英雄再来 第二十一話 ツレエ8

嗚呼…ようやく戦える…!

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「雷(スンデル)!」

ツレエは雷撃をスハドゥに向かって放った。

(『速い!だが!』)

スハドゥはその雷(スンデル)を、糸を手繰るように魔力に分解して自身に吸収し始めた。魔法使い相手の技としてこれほど強力なものもそうはないだろう。スハドゥは相手の魔力を分解して自分の魔力に変換するという極めて高度な技術を持っていた。この技術は過魔力によって体を蝕まれ続けたトルが現状打破のために魔力制御方面の修行を行っていたものが大成したものであった。対マチネ戦では使えなかった技術がツレエ相手に活きた。

雷の国の魔法使いは基本的に身体能力向上の魔法に特化している。電気によって体を強制的に動かしたり、電気刺激による筋力強化、脳からの指令を的確にしかも速く伝えるなど、術者本人に様々な影響を与える魔法が多かった。もちろん強力であればあるほど使った後の反動も大きいが、人間の身体能力を限界まで引き出せるのは大きな強みだった。

身体能力を限界まで上げたスハドゥは高速で飛んでくる雷(スンデル)をしっかりと捉え、分解した。もちろん、この相手の魔法の分解と吸収も万能ではない。長らくツレエが封印されている雷の宝玉を使っていたので、その魔力の波長や特徴を知り尽くしていて、自分の魔力に変換しやすいからこそ瞬時に出来る芸当だった。

スハドゥはこのままツレエが撃ってくる魔法を吸収し続けて、マチネ軍相手に使い切った魔力を取り戻そうと考えていた。そして、そのまま相手の魔力切れを狙おうとも思った。



だが、それが甘い考えだとか、無理な相談だとか、そういう考えに変わる暇すらなかった。瞬間、スハドゥは刺し殺されるような殺気に襲われた。

(『ああっ!?』)
気が付けば本能が勝手に体を動かしていた。雷(スンデル)の吸収を解除し、回避行動を取っていたのだ。脊髄反射に近かったためにスハドゥ自身も自分が回避行動を取ったことに驚きを隠せなかった。そして、回避行動をしたために魔力吸収を途中で止めてしまい、分解中だった残りの雷(スンデル)がそのまま襲い掛かってくる。激痛と共にスハドゥの左腕の表面が炭になった。

身体強化によって常人の何倍もの速さで動けて、同じ時間で何倍もの考えを巡らすことが出来るスハドゥの体が、おぞましいほどの殺気によって本能を刺激され、回避行動を取らされた。それによって左手が使えなくなったスハドゥだが、後悔など出来なかった。先ほどまで自分の心臓があった位置にツレエの電撃手刀が鋭い速さで打ち込まれていた。完全に交わし切れずに皮膚が少し裂けたが、心臓を串刺しにされてるよりはよっぽどよかった。

「チッ!」
ツレエは不機嫌に舌打ちをしながらギョロリと目線をスハドゥに向けていた。獲物を狙う狩人の目だった。

(『くそっ!』)
スハドゥはすぐに意識的に距離を取った。だが、ツレエは即座に距離を詰めていた。
(『やべえっ!魔法吸収の弱点がもうバレてる!』)

魔法吸収という技術は超が付くほどの高等技術だが当然弱点もある。中・遠距離の攻撃魔法は吸収出来ても近距離では対応し辛いし、直接攻撃と組み合わせているのなら魔力だけ剥ぎ取るのにも時間がかかるし、剥ぎ取っている間に直接攻撃が決まる。つまり、ツレエの電撃手刀が迫ってくれば交わすしかないのだ。


それからツレエの近距離攻撃の嵐が続いた。電撃手刀に電撃蹴撃、電撃正拳。スハドゥが雷に精通した魔法使いと言えども根本的な部分は人間とさほど変わりはしない。一瞬でも気を抜けば即攻撃を受けて感電死するだろう。

ツレエの攻撃はとにかく鋭かった。しかし、それ以上に殺気が強過ぎて、どこを狙っているのか本能が察知して体か上手く動いてくれていた。ただ、致命傷は避けられているがツレエの攻撃が放たれる度に少しずつ皮膚が削られていった。雷魔法で身体強化をしているスハドゥだが、ツレエの身体能力はそれを凌駕していたのだ。

(『このままじゃジリ貧だぜ…!どうにか反撃に出ないと…!』)

ツレエの攻撃は無駄もなかった。右手の電撃手刀が飛んできたら、次は左手の電撃正拳。それを交わした次の瞬間には電撃中段蹴りと間髪入れず攻撃が飛んでくる。しかし、無駄なく、そして急所ばかりを狙ってくるために攻撃の流れが出来ていた。

スハドゥはその流れを読んでいた。そして、ギリギリ反撃に出られるところを探していた。流れが読めても尚ツレエの攻撃は速過ぎて反撃は難しかった。しかし、このままでは殺される。いずれは魔力も切れるだろう。そうなれば身体強化も出来なくなり、一瞬で死ぬ。今であっても脳内に微弱電流を流して脳内麻薬を分泌させて体の限界を騙し騙ししながら戦っているのだ。それが切れても即死。スハドゥは死中に活を見出すしかなかった。

(『行くしかねえ!ここだ、ここで反撃!』)

スハドゥは一か八かの反撃に出た。

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この記事へのコメント

2016年04月06日 13:58
こいつは辛え戦いだぜ(殴
もとい、凄く高速で戦っているというのが伝わってきます。一歩間違えれば即死、ハラハラさせられますね。

山田「ツレエ戦いだ。」
佐久間「おい。」
山田「すげえ戦い?」
佐久間「それはそうだけど。」
山田「スハドゥは苦しそうだが、ツレエは楽しんでいるみたいだ。」
佐久間「かみなりは吸収できても、かみなりパンチは食らってしまうというのが面白い。」
山田「不謹慎だぞ。」(キリッ
佐久間「お前が言うな!」
山田「戦いは熾烈でも結果は楽観できそうな気がしてな。」
佐久間「よーし、山田の希望を打ち砕けツレエ!」
山田「打ち砕くのではない、痺れるほどにカッコイイ!」
佐久間「チョコボールかっ!」
山田「一か八か・・・何をする気なのか。」
2016年04月08日 01:11
>アッキーさん
どういう訳だかツレエさんの名前がネタにされ始めている(笑)。雷魔法使い同士の戦いなので、起こっている出来事は本当に刹那の出来事です。というか、「英雄再来」になってから魔法使いVS魔法使いをあまり書いていなかった気がします。チュルーリ一家の姉妹喧嘩ぐらいか。
身体能力も魔力もツレエの方が圧倒的に上。スハドゥは首の皮一枚で耐えている感じです。それでも、格上の相手に勝てないという訳ではないはず。魔法吸収などの技術面ではまだスハドゥが上回る余地があるかも。
さてさて、この熾烈な戦いの結末は如何に。結果は楽観出来るのか。それとも無残な結果になってしまうのか…。スハドゥ、乾坤一擲の攻撃はどうなる!?

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