英雄再来 第二十一話 ツレエ2

嗚呼…苛々が止まらない…!

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

雷の国の魔法使いを一人残らず殺し、雷の宝玉を手に入れて大陸中央のマチネへと引き上げるはずだった雷の国討伐部隊が何故消息を絶ったのか。彼らは知らなかったのだ、魔法使い達が守っていた雷の宝玉が何であったのかを。



「シン隊長!ついにやりましたね!」
「我らマチネの悲願がついに…!」
「この戦争で死んでいった仲間達も喜んでいることでしょう…!」

生き残ったマチネ軍の兵士達が隊長であるシンにひっきりなしに喜びの言葉を届けていた。

「これで雷の国の悪の魔法使いは全滅だ!」
「きっと他の討伐部隊もジュールズの奴らを駆逐してるぜ!」
「これで戦争は終わりだ!やっと帰れるんだ…!」

兵士達が歓喜の渦の中にいる光景を、シンはいつもの仏頂面で見ていた。そして、おもむろに口を開いた。
「お前達――――。」
その低くも響く声に、マチネの兵士達は即座にシンの方を振り向き、言葉を発するのを止めてシンの次の言葉に耳を傾けた。

「――――本当によくやった。」
シンはそのまま労いの言葉を続けた。
「お前達の力がなければこの戦争を勝ち抜くことは出来なかっただろう。ありがとう。どれだけ言葉を尽くしても言い表すことは出来ないだろう。本当にありがとう…。お前達と共に戦えたこと、魔法使いを一匹残らず討ち滅ぼせたこと、共に生き残り喜びを分かち合えること、本当に感謝している…。」
シンの目には涙が浮かんでいた。シンの悲願、幼子だった自分の故郷を奪った魔法使いについに正義の鉄槌を下すことが出来たと思ったからだ。

「これより我ら雷の国討伐部隊は最大の成果を持ってマチネへと引き上げる!最大の成果とは雷の宝玉ではない、この戦争に勝利したことそのものだ!我々が帰還し、その無事な姿を家族や友人達、そしてマチネ王に見せてこそ最大の成果を届けたと言えよう!これより、マチネへと帰還する!各々準備にかかれ!」

「はっ!!!!!!」
兵士達は一糸乱れぬ声と敬礼をして、帰還の準備に取り掛かった。

マチネへの帰還準備はテキパキと行われた。心なしか軽くなった装備品を身に付ける者達、負傷者や食料を運ぶ者達、そして厳重に保管された雷の宝玉。雷の宝玉自体は手のひらに収まるぐらいの大きさだが鉄で厳重に覆っていった結果、全部を含めると人間の大きさを超えた。


帰還準備が終わった後、雷の国討伐部隊はもう一度整列した。そして隊長のシンを先頭に、巨大な鉄の塊に向かって敬礼した。それは光子力砲と移動要塞の成れの果てだった。

雷の国の大魔法使いトルとの戦いではまだ動いていた光子力砲台だが、その後のジュールズの玉砕戦で完全に大破した。遠距離では最大の力を発揮する光子力砲も近距離の素早く動く相手には不向きだった。マチネ軍の兵士は銃や火器で対抗し、その戦いを勝ち抜いた。

雷の国討伐部隊の戦死者だけでもその数は数え切れないほど。それら全ての死体をマチネに持って帰り弔うことは出来ない。大部分はその場に埋めた。この鉄の塊が墓標代わりだった。敬礼された鉄の塊は戦死者だけでなく、今までに魔法使いに殺された者達の墓標も象徴しているかのようだった。

シンは巨大な墓標に向かって言葉を放った。
「我々は諸君らの犠牲を忘れない!魔法使いに無念にも殺された諸君らを決して忘れない!今はこの地で眠っていて欲しい!いずれ我々はこの地に帰ってこよう!君達を真に弔うために!」

鎮魂の意を示して、マチネは戦場を後にした。既にマチネには勝利の報告と雷の宝玉と共に帰還することは通信していた。この後からマチネは雷の国討伐部隊と連絡が取れなくなる。










嗚呼…苛々する…!
嗚呼…本当に苛々する…!
チュルーリお母(かあ)を封印するためにゼロがあたし達共々封印した世界封印、それを大魔法使いのカトレーアが大陸全土を使った五行封印に引き継いで数百年…。
歴代の大魔法使い共が心も体も壊すぐらい魔力を込め続け、ようやく復活を阻止していたこのあたしを…!こんなたかが魔力も篭らない鉄屑で囲っただけで封印したつもり…!?傲慢にもほどがある…!!

苛々する…!本当に苛々する…!
こんな何も分かっていない連中にトルは負けたのか…!そんな魔法使いに封印されていたかと思うともっと苛々する…!決めた…決めたわ…!こいつらを殺したら次はトルを探し出してなぶり殺す…!死んでいるなら死体をなぶり殺す!そうじゃないと収まらない!!この苛々が止まらない!!

この苛々が止まらないことに苛々する!!苛々を止めようとしてもっと苛々する!!
この苛々を止める方法はたった一つ…!
お前ら ミ ナ ゴ ロ シ だ!!!


雷の国討伐部隊が出発してから少しして、雷の宝玉は厳重な鉄の囲いの中でバチバチと音を立て始めた。

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この記事へのコメント

2016年03月29日 22:58
このイラつき方、スィーモさん思い出したw
もしかして喜怒哀楽怨と対応してるとか?
オネ:喜
ツヲ:楽
ツレエ:怒
フォウル:怨
フィベ:哀
という感じでしょうかね。フォウルは若干違うかな。

山田「トルも標的にされてんのかよ!」
佐久間「チュルーリ一族と魔法使いの関係も様々だな。オネの感覚が普通だと思うが、そうでもないか。」
山田「普通ではない。」
佐久間「苛々を止めようとして更に苛立ちが増すのも、よくあること。」
維澄「あるある。」
神邪「僕の日常です。」
八武「カウントダウンが聞こえてくる。」
2016年03月30日 17:27
>アッキーさん
同じ姉妹なのにそれぞれが基本としている表情がバラバラ。それぞれ我が強いからでしょうか。
オネは言ってしまえばポジティブというか、自分にどんな強敵が来ようが災害・災難が来ようが全て叩き潰すスタンス。どんな困難も喜びに変えられるだけの強さと力を持っています。その分失ったものも少なくはないでしょうが…。
ツヲさんもまたポジティブ方面ですね。ただし、オネと違うのは撃破するのではなく受け止め、受け入れる方面に楽しみを見出していると思われます。ただし、女の子限定。
ツレエは情緒不安定で大体苛々してます。封印されてなかったら別のことで苛々していた可能性が高いです。正当な理由がある場合もありますがない場合もあったり…常に八つ当たりモード。
フォウルは基本的には冷静で、ツヲの暴走を止める突っ込み役。ただし、ムーンストーンの怨霊に取り憑かれていたので若干変化したかも。
フィベは情に厚いですね。でも、人とは種族も違うし寿命も違う。大体の場合、悲しむのはフィベの方になる感じ。悲哀ですね…。
チュルーリ一家は下に行けば行くほど性格がよくなるという不思議な性質がある?チュルーリの性質を先に生まれたオネがたくさん取ったのかもしれません。
2016年03月30日 17:27
情緒不安定なツレエは八つ当たり出来るものには全部当り散らしていくので自分を閉じ込めていたトルも例外ではありません。チュルーリ一家も似ているところは似ていますが、違うところは結構正反対なところもあったりするかも。魔法使いに対しての評価もそうですし、特定の魔法使いに対してか魔法使い総体に対してかでも考え方、向けている想いが違うでしょう。
苛々への対処法は人によって様々。別のことで昇華する人もいれば、苛々の原因と戦う人もいる。暴れてストレス発散する人もいれば、深く考えることで答えを見つけ出そうとする人もいる。頭の中の箱の中に詰め込む人もいれば、吐き出して綺麗さっぱり忘れようとする人もいる。ただ、どの方法もその苛々と向き合う訳ですから、そこには新たな苛立ちが生まれる可能性は高い。負のスパイラルのようですが、何がしかのアクションを起こさなければ最初の苛立ちが残ったまま。苛立ちとどう向き合うか、どう付き合っていくか。永遠の課題ですね。

それでは滅びへのカウントダウン開始…!

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