぎる姉のオネ。少しでも目を離すと何をするか分かりません。もっとも、見ていたからと言って止められるかどうかは別問題ですが。暇にさせ過ぎると太陽に喧嘩を売りに行くかも?
さて、フォウル&オネという今までに描かれなかったコンビが早速マチネの隠し部屋を発見しました。しかし、中にオネの求める敵はいませんでした。
結局、ソルディエルもアールも、ツヲさんでさえもオネには敵わない。戦って勝つことしか頭にない、まさに無敵のオネ。オネに勝てる者はもういないのか。
さて、隠し部屋の中身はこれで終わりか…?
2016年01月10日 19:13
>アッキーさん
ここの空気が乾いているということを表現するのに、ここまで物騒な言い方をしなくてもいいと思いますが、オネの感覚ではこれが普通なのかもしれません。洞窟とかでは松明いらずなオネですが、戦闘による崩落の危険性が大いにあるので土魔法専門のフォウルを同行させるべし。
隠し部屋の中に敵がいなかったのでツヲさんピンチか!?でも、それでも、ツヲさんなら、僕らのツヲさんならきっと何とかしてくれる、はず!
一度は弟妹達と共に真ん中の土地に国を形成したオネですが闘争を手放したことは一度もありませんでした。常に何かと戦い続けた。まあ、主にはツヲさんになる訳ですが。ツヲさんは逃走出来るか?

オネ「知らなかったのか?大魔王からは逃れられない。かかかっ。」

この記事へのトラックバック