英雄再来 第二十話 オネの暇潰し6

オネの読書。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

小説『魔王の死んだ日』を読みますか?

⇒【はい】





(こうして手に取って本を読むなど、封印されて以来か…。)

オネはたまたま手に取った小説『魔王の死んだ日』を開いた。

(何々…。その日、魔王が―――――――。)










その日、魔王が勇者に討たれました。その知らせは瞬く間に世界を駆け巡り、人々からは歓喜と勇者への賞賛の声が絶えませんでした。世界は救われた、と皆は口々に言いました。

――――――――――――――――――

この世界は剣と魔法の世界である。この世界は人間と魔物の住む世界である。この世界は夢と冒険が交錯する世界である。

この世界に住んでいる人々は常に魔物と戦ってきた。剣を取り、盾を構え、技を磨き、生き残るために日々研鑽を積んできた。各々が自らの特技を活かし、ある者は戦士として、ある者は武闘家として、ある者は魔法使いとして、ある者は僧侶として大成し、魔物と戦うための職業が確立していた。

そのようにして魔物に対抗しようと力をつけてきている人間だったが、種族としての力は魔物の方が圧倒的に上だった。魔物の種族の中には竜や巨人族、悪魔系などといった強力な者達がいて、大多数の人間は歯が立たなかった。それでも時には人間側に軍配が上がる時がある。そういった者達のことを人々は敬意と感謝を込めて勇者と呼び、称えた。

ある時、魔物達の中から魔王という者が現れた。魔王は魔物のような強い力と、人間のような素晴らしい知恵を持っていた。そして、その力と知恵で勇者達を殺して回った。そして、世界は魔物が大勢を占めるようになった。魔王は恐怖で人々の心を支配し、力で魔物達を支配し、この世界を牛耳る存在となった。

魔王が君臨し、人間は各地で魔物の猛攻に疲弊し、人々は魔王を倒す勇者の出現を願った。そして、その願いを受けて何人もの強者達が魔王討伐に向かった。しかし、今まで魔王を討てた者はいなかった。





ある日、一人の戦士が帰らずの草原へと足を踏み入れた。帰らずの草原は魔王のいる城に行くためには必ず通らなければならない最後の場所であった。帰らずの草原にたどり着くまでに、毒の沼地を越え、竜族の住む谷を突破し、巨人族の砦を打ち破らなければならないが、その戦士はそれらの関門を突破してきていた。しかし、それらの難関を突破出来たのは一人の力ではなかった。

毒の沼地を越えるのに智の師匠であった老魔法使いを失った。激しい炎を吐き出す竜族との戦いで幼馴染の僧侶を失った。山のような巨体を持つ巨人族の砦を突破する時に親友の武闘家を失った。戦士にはもう仲間がいなかった。戦士は一人になっていた。

その戦士が足を踏み入れた帰らずの草原は、毒の沼地のようなおどろおどろしい風景はなく、魔物の根城もなく、ただの普通の広い草原が広がっているだけだった。特に魔物の気配がする訳でもなく、罠が仕掛けられているようなところもない。それが逆にこの場所の恐ろしさを醸し出してることに戦士は気が付いていた。毒の沼地を越えた者はいる。竜族の谷を越えた者もいる。巨人族の砦を破壊した者もいる。しかし、帰らずの草原を突破した者は誰もいない。つまり、ここには今まで以上に恐ろしい何かがあるということを戦士は理解していた。


その戦士の前に一体の魔物が姿を現した。

(出たか。)

戦士は油断なく剣を構えていた。


ところが出現した魔物は随分と小さかった。竜や巨人とは比較にならないぐらい小さく、人間と比べてもまだ小さい青色の魔物だった。人間の両手で持てるぐらいの大きさで、体は餅のように弾力があり、体に比べて大きな目と口がついている。それは、どこにでもいるはずの魔物だった。どこにでもいる代わりに凄く弱く、駆け出しの冒険者でも難なく倒せる、魔物の中でも雑魚の中の雑魚と呼ばれる種族だった。

それでも、戦士は油断なく剣を構えていた。どんな魔物が出てきても斬り伏せる。それが彼の戦い方だった。そもそも、これが罠とも限らない。弱い魔物を出しておいて、背後から攻撃がくるかもしれない。戦士である彼に油断はなかった。全方位、どこからどんな攻撃が来ても対処出来る。それが戦士であった。


戦士が剣を構えて、にじり寄ろうとした時、青い魔物の方が口を開いた。

『ここまで人間よ。一つ訪ねたいことがある。お前達は今まで、数々の魔物を全滅させてきた。そうだな?』

「それがどうした?貴様ら魔物が我々人間の町や村を滅ぼしてきたように、私はお前達魔物を滅ぼす。お前達魔物は今までに、たくさんの人々を殺して来た。平和な町や村を滅ぼしてきた…!そうだろう!」

その魔物は一瞬の間を置いて答えた。

『…そうだ。かつて人間達が私達の住処を襲ったのと同じことをした。だから…。お前を殺して、それでおあいこだ!』

魔物から殺気が噴き出した。それは今まで出会った、どの魔物よりも鋭く戦士に突き刺さった。





【素来魔(スライマ)が 現れた!】





続きを読みますか?

【はい】
【いいえ】

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

面白い

この記事へのコメント

2016年01月31日 21:21
火剣「答えのないテーマだ」
ゴリーレッド「もののけ姫だ」
コング「サンがかわいい」
ゴリーレッド「そういうことではなくて」
火剣「人間は獣に家族を殺されたから復讐する。獣は人間に家族を殺されたから復讐する」
ゴリーレッド「どっちも正義ではないしどちらも悪ではない」
コング「卵と鶏か。人間と魔物とどっちが先に手を出した?」
ゴリーレッド「平行線だろう」
火剣「戦となれば勝つためには冷徹になるしかない。言葉に翻弄されてはいけない。たとえ正論でも」
コング「放送できないから伏せているだけで、きっとツヲ紳士を悪くしたような魔物が女戦士をいたぶり、いけないことをしたのだろう。仲間たちの憤怒は相当なもの」
ゴリーレッド「そんな事実はない」
コング「そうなのか?」
火剣「これは小説か。オネはどう感じているのか興味あるな」
2016年02月01日 22:21
明らかにスライム・・・ではなく、スライマ?
この知性といい、マダンテを使えそうなほどの雰囲気を発しています。

佐久間「魔王は本当で力で魔物たちを支配していたのだろうか。」
山田「力だけではないということか。そもそも誰か魔王の姿を見た人間はいるのか?」
佐久間「集合意思、正体はスライマ、偽装・・。幾つか考えられることはある。討伐者の誰もが勇者と呼ばれるように、魔を率いる者は魔王と呼ばれるという可能性もあるな。」
山田「どことなく、マチネとジュールズを思わせる。この本は誰が書いたんだろう。大博士?」
千花白龍
2016年02月06日 17:54
>火剣獣三郎さん
小説の中にも存在するテーマ、対立する二つの勢力。どちらが正義で、どちらが悪で、何が善なのかと考えることは出来ても答えを出すことは出来ないのかもしれません。立場によって答えは180度変わってしまうから…。
どちらが先に手を出したのかを知っている者は既にどこにもいないし、誰もが「相手が先に手を出した」と思っているでしょう。だからこそ平行線になり、和平や解決の糸口を見出すことが出来ない。自分が悪くないと思っているのに折れる者はいないだろうし、悪いと認めれば待っているのは死と言う名の制裁。勝つために、生き残るためには冷酷に冷徹に徹するしかないのか。
そして、この小説を読んでオネは何を感じているのか。現実でも似たような状況によってマチネとジュールズが争っていた訳ですし、思うところはあるはず。
2016年02月06日 18:09
>アッキーさん
ドラゴンクエストのような世界観の小説がなぜがこの世界に。ハデスがもたらした大量の情報や知識の影響かと思われます。果たしてマダンテを覚えているのか。
数多の魔物達を率いる魔王は力だけで率いたのか、それとも類まれなるカリスマを持っていたのか。魔王の姿を見た者がいるかと言われればおそらくはいないでしょう。見た者は生きて帰ることなど出来ない。魔王と対峙する者の結末は勝利か死か、その二択以外は存在しないのかもしれません。
さて、『魔王』とは単体の魔物なのか、それとも魔物としての総体なのか。それすら闇の中の状況で、戦士は魔物の巣の奥地へと斬り込んでいく。その果てに真実が存在するのかもしれません。この小説の世界の中に勇者の一族というものが存在しないように、魔王もまた単なる称号に過ぎないのか。
現実でも相対する二大勢力が破滅の結末を迎えたばかりで、この小説はまるでそれをモチーフにしているかのよう。もちろん書かれたのは随分前ではありますが、いつかは分からないし、作者名もかすれてしまって読めません。一体誰が書いたのか…。

この記事へのトラックバック