英雄再来 第二十一話 ツレエ10

魔法を多彩に操る者を天才と呼ぶ。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

飛んでくる鉄の塊はどれもこれも当たれば即死。そんな鉄の雨が降り注ぐ中、スハドゥは必死にそれらを交わし続けていた。どこに反撃の糸口があるか分からない。しかし、生き残らなければ反撃すら出来ない。スハドゥはとにかく鉄の塊を交わし尽くすことを最優先に考えた。

右に左に上に下に。スハドゥはとにかく交わした。だが、その内に自身の失敗に気が付いた。必死になって鉄の塊を交わしている間に遠くに鉄の壁が出来ていたのだ。

(『しまった!』)

飛んできた鉄の塊はスハドゥを狙う一方で無関係な場所にも落ちていた。それが意味するところを、鉄の塊を交わすことに専念していたスハドゥは気付けなかった。逃げ場を潰し、包囲して確実に圧殺するための布石。既に鉄の壁は高く積みあがっていて崩れればスハドゥを飲み込むほどの量があった。


既に手遅れだった。スハドゥが気付いた時には鉄の壁は高く積み上がり過ぎていて、無理に登ろうとすれば崩れて潰される。崩さずに慎重に登れば、その間に追加の鉄の塊が飛んできて潰される。潰されるのが早いか遅いかの違いしかなかった。

(『使うか!?破動弾を!だが、向こうはもう魔力をくれやしねぇ…!残ってる魔力は多く見積もっても二発分…。奴を倒すには最低でも一発は残しておきたい…!』)

しかし、スハドゥは気が付く。鉄の塊が連続で飛んでくるのでそもそも破動弾を撃つための溜めの時間が確保出来ないことに。

(『…くっ!だったら落ちてる鉄の塊を足場にして…!』)

しかし、地面に落ちている鉄の塊は、それに乗って跳んだとしても鉄の壁を越えることが出来ないギリギリの場所にばかり落ちていた。

(『やべえ…。』)

本来なら対魔法使いに絶大な効果をもたらす魔法吸収の技術を持っているスハドゥは格上の相手だろうが、魔法使い相手なら圧倒的有利に戦えたはずだった。魔法吸収は持っているだけで相手の攻撃魔法を封じたも同然なのだから。しかし、ツレエはその劣勢を何でもないかのように多彩に攻撃を繰り出していた。

スハドゥはずっと思っていた、魔法は万能ではないと。それは表人格のトルの考えでもあった。何でも出来るように見える魔法でも出来ないことはたくさんあるし、弱点だってたくさん存在する。そう思っていた。しかし、ツレエを見ていて思った。魔法はやはり万能なのではないだろうか。

雷魔法の使い方一つ取ってみても、電撃、鞭、攻撃強化に身体防衛、果ては鉄を引き寄せ自在に操る。ツレエの戦いっぶりを見ていると魔法は工夫や発想次第でいくらでも発展させられるし、どんなことでも出来そうに思えてきた。今までの自分の戦い方が如何に魔法の力にばかり頼った戦い方だったかを思い知った。魔法吸収など小手先の技術に過ぎないことを痛感した。一つのことに頼ることの脆さに気が付いた。

だが、そのことに気が付いても今のスハドゥにはどうしようもなかった。

(『やべえ…!』)

そして鉄の壁が崩れ始める。スハドゥの目にはそれが酷くゆっくりと崩れてくるように見えた。

(『やっべえっ…!!!』)

轟音を伴って鉄の壁はスハドゥを包み込むように崩れ落ちた。

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この記事へのコメント

2016年04月17日 22:29
やべえ・・・!(シンクロ)
何事も徹底することが大事という教訓かもしれません。確かに魔法は万能ではないけれど、それは研鑽の理由に使わなくてはならないのですね。
スハドゥも並みのレベルからすれば相当な努力家のはずですが、ツレエ相手に“並み”では通用しないのか。あらためてチュルーリ一家の規格外さがわかります。

佐久間「こう見ると、スハドゥも十分な天才なんだが。」
山田「そうなんだよな。しかしそれでもツレエには通用しないか。つれえ・・・。」
佐久間「やめろ場が冷える。」
八武「シャドウだけに影に潜むとか出来ない?」
佐久間「シェゾかっ!」
八武「そう。そしてツレエが近付いたところで、その生脚にガバッ!」
維澄「電撃を食らう運命だね・・・。」
八武「本望である。」
神邪「流石ですドクター。」
山田「褒めなくていい。」
維澄「でも実際どうするんだろう。ツレエがスハドゥをいたぶるのが目的なら、殺さず寸止めするかもしれないけどね。」
佐久間「そうだな、オネもツヲを殺さないように手加減しているし。」
山田「不安になるぞ!」
神邪「手加減してるつもりでも、つい殺しちゃいましたってことは、よくありますよね。」
八武「うむ。」
山田「不安だ・・・。」
2016年04月24日 23:00
>アッキーさん
徹底的に雷魔法に特化した魔法使い、それがツレエです。スハドゥも雷の大魔法使いの名を冠するだけあって相応の実力と魔法技術を身につけておりますが、それがツレエには通用しない。
一つの道を極めようと試みれば、その道で出来ることと出来ないことが鮮明に分かってしまう。それは樹海に入り込んでこそ、その広さを実感するのに似ているかもしれません。魔法を極めようと努力し続けたスハドゥだからこそ魔法の限界も分かっていたつもりでした。しかし、ツレエは封印されていた期間も含めて千年ほどの時間をかけて研鑽を積んできました。それによって身に着けた魔法技術は雷魔法の集大成。この規格外の魔法使い相手にスハドゥはどこまで戦えるのか…。
そのツレエに喰らいついていけているスハドゥの実力も相当高いのですが、ツレエの優勢は変わらない。残念ならが、スハドゥは影に潜む能力などはありません。土魔法の使い手ならば地中に身を隠すことは出来ると思いますが。
ツレエの目的は、自分の力の誇示、戦闘による憂さ晴らし、それとスハドゥを試している側面も少々。不安定なために色々なものが混じっています。自分を封印していた相手を瞬殺してしまえば、「そんな弱い奴に封印されていた」という苛立ちが残る。一方で、自分を封印していた相手だから本気を出しても大丈夫という気持ちもあり。いたぶって溜飲を下げようという気持ちもあるし、自分に啖呵を切ったのだからその実力がどれほどのものか見てみたい気持ちもある。とにかく、色々とごちゃ混ぜです。
しかし、最終的には殺すつもりでいる、か?

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