英雄再来 第二十話 オネの暇潰し7

オネの読書その2。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

続きを読みますか?

⇒【はい】






(いよいよ戦闘か。どれどれ――――。)
オネは本の続きをめくった。





【スライマが 現れた!】


先手必勝とばかりに戦士は構えた剣に魔力を込めて切り放つ。


【戦士の 先制攻撃!戦士は しんくうぎりを 放った!】


真空の斬撃と剣の斬撃の両方で攻撃する真空斬りが炸裂した。

スライマは真空の刃をその身に受けながら本命の剣の攻撃を見逃さなかった。なんと剣の刃に噛み付いたのである。真剣白刃取りならぬ、真剣白『歯』取りとでも言うのだろうか。一歩間違えれば真っ二つになっているし、噛む力が足りなくても真っ二つになっている。それだけの危険を犯す必要があったのだろうか。しかし、勝負の世界で相手を倒せるのであるならばどんなに危険を伴っていても効率が悪いということはないだろう。事実、ここのスライマの行動を戦士は予期出来なかった。今まで、どの魔物も使ってこなかった手なのだから。

剣が振り切られ終わった一瞬の間にスライマは咥えた剣を離し、渾身の力を込めて戦士に攻撃を仕掛けた。だが、戦士の反射神経も大したものだった。ほとんど懐に入られているのにも関わらず、素早く後ろに下がって距離を取ると共に片方の手を剣から離し、防御に入った。スライマの攻撃は戦士の片手に防がれた。

瞬間、戦士は竜族の強靭な爪の一撃と同等の衝撃を感じていた。防御体勢でなければ片手が潰されているところだっただろう。僅かな時間の攻防であったが、一瞬でも遅れていれば致命傷は免れない場面だった。この反射神経がなければ戦士は帰らずの草原に来るまでに命を落としていたに違いなかった。

 
【スライマの まぶしいひかり!スライマの 体から まぶしいひかりが ほとばしる!戦士は 目がくらんでしまった!】


そこに間髪入れずにスライマの特技が炸裂した。防御に精一杯だった戦士は眩しい光への対策を取ることが出来ず、視界を封じられた。五感が四感となった戦士の触覚が巨人族の棍棒を受けた時と同じか、それ以上の衝撃を感知した。


【スライマの 痛恨の一撃!】


戦士はまるで木の葉のように宙を舞い、そして地面に叩き付けられ転がった。


既に疑う余地はなかった。このスライマそこが帰らずの草原を帰らずの草原たらしめている根源であることは確定的だった。命の危険を顧みない行動力、相手の懐に入り込んでなお特技を絡めての攻撃を繰り出す抜け目のなさと技術力、そして小さい体ながらも鍛え込まれた攻撃力。単体ならば今までのどの魔物よりも強かった。

だが、戦士とて今までいくつもの修羅場をくぐり抜けてきた。単体で強い魔物、複数で強い魔物、魔法の得意な魔物、奇襲を仕掛けてくる魔物、様々な魔物を相手にしてきた戦士にとってこの状況は、勝利を諦めるような状況では到底なかった。


【戦士は めぐすり草を 使った!戦士の 目が治った!】


しかし、敵が何もせずに待っているはずがない。


【スライマは 『炎の初級魔法(ギ・ラ)』を 唱えた!】


スライマから放たれた線状の炎が戦士に襲い掛かる。


【戦士は 高く飛び上がった!】


重装備の鎧の存在感を感じさせない、鮮やかな跳躍だった。地面を蛇のように這いずる『炎の初級魔法(ギ・ラ)』も、空中にいる者には当たらない。目標を失った『炎の初級魔法(ギ・ラ)』はスライマの制御を離れ、消耗しながら地平の彼方へと消えていった。

その一瞬の間に戦闘は更なる局面を迎えていた。高く飛び上がった戦士はそのままスライマめがけて落ちてくる。当然のことながら手に持った剣を構え、重力を味方に付けたその一撃は竜の鱗すらも貫く攻撃力となっていた。

だが、敵が降って来るのにボサッと待っている者はとうの昔に命を落としている。スライマは次の魔法を使うための詠唱に入っていた。『炎の中級呪文(ベギ・ラマ)』を放つための呪文であった。


【戦士は 魔封じの粉を 投げ付けた!スライマの 魔法は封じられた!

スライマの 『炎の中級呪文(ベギ・ラマ)』!しかし 魔法は封じられている!】


『っ!?しまっ…!』

魔封じの粉は掛かった相手の魔法を少しの間だけ使えなくする道具である。スライマは激しく動揺した。呪文を唱え終わる直前に魔法を封じられた者は、隙だらけであり、防御も回避も出来なかった。


【戦士の 会心の一撃!】


衝撃で地面をえぐるほどの一撃。スライマは弾力のある体を持っているために真っ二つにはならなかったが衝撃で地面に叩き付けられた。その衝撃は留まるところを知らず、スライマはそのまま跳ね返って宙に上げられた。


戦士は見ていた。会心の一撃を喰らわせたスライマがどこに吹き飛んだかを目でしっかりと追っていた。どんな戦いでも敵を見失うことは死に繋がる。敵から目をそらさないことは戦闘の基本である。魔法を封印し、会心の一撃を喰らわせてもなお、戦士は一切の油断もなく、手加減や力の出し惜しみなどしなかった。魔物相手にそんなことをする必要もないし、後々の戦いのことを考えて控えめに戦うことこそ命を落とすことに直結することを彼は今までの旅の中で学んでいた。常に万全で、全力で戦える状態など望むべくもない。ならば、どんな状況であっても、その場での精一杯の力が出せるようにしておかなければならない。さもなくば、自分達よりも能力の高い魔物相手に勝つことなど出来ない。

戦士は跳ね返って、再び地面に落ちてくるスライマに狙いを定めて止めの一撃を放とうとしていた。

だが。

ギョロリ。

瞬間、スライマと目が合った。

【スライマの まぶしいひかり!スライマの 体から まぶしいひかりが ほとばしる!】










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この記事へのコメント

2016年02月07日 12:15
スライマという名前にとどまらず、ギラにベギラマ・・・もう隠すつもりはないですね? ちょっと前に予告されていたドラクエ小説、作中劇で出てくるとは。
ゲームっぽさよりもリアル路線、マンガのドラクエ7を思い出します。(あるいはモンスターズ+)

佐久間「ゲームではコマンド選択するだけだが、実際には激しいバトルが繰り広げられているのだ。」
山田「これがリアルなRPGってやつか。」
佐久間「いや、リアルな“RPG”はゲーム的な法則が支配的だから、リアルな“ファンタジー”と言うべきかな。」
2016年02月07日 21:54
>アッキーさん
はい、もう隠す気があんまりないです(笑)。(ちなみに「かくすき」を変換すると「書く隙」になって笑ったのは秘密。)短編小説のアイデア的なものは不定期に降って湧いてくる感じです。表記はゲーム風にしていますが、実際はリアルタイムな戦闘が繰り広げられている。あのゲームの世界もきっとそんな感じなのではないかと思って書いてみました。プレイヤーの視点と実際にそのゲーム内のキャラの視点はきっと大きく違っているはず。我々にとってのターン制も、彼らにとっては一瞬の判断の後の行動だと思うとなんだか不思議な感じです。

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